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母の面影  作者: Veronika Giovanna Panebianco
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第1章『曙㬢』

この物語は、十の章からなる、母への記憶の断片。

それぞれの章で、私が母から受け取った行為、言葉、沈黙、

そしてそのとき私が何を感じていたのかを、一人称で綴っていく。

これは人気のための物語ではない。

消えることのない母への愛を、

言葉という形で世界にそっと残すための記録。

書かれた記憶が、

いつまでも失われずに在り続けることを願って。

この世で初めて目を覚ました時からお世話になってくれたお母さんに対する気持ちを忘れずに生きてきた私は、今日、ここで思い出の日記の形で、できるだけ多くの方に一生忘れられないこの気持ちを届けてみたい。

現在から遠くなっていく日々の思い出を語ったって意味がないと思う方もいるかもしれませんし、そもそもつまらない泡沫の記憶の蒐集に過ぎないと思う方もいるかもしれません。

この世に存在するほとんどの作家さんたちは、多分(侮辱のように聞こえたら申し訳ないのですが)、近ごろの作家の多くは、読者の関心を引き、利益を得るために筆を執るのでしょう。

しかし率直に言えば、私は自分の記憶の扱い方について、他人がどう思おうとあまり気にしていません。

なぜなら、私が言葉を紡ぐ理由は、最愛の母の思い出を永遠に蘇らせ続けたいからです。

どんな時も私の隣を離れないお母さん。

私の幸せのために、何度も自分のやりたいことを我慢してきたお母さん。

そんな母のために、ここで今、一つ目の思い出を語り始めます。


お母さんと私の絆が深まり始めたのは、正確に言うと私が5歳だった頃の夏でした。

まだ小学校に通っていなかった私は、母の携帯電話のアラームを午前4時半に鳴るように設定したまま寝転んでいました。

2007年の夏のある日、銀河のような音色のアラームが鳴り出し、まだ夢の世界にいた私は、半分開きっぱなしの窓から差し込む陽射しと共に優しく目を覚ましました。

母はまだ寝返りを打ち、目を覚ます気配はありませんでしたが、夢の中にいるように閉じた瞳の隙間にかかった一筋の髪を指先でそっと払うと、母はぽつりと一言、呟きました。

「おはよう」

「お母さん!今日、一緒に海に行く約束だったよ。早く行かないと夜明けを逃しちゃうよ」

「ごめんね。今着替えるから、ちょっと待って」

それだけを言って身支度を済ませた母は、私と手を繋いで街の中心部にあるアパートを出ました。そのまま海へ向かいます。

早朝の空に高くそびえる火山の山頂はまだ宵闇に包まれ、遠くに見える東の海の静かな海面は、眩しく暖かく光る陽炎に覆われていました。

まだ幾分肌寒く感じる微風が海辺の椰子の葉をそよそよと撫で、少しずつ茜色の太陽が縹色の空に顔を出していきます。

母の声を鮮明に覚えているわけではありませんが、その声があの日紡いだ言葉は、なぜか思い出せません。

空に高く昇ろうとする太陽を邪魔する雲が流れ、山頂に視線を向けてまた振り返ると、真っ赤な太陽は段々と落ち着いた金色に変わり、渚の手前を流れる小川が光を反射して眩しく輝いていました。

静かに落ち着いた海面に映る太陽の姿は、朧げで優雅に、私と母の影に邪魔されずに遠く彼方へ広がり、次第に薄れていきました。

日傘を差す母を手伝うために大きな石を探しに行くと、朝霧に包まれたタオルミーナや遠く離れたカラブリアの影が目に飛び込みます。目の前に広がる小石でできた渚は、銀色に輝いていました。

不意に母は、二人で準備した鞄の中から古い凧を取り出しました。

バスタオルの上に腰を下ろし、凧を静かに広げます。

木枠に張られた和紙は少し色あせていましたが、指先で糸を巻き直すたびに、波の音が穏やかに耳をくすぐり、海風が凧の尾をそよそよと揺らしていました。

母の話によると、その凧は1800年の露日戦争で戦った曽祖父が残してくれたものでした。

母は毎年夏にそれを空に上げるたび、曽祖父に祈りを捧げるつもりだと教えてくれました。

当時、父は夏のはずなのに仕事が忙しく、私たちと一緒に海に行く暇はありませんでした。

それでも母は、海に行くたび様子を伺う電話を欠かさずかけていました。

横たわって目を閉じると、輝きを増す陽光に誘われ、カモメの声がそよ風に溶けていきます。

当時、私は日本語の勉強を始めたばかりでした。筆を手に取り、母が買ってくれたノートの第一ページに、耳に届く音や周りの景色を映す光の色を一生懸命書き込みました。

空に舞う凧の色と波に映る海面の静謐な輝きに魅了され、目に映る世界は斑斓で鮮やかに輝いていました。

押し寄せる波に運ばれた貝殻が光を反射し、カモメの声は魂を揺さぶるほど美しく、まさにかけがえのない幸運のように感じられました。

渚に立つ日傘一つ、潮の香りに包まれ、夏の名残を留めていました。

母は鞄からもう一つ小さな包みを取り出しました。

中には、私の名日の贈り物がそっと入っていました。

胸を躍らせながら開けると、そこには大好きなアニメ『プリキュア』の人形が現れました。

白い衣に身を包み、長い黒髪を靡かせるその姿は、アニメの中と同じく剛毅で麗しかった。

遠い未来、私もあのようにありたいと、心の奥でそっと願いました。

この物語を書きながら、母への感謝の気持ちを改めて思い出しました。私にとって、母との時間はかけがえのない宝物です。読んでくださった皆さんにも、少しでもその温かさが伝われば嬉しいです。

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