きながらそんなありもしなたらればを想像するのであった
「ほんと、旦那様は普段こそは優秀ですのにこと異性の事となると何で急にポンコツになるんでしょう?」
「は?だから女性には興味なさそうな話題だったから切り上げたんだろ?」
「そもそも女性だからと決めつけるのがいけないんですよ。女性の前に奥方様は奥方様です」
「あー、はいはい。もう耳にタコができる程にはルルゥのお節介からくる異性に対する接し方講座は聞いたからもう聞かなくても大丈夫だ」
「そんな態度で聞いていたから旦那様は未だ女心が分からず朴念仁なのですよ」
そして、そんなわたくし達を見てルルゥが旦那様へと一言毒を吐くと深いため息を吐く。
未だ公爵家かつシュバルツ殿下の婚約者であった時の価値観が抜け切れておらず、一使用人であるはずのルルゥが旦那様へ毒を吐く事も信じられない光景であるのだが、それを咎めもせず中の良い友達と言い合う様な関係で接している旦那様にもまだ少しだけ驚いてしまっているわたくしがいる。
もし公爵家の時に、公爵家に仕えていた使用人達とこの様な関係を築けていたのならばまた違った未来があったのかもしれないと、目の前で繰り広げられる旦那様とルルゥとの口論を聞きながらそんなありもしないたらればを想像するのであった。
◆
「畜生、もう歩けねぇ」
不敬にもこの俺を乱暴に馬車から放り出したあの衛兵は絶対にこの俺が次期国王と成った暁には真っ先に断罪してやろうと心に刻む。
これで俺の中の断罪ファイルにまた一人顔が刻まれて行くのだが、今やその人数は三桁近くになっており全ての者を克明に覚えているかというと怪しいところがある。
しかし、これ程の人数が俺に不敬な働きをしていたという事は逆に考えれば王城に仕えているという時点で断罪の対象になり得るのではないか?という考えに至ったのが今である。
まるで犬小屋の様な家々が立ち並ぶ街に放り出されてから今現時点で三時間、俺は迷うことなくシャーリーがいるというタリム領へと歩いているのだが二時間も前から俺の足は悲鳴を上げていた。
しかし、王城に仕える者共を全員断罪できるという俺の導き出した完璧な答えが今の俺を突き動かす原動力となり、尚も俺を突き動かしてくれる。
「アイリスは疲れてはいないか?」
「ん?私はこう見えて田舎育ちだから今のところは平気かなぁ~(まさか王都に来てシュバルツ殿下と恋仲になり邪魔な虫であるシャーリーを追い払う事が出来たというのに、気が付けば田舎暮らしよりも更に下に転がり落ちてしまうとは思わなかったけどね)」
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