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その1,魔法少女のおしごと

鬱描写含まれます。ご注意ください。

みなさん!突然ですが魔法少女って何か知っていますか?……ふむふむ、知っている方が多いようですね。魔法少女とは、かわいい女の子たちが悪者たちを倒していくお話が主ですよね!このお話を見てくれているということは魔法少女にきっと興味があるはず!ということで早速ですが私たちと一緒にとある魔法少女のお話を見てみましょう!


私、浅川奏羽はただの高校生だ。普通に友達もいて、普通に家族もいる。頭も普通だし、顔もちょっと可愛いかもだけど普通の範疇。人より少し真面目だけど平凡な人生だ。今だってよくある住宅街を登校のため歩いているだけだ。

「ねえ君!魔法少女に興味はないかい?」

おっと、何か変なものが喋りかけてきた…。ふわふわで淡いピンクの、まるで人形みたいなキラキラした目をした謎の生物だ。こんなに魔法少女作品あるあるのようなキャラの幻覚を見てしまうとは…。疲れているようだ。私は知らんぷりをして学校への道を急ぐことにした。そのとき、

「ねえ!まるで見えてないみたいに扱わないでよ!」

…おかしい。今間違いなく首元にふわっとした感触がした。なんで…?無視しても無視しても視界に入ってくるし明らかにおかしい。

「誰ですか貴方。幽霊?」

「幽霊とは失礼だなあ!俺は三珠、魔法少女の素質があるものを勧誘しているんだ!」

「勧誘…?魔法少女…?嘘…。」

こんな魔法少女あるあるを詰め込んだような存在、この世にあってなるものか、と動こうとしたが金縛りのように動かない。もうこれは受け入れるしかないのか…。

「分かった分かった!説明くらいは聞いてあげるから!」

「よし!じゃあまず魔法少女って何か分かるか?」

「よく見るのだと…。女の子が変身して人外の形をした悪者たちを倒してる感じ?」

「大体はそれでいい。俺はその魔法少女を勧誘し、さらにマネージャー的役割も果たしてるんだ。」

「なるほどね…。魔法少女ってたくさんいるの?私も魔法少女になったらその子たちと協力しなきゃいけない感じ?」

「魔法少女は他にもいる。だが協力してもいいだけでしなくても構わない。それに俺とは別のアミューがついてるしな。」

「アミュー?それって君たちみたいな魔物のこと?」

「そういうことだ。人間、みたいな感じの種族の名前だな。俺のことは三珠と呼んでくれ。」

「戦い方は?どうするの?」

「俺から武器を渡す。君だと…斧とかかな。」

「斧?!私そこまで力強くないんすけど…。」

「大丈夫だ。多少振れば魔力による衝撃波でなんとかなる。」

「なんとかって…。こっちになんかダメージみたいなのきたりしないの?痛いの無理なんだけど。」

「ああ、もちろん痛みはないさ。戦いで死ぬこともない。敵の怪物たちにも殺すことはできないようにしてあるからな。」

「じゃあなんで魔法少女がいるの?みんな魔法少女になればいいじゃん。」

「そんなにアミューの数がないからな、選ばれたものが守るしかないんだ。」

「なるほど…。ちょっと考えさせて。」

現実にこんなことがあるなど信じられない。今でも幻覚のような気がしている。けれど今は面白そうという気持ちが打ち勝ちそうになっている。…そうだ。

「ねえ、お試しで魔法少女になれたりしない?」

「…ああ、やってみるか?」

「お願いします。」

「じゃあ目を閉じて、『誓いを胸に、罪をこの手に』」

何か言っているような気がしたが、光に包まれた私にはもう何も分からなかった。次のとき、私はセーラーのような魔法少女の服を見に纏い、手にはリボンやフリルで飾られたピンクの斧が握られていた。

「わあ…!」

「ほら感動してる場合じゃない。君は今からあれを倒すんだよ。」

見せられたのは小さな羽のついた、かわいい柴犬のようなものだった。

「…これが怪物?ただのかわいい犬じゃない…。」

「何を言っている?これを今から、お前はその手で駆除するんだよ。」

何を言っているのか理解できない。したくない。こんなに可愛い子をどうしろもいうの?駆除?ありえない。できない。

「どうした?早くやれよ。その斧なら一発さ。」

「無理、できない、したくない…っ」

「…何甘えてんだよ。お前がやらなきゃ大勢が危険にさらされんだぞ?早くやれよ。…正義感の強いお前なら、できるだろ?」

…その通りだ。こんなに健気な子を目の前にして私は他大勢に迷惑をかけるのが怖くなって苦しくなってしまう。この子を逃がしたいという気持ちとやらねばならないという使命感でつらい。

「ほら…早くやれよ!!!」

無理だ、怖い、逃げたい、辛い、苦しい…

「お前ができないってんなら俺がやる。見とけ。」

「…え?嘘、やめて…やめてよ!!!」

そんな私の声は虚しく、その子は潰された。三珠と私のピンクに赤が映えて見える。斧や地面にもまるでお手本のように飛沫が飛んでいる。そこにあるその子だったものからは、先ほどまでの生気がなくなっていた。

全部私のせいなのかな。私が魔法少女を試してみたいなんて言わなきゃこの子はこんな酷い目には合わなかったのかな。どんなこと思ってたんだろうな。私のせいで死んだんだもん、恨んでるよね。私が守ってあげられればよかったんだもんね。私の身勝手な正義感と中途半端な同情でこの子はこうなったんだ。全部全部、全部全部全部全部私のせいだ。もう辛すぎて涙も出ない、何も考えたくない、ここにいたくない。

うずくまったとき、三珠はこう囁いた。

「…これがお前の天性の魔法少女の素質だよ。身に染みただろ?…これからもよろしくな。」

もう嫌だ、2度とこんなことやりたくない、見たくない…。そう思った時、意識がなくなった。


「おはよう浅川奏羽!大丈夫かい?」

「…あれ?!私寝てた…?」

「大丈夫、貧血で倒れたってことにして今は君の家のベッドさ。」

「ありがとう…。」

「それで?魔法少女はどうだった?」

眠ってしまだからか記憶は朧げだ…けど、

「…すごく楽しかった!可愛い服が着れて、怪物とも話し合って平和に決着をつけられて…いいことしかなかった気がする。良かったら…私を魔法少女にしてくれない?」

「…ああ。もちろんだよ。」

なんだかアミューの笑顔がいつもと違う気がしたが、なんだか疲れたのでもう気にしないことにした。

続きも書く予定ですのでお楽しみに!

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