『まいくろばす』という魔物
「だ、旦那様旦那様っ!こ、こここ、これは怒っているのではないですわよねっ!?唸っておりますわよっ!?まさか『まいくろばす』という魔物の腹の中という訳ではないですわよねっ!?」
その唸り声にわたくしは恐怖で旦那様に抱き付いて、この乗り物は本当に安全なのかという事を聞くのだが、何だか旦那様も含めてまるでドッキリが成功したかの様な表情をしていた。
「ああ、大丈夫だ。そもそもコレは魔物でもなんでもない。王国で言うところの馬無し馬車だと言っただろう?人を乗せて走るマジックアイテムとでも思えば良い」
「で、ですが、先程から唸っておりますわよ?怒っているのではなくてっ?」
そうなのだ。この乗り物は先程から低い声で唸っており、それがわたくしの恐怖心を更に煽って来るのだ。
いくらマジックアイテムだと言われても唸ったりはしないであろう。
もしかしたらマジックアイテムとこの世界の魔獣を融合させた乗り物かも知れませんわっ!
であれば馬がいなくても走れるという事に合点がいく。
「ふふふ、何だか懐かしいですね」
「ル、ルルゥ?」
「大丈夫ですよ奥方様。この乗り物は生き物でも生き物とマジックアイテムを融合した乗り物でもないので奥方様が想像する様な事は起こりませんよ。あるとするのならば事故なのですけれどもそれなら馬車でも同じ事が言えますからね」
「ほ、本当ですの?」
「本当ですよ。それにしてもやはり始めてこのマイクロバスに乗る時の反応は貴族である奥方様も私達と同じ反応なので何だか意外でしたね」
「そ、そうは言われましても怖いものは怖いのですわっ!」
この様な乗り物、いくら安全であると言われても平民貴族関係なくあんな唸り声の様な音を出されたら驚くし恐怖心を感じてしまうのは仕方のない事であろう。
わたくしだからではないと思いたい。
「まぁ、そう言う事だからこのマイクロバスはシャーリーが思っている以上に安全だし向こうで言う馬車よりも揺れが少なくて快適な乗り物だ。だからそろそろ危ないから俺から離れて隣にきちんと座ってシートベルトを着けてくれないか?」
そしてわたくしは思い出す。
今わたくしは旦那様に思いっきり抱き付いていると言う事に。
「も、申し訳ないですわっ!!」
そして今や『まいくろばす』の恐怖心よりも旦那様に抱き付いてしまっていたという事の羞恥心がわたくしを襲い始めるのであった。
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わたくし達を乗せた『まいくろばす』はわたくしの心配も他所に問題なく走り出し、旦那様の言う通りわたくしが良く乗っていた馬車よりも揺れが少なくかなり快適に進み始めた。
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