第17話 移植
「生体腎移植をした時に脳血栓を引き起こしてしまい、少し後遺症が残ってしまっているようです。」
は?
母の病室を出て、真紀の病室に戻ってきた後に、士郎が母の状態をそう説明してくれた。
「お母さん、腎臓が悪かったの?」
「違います。お二人の事故の際、真紀の腎臓が二つとも破裂してしまい危機的状況だったんです。それを見かねた由紀さんが腎臓を一つ提供すると仰ってくださって移植手術をしたわけです。」
なんてことかしら。
母は真紀のカラダを救うために生体腎移植に踏み切ってくれていただなんて。
日本では脳死や心停止した方から提供される臓器は少ない状況が続いているわ。
そのため腎移植では、生体腎移植がほとんどを占めているの。
生体腎移植っていうのは、人間のカラダには腎臓が二つあるのでその一つを摘出して移植する方法なんだけど、提供者は心身ともに健康で、自発的に腎臓提供を申し出た家族・配偶者とかに限られるし、他にも必要な条件を満たさないといけないのよ。
医療が進歩したおかげで臓器を提供する人と臓器の提供を受ける人の血液型が一致しなくても腎移植は可能なんだけど、母とワタシたちは血液型も一緒だし、その点は余計な手間が省けて良かったかもしれないわね。
もう少し詳しい話をすると、ABO血液型だけだと型が一緒な場合を適合移植、提供する側の持つ血液型抗原に対して反応する血液型抗体を提供される側が持つ場合、具体的にはAからOまたはB、BからOまたはA、ABからAB以外を不適合移植っていって事前に特殊な準備をしないと拒絶反応が起きてしまうのよ。
残りは不一致移植になるんだけど、適合移植と同等の準備でできるそうよ。
いずれにしても母の大きな愛に感謝感激雨嵐だわ。ん?ちょっと違うって?細かいことは気にしない方がいいわよ。
それで、真紀のカラダが集中治療室にいることも納得できたわ。
でも、美紀のカラダはあんまり外傷もないのに、どうして真紀のカラダはそこまで損傷しちゃったのかしら。
美紀のカラダの方が運転席だし、あちこちぶつけそうな気がするんだけどね。
少し、思い返してみると思い当たる節があるわね。
事故の直前に美紀を病院に連れて行こうとした時に、シートベルトを外しちゃったのよね。
それで多分、転落した際にあちこちぶつけまくっちゃったんだと思うわ。
美紀はシートベルトつけっぱなしだったからそこまで大事にはならなかったのかもね。
あ、でも頭は強打してるのか。
もしかして、真紀が美紀のカラダに入っちゃったのってそこら辺も関係あったりするのかしらね。
真紀のカラダが大変なことになっちゃって、命の危機になったことで、美紀が申し訳なさの余り、自分のカラダを無意識に譲ってくれたとか?
そんな想いだけで入れ替わりなんて超常現象が起きちゃうならもっとSNSとかでも話題になってそうなんだけど。
って、そんなわけないわね。
あー、そう言えば、美紀も事故の直前に真紀に言ったわね。「ごめんね」って。
一体何に対する謝罪だったんだろう。
普通に考えたら自殺に巻き込んだから?
あれ?でも、その前には自分の最期を看取ってほしいなんて言ってたわよね。
だとすると、あの事故で死ぬつもりなんかなかったってことにならないかしら。
ん?そもそも事故起こす必要なんてあったのかしら。
さっぱりわからんらんかんかんだわ。




