権力とお金が好きなの
そして俺は複数人のメイド達にまるで魔物化して巨大になった野良ドブネズミを追い払うかの如く棒で叩かれ流れ出口まで誘導されそのまま文字通り叩き出される。
「ああ、アイリスという女性だけは貰っておこう。これでも顔だけは良いからな。次期国王となられるカイザル殿下への献上品としては無理かもしれないが他の貴族で欲しがるものが現れるかもしれないからな。なんなら我がダルトワ家長男であるダリルの愛妾にしても良いな」
そしてグリム・フェルディナン・ダルトワはアイリスを家の中へ引きずり込む(アイリス自ら嬉々として家の中へ入って行ったように見えたのだが俺の見間違いであろう)と俺の愚弟へ『殿下』という敬称を付けるだけならばまだしも、この俺の前で『次期国王』であるとほざき、葉巻のふかした煙を俺へと吹きかけてくるではないか。
「良いか、よく聞け。今の貴様は王位継承権を剥奪され王族であるという事も名乗る事を禁止にされているただのシュバルツであろう。であれば俺は貴様を王族の名を勝手に名乗り使っただけではなく現カイザル殿下並びに現国王への度重なる不敬罪とで衛兵に突き出しても良いのだぞ?そうなればどうなると思う?分からぬのならば教えてやろう。貴様は問答無用で死刑が確定して首を跳ねられて終わりだ。それも恐らく王族に対して溜まったヘイトを解消する事も含めて市民の前で見世物にされながらありとあらゆる王族の不手際や汚職などをかぶせられた上でだ。これを信じるか信じないかはお主の勝手ではあるが、これ以上たかが平民風情のシュバルツが公爵家当主グリム・フェルディナン・ダルトワにたて突き王族に対して不敬な物言いを続けるというのであれば、先ほど言った事が本当かどうかその身で確かめる事になるが、それでよければどうぞご自由に」
「ぐ、ぐぎぬぬぬぬ…………っ!せ、せめてアイリスを────」
心の底から目の前の老いぼれを殺してやりたいと思うものの、この老いぼれの話を信じる訳ではないものの試すだけの勇気もなく、アイリスだけでも取り返そうと彼女の名前を口にした時、その彼女であるアイリスが俺の言葉を遮ってくる。
「ごめんなさいシュバルツ。私、権力とお金が好きなの。ただのシュバルツには何ひとつとして興味が無いわ」
「はっはっはっはっはっ!!これは素直で良いっ!!その強欲さと冷酷さはダルトワ家に相応しいっ!!愚娘よりもダルトワ家に相応しいのではないか?さぁ、お風呂に入って身体を清めて来なさい。その間にお腹が空いているだろうから食事の準備もしておこう」




