シノミヤ家に居られる理由
異性と一つ屋根の下同じ部屋で寝るなど家族以外に体験した事がない上に、異性と同じ部屋で一晩過ごして何も無いわけがない。
「チャンスですね、奥方様。この一晩で奥手で草食系で度胸が無い旦那様を奥方様の魅力で仕留める事が出来ましょう」
「そ、そそそんな破廉恥な事………旦那様に嫌われやしないでしょうか?」
そんな時ルルゥがわたくしに耳打ちしてくるのだが、その内容で余計に頭が真っ白になり身体が火照ってくると同時に旦那様にはしたないと引かれてしまいやしないかという不安も同時に訪れて来る。
好かれたいという気持ちと嫌われたくないという気持ちがわたくしの頭の中で戦っている時、ルルゥが更に耳打ちをして来る。
「大丈夫です奥方様。奥方様の様に若くて美しい女性に迫られて何も起こらない訳が御座いません。もし何も無かったか引かれた場合はもう旦那様は男色の気があると言う事ですので悪いのは奥方様ではなくて旦那様です」
「そ、そうかしら?」
「そうでございます奥方様」
ルルゥがそこまで言うのならばそうかもしれない、という根拠の無い自信が湧き上がって来る。
「全部聞こえているぞルルゥ?」
「だ、旦那様っ!?こ、コレはその………」
「失礼ですが旦那様『乙女のマル秘ドキドキワクワク旦那様を落とす作戦会議』を盗み聞きするとは如何なものかと私は思います」
「バカ言ってないで早く荷物を置いて昼飯にするぞ」
そしてわたくしと旦那様が同じ部屋になったと言うのに普段通りの旦那様を見て何だか少しだけ悔しいと思ってしまうと同時に、旦那様は公爵家の父上から半ば無理やりわたくしを娶らされただけでわたくしには何の魅力も感じていない可能性だってあるのだ。
そう思うと先程までのやる気が嘘の様に萎んで行く。
もし、わたくしの予想が正しければ今わたくしがここにいる事でも迷惑だと思っているかも知れないのだから。
「何をそんなに泣きそうになっているんだ。怒ってるわけでは無いからそんなにしょげるな」
「あうあう」
そんなわたくしを見て旦那様は『わたくしが怒られたと思ってしょげている』と勘違いして慰めてくれようと乱暴にガシガシと頭を撫でてくれる。
ただそれだけなのにわたくしの中の感情はマイナスからプラスに変わるのだから不思議であると同時に、今はこれでも良いと思う事にする。
それに子供を授かる事によりシノミヤ家に居られる理由を作るという考えがなんだか旦那様にもシノミヤ家にも失礼であると思えたという事も大きいし、何故だか分からないのだがわたくし自身それを理由に子供を作る事が嫌だと思ったからである。
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