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白華談

作者: ゆゆたんご

あるところにとても美しい女性シャンレイがおりました。

シャンレイはあまりの美しさにこの国には貰い手がおらず、隣国に嫁ぐことになりました。


 夫となる隣国の国王には娘がおり、とても可愛らしい子で黒い髪と白い肌が魅力を引き立てていました。


 「よく来た。これからよろしく頼む。この子は娘のアイルだ。齡四つになる。ほらアイル挨拶を。」


 「はじめまして、シャンレイ様。私はアイルと申します。あの…お母さまってよんでもいいですか?」


ドレスの裾を掴んで、もじもじと恥ずかしそうにいうアイル。


シャンレイは、いじらしく思い

「まぁ!可愛らしい挨拶をありがとうアイル。私でよろしいの?…そう。よろしくね。」と返しました。


なんと幸せな瞬間なんだろう。


 シャンレイは、不安でいっぱいだった心が満たされていき、心配せずに暮らせそうだと思った。


 幸せな時は続いた。ただし、3年間だけ。



 3年後、王は崩御された。シャンレイは医者を呼んで、早く治すように言ったが為す術がなかった。


 シャンレイは、とても小さく見えるアイルを見て、覚悟を決めた。


自身の評判が良い方でないことは、幼い頃から理解していたから不安がないわけではなかったけど、娘を守るために。


 この日女王が誕生した。




女王は激務であった。


 かつてはライバルであり、王の腹心であった大臣に助けられながら、9年間頑張ってきた。


しかし、大臣からの報告は良くなるよりも少し悪くなっている。民の間では、アイル姫を王にしたいという思いがとても強く、女王を擁護する声は少なかった。


 姫の17歳の誕生日まで1ヶ月を切ったある日、大臣が


「農作物の市場価格が大きく変動してしまい民の反発が強まっています。おそらく、最近関係の怪しくなっている国のどれかが原因かと。」


女王は疲労と悲しみですべてがよくわからなくなりはじめた。


シャンレイは昔から美しいが器量は平凡で、よく姉に「貴方って美しさだけが取り柄よね」と見下されていた。今度は民に見下されるのかと失望した。


 突然大臣が言った。「ところで、姫はここのところ一段と美しくなられましたな。」この一言が崩れかけていたシャンレイの心を壊していく。


私は衰えていくのにあの娘は美しくなっていく。私の立場を取るかもしれないあの娘が憎い。


たまらなくなった女王は大臣を退出させたあと「あの娘、どうにかしなければ。」とつぶやいた。


 しかし、その様子を見る者が。

「姫。少しここは危険かも知れません。」「まぁ!どうしたの?影霞(えいか)」「実はついに大臣が女王を追い詰めた様子です。」


姫は少し驚きはしましたが「私は様子を見ます。お母様を信じます。」と(かげ)に申し付けました。



 2日後の夕食前、女王は姫を追い出すために驚かせてやろうと料理人に腹を下すものを混ぜよと指示をした。


女王は基本激務で大臣以外と接触することはなかった。


そんな女王が厨房に現れたから料理人は驚いた。しかも、国の宝である姫君を傷つけろと仰せであった。


料理人は噂は本当だったのかと落胆し、「分かりました。」と言い命がなくなることを覚悟し指示に背き、そして夕飯後に姫君に忠告することにした。


夜になり、料理人は姫に謁見した。「失礼致します。姫、ご報告があります。貴方様は女王にお命が狙われています。お逃げください。」


姫君は少し戸惑いながら「分かりました。」と悲しそうに俯かれました。


そして姫は料理人を帰した後、影を呼び


「私はここを離れることにしました。貴方は一緒に来てくれますか。」


影は「もちろんです。どこまでもお供させていただきます。」と答えて二人は姿を消しました。



 朝、城中が騒がしいことに気づいた女王は急いで身支度をし「何事だ!」と大臣に尋ねました。


「今朝確認したら、姫が消えていたそうです。一大事ですぞ!」


それを聞いた女王は、悩みの種が居なくなったことを嬉しく思ったが、カタチだけでも探したことにしなければならないと思い、「なんてことだ。兵を出し、姫を今すぐ探すのだ!」と命令しました。



 3日経っても見つからないので大臣は落ち着きがなく、女王は反対に落ち着きを取り戻していました。

もう見下されることは、ないだろう。私の立場は安泰だと思ったからでした。


 しかし、1週間経ったある日、大臣の優秀な部下によって、姫が今いるであろう場所を発見されたという報告が女王の耳に入りました。

西の森の小さな小屋ではないかという話でした。


シャンレイは、パニックになりました。始末しなければならない。守れない。


女王は、幼い頃城下に出るために練習した変装を思い出して、リボン売りに化けることにしました。


「真紅の美しいリボンはいかがかな?」

リボン売りが、小屋にいた可愛らしい少女に話しかけます。


「まぁ素敵なおリボン!美しいわ!でも、リボン売りさん私こんな素敵なものを買えるほどのお金がないの。ごめんなさい。」


リボン売りは、「そうかい…でも、試しにリボン巻いてみないかい?素敵なお嬢さんに会えたからね。」と言い、少女は「いいのかしら?じゃあお願いしたいわ!」と快く受け入れました。


リボン売りは、しめたと思い、リボンを胸に巻いてギュッと苦しくなるまで締めました。


少女は、リボンを外そうとしましたが苦しくって上手くいきません。


そして限界になりそうな時に少女が、いきなり手を上にあげました。すると黒い影が、リボン売りに襲いかかりました。


「何をする!!」シャンレイは声を荒らげます。


影は「姫の指示です。」といい、また姿を消しました。


アイルは咳き込みながら答えます。


「お母様を追い詰めてしまったこと、私は反省してます。でも、わざと追い詰めてた人がいることに私は気づいてしまったのです。」


シャンレイが、訳が分からなくなっていると突然小屋の戸が空いてボウガンを持った大臣がやって来ました。


大臣はボウガンをシャンレイに向けて

「姫助けに来ました。女王様の様子がおかしいと思って着いて来たんです。」


アイルは、真顔で「そうですか。」と答えて

「ではなぜ、貴方は1人なのでしょうか。女王を捕らえて裁くには、人手が必要では?」


大臣は「姫は私をお疑いですか?!」と慌てた様子で答えます。


「私は幼い頃から思っていたのです。そんなに母は仕事が大事かと。周りの関わりを経つほどかと。でも、違った。貴方が仕組んだことだったのですね。」


「そんなことはありません。」


「影に調べさせていたのですが、それほど重要でない仕事も母に割り振って、敵国に近いところと話をつけてこの国を女王を陥れようとしていることがわかりました。」


「なぜだ…なぜバレた…上手く言っていたはずなのに。」


シャンレイは、酷く悲しく思い「なぜこのようなことを!!!」と聞きました。


「私とあの方がこの国を盛り上げていったのに、嫁いできただけの女が王になるだって!私だって貢献してきたのに!それ認めた国も国だ!!そんな国は滅んでしまえばいい!私を王にしなかった罰だ!!!」


その言葉を聞いたアイルは顔を歪め「不愉快です。消えてください。」と言い放ちました。


 その時、シャンレイはボウガンの向きが変わりかけていることに気づきました。


あの子を守らなければ!そう思ったと同時にアイルの抱きしめ守りました。発射される音がするとと同時に弾く音と倒れる音が。影が助けてくれたのです。


シャンレイは驚きながら「ありがとう」と言うと「いえ、仕事ですので。」


アイルがまっすぐ顔を見ながら

「お母様、守ってくれてありがとうございます。」


「私は大きくなりました。共に政を行いませんか?学びたい気持ちも支えたい気持ちもあるのです。」


今のアイルは、シャンレイから見て、とても頼もしく大きく見えました。


シャンレイは「貴女はまだ私を母だと思ってくれるのですね。えぇえぇ、ぜひ共に国を建て直して欲しいわ。」と娘の温かさを感じながら答えました。


 2人は抱きしめ合い、城に戻った後に語り合いました。失ってしまった何年を取り戻すために。



 2人が協力して政を行ったことによって、この国は成長し、安定しました。今も2人はこうして語り継がれています。

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