冬篭りの準備
「あ、ドクモタケが生えてますね」
ドクモタケ。いかにも毒がありそうな名前だが無毒である。スープに入れて食べるもよし、出汁を取るのもよし、魔法薬の材料にもなる
「ん、何かの気配がする」
後ろを振り返ると大きな翼を広げたワイバーンが。マリが手を振りかざすと、ヒュッと縦真っ二つに切れた
「すごいな、こんなにでかいワイバーンはなかなか居ない」
「マリ様流石です!」
ワイバーンを血抜きしている間に、森のど真ん中にあった宝箱も倒し食料にする。グロウハニービー(暗闇で光るミツバチ)の巨大な巣からもはちみつを頂く。マリはこの森の守護者なので蜂もそれに従い、刺すことは無い。
「結構取れたね、穀物はゼンリから買ったから後は大丈夫かな」
半日でたくさんの収穫を得た。こんなに大量の食材をどう保管するのかと言うと、マリの家には大きな地下室がある。ひんやりと冷たく、年中一定の温度に保たれている。さらにマリの魔法でいつでも新鮮な食べ物が食べられるようになっているのだ
「地下室の食料庫もこれでいっぱいですね」
満足気な3人。大量に取ったボカルンダを昼食にしながら帰り道を歩くと、足元に
「野生マンドレイクだ」
幻樹の森に生えている野生マンドレイクは毒がなく、苦味もない。皮を剥げばそのまま食べることも出来る。ついでに、野生マンドレイクも収穫する。もちろんマリが強い睡眠魔法をかけて、だ
「あちこちに生えてるな」
野生マンドレイクも30個ほど収穫し、家に戻る。地下室に食料を置いて一安心する。四方八方、食料で埋まっている地下室。これで冬は問題なく過ごせる
「よかった、これで蓄えは充分だね。ゼンリにも感謝しないと」
「そうだな、いいタイミングで来てくれた」
「冬になるととてもここまで来れませんからね」
今頃ゼンリはくしゃみをしている所だろう…
~
昼をすぎて、マチは薪割りをし始めた。薪割りも終盤に差し掛かる。ストン、と真っ直ぐ振り下ろされた斧。パカッと綺麗に割れる薪。薪割りはもう慣れたものだ
マリはクッキーを焼いている。丸いものや四角いものチョコチップが入ったクッキーもある
ジェイドは薬草や毒草の種類を書き記す。これは人間にとってとても有益なものになる
3人それぞれの時間を過ごしておやつの時間だ
「マチ、クッキー焼けたよ」
「お、クッキーか。俺の好物だ」
家の中に入ると甘い匂いがふわっと立ち込める。ハーブティーの香りもいい
「では、頂こうか」
サクッと、中はホロホロの焼き立てクッキー。程よい甘さだ
「うん、美味いな。ありがとうご主人」
「みんな頑張ったからご褒美だよ」
「マリ様美味しいです」
「ふふ、よかった」
頑張った身に染みるおやつとハーブティー
「夜ご飯も豪華なもの用意するから待っててね」
「それは楽しみだな」
「ええ、気になりますー!」
楽しい時間、最高のひととき。これが生きる活力になったりする




