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第10話 告白

士郎と美紀が何のために会ってるかをはっきりさせることができないままそれなりの月日が流れたある日、美紀が真紀(ワタシ)に突然会いに来たわ。

久しぶりに会った美紀はベリーショートにしていたわ。

真紀(ワタシ)もそんなに長くは伸ばしていないけど、ここまで短くしたこともないのでちょっと繁々と見ちゃったわ。悪くないどころか結構似合ってていいかも。

機会があったら同じぐらいにしてみようかしら。

二人きりになりたいと言うので、美紀の運転する車の中で話すことになったわ。

何処に向かっているのかはわからないけど、美紀は運転に集中しているのかほとんど何も話さない。


「真紀。わたし、膵臓がんになっちゃったの。」


美紀は突然そう言って、何とも言えない表情で正面を見ている。

真紀(ワタシ)は美紀の言葉を素直に信じることができなかった。

これまでのことを考えれば当然と言えば当然よね。

散々今まで何度も何度も真紀(ワタシ)をひっかき回してきたんだもの。

だけど、美紀の表情には確かに翳りが見えて、本来の美貌とは程遠く感じた。


「嘘でしょう…?」


「嘘じゃないわ。これ、診断書。」


美紀が差し出した診断書には、確かに「膵臓がん ステージⅢ」と書かれていた。

真紀(ワタシ)は、震える手で診断書を受け取ってもう一度書かれている内容を確認するが、見間違いではなく現実だった。


「だから、お願いよ真紀。最後に、わたしの願いを叶えてほしいの。」


そう言って真紀(ワタシ)の手を握ってくる美紀の手は、以前よりも薄く感じた。


「どんな願い…?」


「わたしの最期を看取ってほしいの。」


美紀の言葉に、真紀(ワタシ)は耳を疑った。


「何を言ってるの…ちゃんと治療しましょ。うちの病院で最高の治療を受ければ」


「もういいの。治療でボロボロになった姿で逝きたくないの。」


美紀はそう言って、真紀(ワタシ)を真っ直ぐに見た。その目には、切なる願いがある。


「それに…伊達先生…士郎さんにも相談したのよ。」


え?まさか、美紀が士郎に相談していたのって…。


「わたしが綺麗なままで真紀に見送ってもらえるようにするにはどうしたらいいかってね。」


美紀、なんてバカなことを。

そんな時間があったんだったらとっとと治療を始めてればよかったのに。

真紀(ワタシ)はお父さんに続いて美紀も失ってしまうじゃない。


「お母さんにはもう言ったの?」


静かに首を振る美紀に唖然とする。


「お母さんに合わせる顔がないもの。ろくに親孝行もしてないのにお父さんの後を追いかけちゃうなんてね。」


「お母さんのためにも最後まで諦めないで治療しよ。ね?真紀(ワタシ)も一緒に頑張るから。」


気が付けばうちの病院の近くを走っていた。

取り敢えず落ち着いて話した方がいいと思い、病院の駐車場に車を入れるように促すと渋々受け入れてくれた。


一回整理しましょ。

えーっと、美紀がすい臓がんになって、治療を諦めて、真紀(ワタシ)に綺麗なままを看取ってほしくて士郎に相談していた。

こういうことでいいのかしら。

すい臓がんは気が付いた時には手遅れになってることが多くて、他のがんと比較しても生存率が低いっていうのは割と世間一般でも知られてることだと思う。

美紀がそのすい臓がんになってしまうなんて、しかもステージⅢの診断がついてるなんてとても残念だわ。

すい臓がんでのステージⅢってことは外科手術で取り除くことが難しいことを表しているわ。可能な治療は放射線治療や化学療法に限られることが多く、五年後の生存率は1割を切っているの。

でも医療は日々進歩しているし、一年でも二年でも治療して延命できれば新しい治療法が間に合うこともあるかもしれない。

でも美紀はそんな希望に縋ることをしないという。


母によると美紀は真紀(ワタシ)のことを好き好き大好きらしいけど、真紀(ワタシ)は美紀のことをあんまり好きではない。

だってね、これまでのことがあるもの。

どっちかっていうと嫌いな方だと思っていた。

だけど、真紀(ワタシ)たち双子なの。美紀がいなくなったら…死んじゃうのはやっぱり嫌なの。


「嫌よ…ワタシ、美紀のこと絶対に諦めたくない!」


「ありがとう。でも、ごめんね。」


美紀はそう言って悲しそうに笑うと、車を急発進させた。

車は駐車場のフェンスを突き破ると崖下の海へと転落し、真紀(ワタシ)は意識を失った。


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