第4話 ま~きのっ
いきなりのプロポーズから始まった真紀と士郎は、とりあえず病院内で公認のカップルとしてお付き合いすることになったわ。
そもそも士郎がいつから真紀を認識していたのかとかいろいろと疑問はあったんだけどね。
そして真紀には当然のことながら心配というか警戒しなければいけないことが一つある。
そう、美紀の存在だ。
これまでの過去を思い返しても、美紀が士郎にちょっかいを出してこないはずがないのだ。
別に、真紀が士郎をすごく気に入ってるとかそういうことでもないのよ。
だって、いきなり結婚してくださいで始まって、私の何が気に入ったのかすらまだ聞いていないんだもの。
逆に今なら美紀にどうされようが傷が浅くて済むというか、寧ろ美紀に掻っ攫われるくらいならそこまでのことと余計な気をもむ必要がないというか、まあそんな感じよ。
でも警戒していた割に、逆に今回ばかりは美紀の気配を周囲に感じることがなかったのよね。
どういうことかしら。
美紀もやっと真紀にかまけているより夢中になれる人でもできたのかも、と考えるのは早計かしら。
だけど、この後も特に邪魔されることもなく、父や祖父からの信頼もより厚くなっていった士郎との交際は順調に進み、本当に婚約が成立し、とんとん拍子に結婚式の日取りが決まってしまったのだった。
だけど、相変わらず真紀のカラダは手つかずのままだ。
どういうことかしら。
令和のこの時代に、結婚するまではエッチしません、って直接言われたわけではないが、士郎が真紀にしてくるのは頭ポンポンぐらいで、キスをされたこともない。
おっぱいを触られたことはないわけではないが、それも触られたというより、聴診器代わりに手を当てられたような感覚で、手をつなぐ時も脈を測られるような気持ちになってしまうほどだ。
これじゃあ、恋人というより、主治医と一緒にいるみたいだわ。
うー。美紀の横やりもなく、ようやく除膜式をすることができると思ったのにとんだ肩透かしよ。
でも士郎は真紀に対して決して冷たいわけでもなく、距離を置いているわけでもない。
一緒に食事をする時は、食べるものにも気を使ってくれるし、お医者さんらしく健康状態にも気を使ってくれる。
日差しの強い昼間に出かけるときは帽子を被っていないと新しい帽子を買ってくれるほどの気配りだ。
ちゃんと真紀に似合う素敵な帽子を一緒に選んでくれるし、面倒臭そうな感じは微塵も感じたことがない。
一定時間置きに水分補給のためにカフェとかにしきりに入ろうとするし、そういうのがなさそうなところでは経口補水液を持ち歩いていたりする念の入れようだ。
本当に主治医どころか、どこぞのお嬢様の付きっきりの執事かってくらいだよ。
でも、少しぐらいスキンシップとかあって、キュンキュンさせてほしいもんなんだぞ。
だけど、意を決して士郎に抱き着いてみても、軽く抱きしめ返してくれて頭なでなでしてくれるくらいが関の山だったわ。
士郎は単に性欲が強くないだけなのかもしれない、と思うことにした。
ひとつだけ気になっていることがある。
それは士郎が真紀のことを「ま〜きのっ」って呼ぶことだ。
さすがに他の人のいるところでその呼び方はしないけど、二人きりの時はほぼ間違いなく使ってくる。
しかも小首をかしげて。
あのドラマになんか思い入れでもあったりするんだろうか。
それとも芸人さんの方が推しだったりして。
でもまあなんか可愛いから許す。




