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異形  作者: り(PN)
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11-20

11. 北堀署刑事二課(夕方)


 鳩谷「宗教団体か?(自分に)物騒そうな話にならなきゃいいがナ……」


12.かつての新興宗教団体による不幸な事件の映像


 が、鳩谷の脳裏に浮かぶ(回想)。


13.葛西美菜のマンション(部屋は二階)


 戸田の声「付近の住人が聞いたのは、パラメトリックスというその名称と、それから葛西美菜と不審な人物の間で行われた遣り取りのようです。……別の住人によると、それ以前にも何かイザコザはあったようですが、それが同一団体もしくは人物のものであるかどうかは、わかりません」

 戸田の声に被り、以下の情景が展開される(無声)。

 葛西美菜が台所仕事をしていると、チャイムが押される。玄関に向かう美菜。ドアを開けると、イケ面だが退廃的な感じの男がいる。最初は親しげに会話をしていた二人だが、やがて男が何事かを告げると美菜は顔を強張らせ、押し殺したように一言二言呟き、やがてヒステリックに叫びはじめる。

 戸田の声「最初に聞こえてきたのは、美菜が何か嫌がっているような、抗っているような声だったといいます。それがだんだんと叫び声に変わり、最後にはモノを投げつけるような音が聞こえてきて……」

 美菜の叫びに臆す様子のない男。部屋に上がり込み、物色をはじめる。抵抗する美菜。しかし力では敵わない。辺りのモノを投げつけるが、それが逆に目的の品の位置を男に知らせることとなる。

 戸田の声「まあ、叫び出す前に普通に会話をしていたのなら、彼女に特別な関心を持ってでもいない限り、あまり気にはしないと思いますがね……」


14. 北堀署刑事二課(夕方)


 ざわついている。

 鳩谷の声「それは葛西美菜が、一般的に判断して美人で、男女を問わず人好きがし、何故だか興味を持たれる人格の持ち主である……ことを婉曲に表現しているのか?」


15.山の見える市街(夕方)

 

 戸田「というより、隣の住人の第一印象ですね。その住人、いわゆる知りたがり系に見えましたから。(間)しかし結論からいって、住人に覗き趣味はないようでした」


16. 葛西美菜のマンション(無声)


 机の抽斗の奥から、掌に隠れるくらいの大きさの箱を見つける男。開けて中身を確認し、満足そうに微笑む。男がそれを持って帰ろうとすると、当然のように美菜が抗う。が、逆に畳に投げ返されてしまう。軽い怪我&打撲をしたようだ。男が振りかえりもせずにドアの外に出る。そこに怪訝な表情を浮かべた隣の部屋の住人(中年女)が現れ、男の顔をまじまじと見る。

 戸田の声「見かけたのは、どこか怖い感じのする二十代後半の男だったといいます。ついでにいえば、住人の印象では、顔はイケ面だったようですが……」

 しかし男は住人を見返しもせず、マンションから立ち去る。


17. 北堀署刑事二課(夕方)


 ざわついている。

 鳩谷の声「イケ面ねぇ……」


18.山の見える市街(夕方)


 戸田「(携帯電話に)そのイザコザがあって数日してから、葛西美菜は失踪したようです。(メモを閉じ)いまのところ調べがついたのは、残念ながらそれくらいですね。(顔を上げ)この先どうしましょう? 葛西美菜で三人目ですからね…… 行き詰まってしまいましたよ」

 困っている様子で、空を見上げる戸田。視点がずれると、夕陽を浴びた富士山が遠くに見える(神奈川県相模原市付近)。

 戸田「パラメトリックスの方に行ってみましょうか? それとも、もう一回鹿浜からやり直しますか?」

 鳩谷の声「うーん。宗教団体のことは気になるが、とにかく一遍戻ってこいや。作戦を練ろう」

 戸田「(やや不満そうに)自分(または、ぼく)じゃあ、信用できないんですか?」


19. 北堀署刑事二課(夕方)


 ざわついている。

 鳩谷「そういう話じゃないよ。……とにかく待ってる」

 ガチャンと電話を切る鳩谷。その頃合を見計らって、鳩谷と同年輩の同僚刑事が近づき、彼の肩を軽く叩く。

 同僚刑事「ガヤさん(鳩谷の渾名)、定年前に厄介な仕事を受け持っちまったねぇ。(感慨深く)人捜しだろう。見つからないんだよねぇ。オレも何度かお宮入りにしたことあるよ」

 鳩谷「……」

 同僚刑事「まあ、頑張ってください。期限に間に合うことを祈ってますから……」

 言って、その場から立ち去る。鳩谷、無言。遠くの席で刑事二課課長が鳩谷を見つめている。

 鳩谷のN「あれは、草の芽息吹く春の日のことだった」


20.川沿いの公園の小道(東京・山の手)


 を鳩谷が歩いている(もちろん仕事で)。訊き込みの最中の一時の休み。

 気づくと、向こうから六~七歳の清楚な感じの少女が歩いてくる。わずかに目が合い、擦れ違い、なぜか気になって振りかえると、その姿が消えている。

 鳩谷のN「最初は、木の影にでも隠れたのだと思った」

 人の溢れる春の公園の映像。

 

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