第11話 混濁
意識を取り戻した真紀はまだ少し朦朧として体を自由に動かせない状態みたい。
しかも士郎が言うには真紀はどうやら美紀みたいで、真紀は危険な状態にあるらしい。
自分でも何言ってるかよく分からないけど、それが真紀の現状だと思う。
真紀が美紀のカラダの中にいるということは、真紀のカラダの中にいるのは美紀ということでいいのかしら。
何でこんなことになっちゃったのかしら。
双子ならではの意識が同調してとか、オカルト的な何かが起こったとか。
まあ難しいことは考えてもしょうがないわね。
命が助かっただけマシと思って、これからのことを前向きに考えましょ。
美紀の中の真紀は助かったみたいだけど、あっちはどうなのかしら。
士郎がダメかもって言ってるのは、カラダの方の損傷が激しいのか、脳の方の損傷が激しいのか、どっちなのかしら。最悪、両方ってこともあるわね。
真紀は体の自由は利かないけど、激しい痛みがあるような感じでもない。あ、でもそれはまだ麻酔が効いているだけってこともあるのか。
とりあえず確実なのは四肢は無事そうだってことくらいかな。
せめて、真紀のカラダも無事だといいんだけど。
これは何も真紀の都合だけでカラダが綺麗であってほしいって思ってるわけじゃないわよ。
美紀が真紀のカラダの中にいるのなら、どうか肉体的な痛みとは無縁でありますようにと願うからこそよ。
「とりあえず君だけでも意識を取り戻してくれてよかった。じゃあ僕は真紀のところに行くから失礼するよ。」
ナースコールを真紀の手に握らせると士郎は病室を出て行った。
士郎、真紀のことを心配してくれてありがとう。
いろいろと聞きたいことはあるけど満足にしゃべることもできないから今は無理ね。
真紀のカラダの中の美紀をなんとか助けてあげてね。
あ、こんな状況になっちゃったから忘れてたけど、真紀のこのカラダが美紀のモノってことは真紀このままだとすい臓がんで死んじゃうじゃない。
あちゃ〜。困ったわね。
でも今なら真紀が美紀のカラダの支配者なんだから、このカラダに治療を受けさせられるじゃないって考えれば救いはあるかも。
ちゃんと話せるようになったら士郎やお母さんにも相談しないとね。
それにしても美紀がこんな自殺みたいなことまでするほど思いつめられていたとは。気が付いてあげられなくてホントごめんだわ。
できるだけ早く回復して、やれることをやらないとね。
ということで今はしっかりと眠ることにした。
次に目を覚ました時、部屋は暗かった。
夜になっているようで、カーテンの隙間から月明かりが射しこんでいる。
カラダの状態を確認してみると、麻酔が完全にきれたようで頭が少しズキズキする。
生きてる証だと思うと全然我慢できる痛みだ。
カラダは…全く動かせないってことはないけど手の指をなんとか曲げ伸ばしできるぐらいは確認出来たわ。
そうこうしてるうちに疲れたのかまた眠りに落ちる。
ふと気づくと誰かが部屋の中にいるようだ。
「全くあんた達は困った子ね。」
お母さん?
「これに懲りたらこの後の人生は二人で仲良くするのよ。」
部屋の中にいた人物は静かにそう呟いた気がする。
夢か現実かよくわからなかったけど真紀は声にならない声で答えた。
「お母さん、心配かけてごめんね。」
真紀の目から涙が一筋零れた。
次に目が覚めた時には、部屋には誰もいなかった。
母がいたと思ったけど、気のせいだったのかしら。それともあれはやっぱり夢?




