こんなにも温かい
ルルゥの言うにはこの透明の物で包まれた黒くて丸い物体の中にそれぞれ違う具材が詰め込まれていると考えて良いだろう。
そう思うと少しだけ食欲が沸いてきたような気がしないでもないし、初めて食べた『かれー』の時と比べると大分マシだと思える。
「本当は三角形に形作りたかったのですけれども、要練習でございますね。では奥方様は、どちらから食べますか?あ、因みに透明のラップという物で包んでいますが、そのラップは食べ物では無いので剥いてから食べて下さいね」
「そ、そうですわね、順番通りに鮭、おかか、昆布と頂きますわ。それとわたくしの為にわざわざ作ってきたくださったのですから、形など気にしようはずがございません。むしろわたくしの為に作ってくださりありがとうございますわ」
「だ、だだだ、旦那様っ!!こんな良い子のどこがダメなんですかっ!!次いでこんなにも可愛いんですよっ!!早く子供を作るなりなんなりして書類上でも関係上でも夫婦になればいいではないですかっ!?何が不満なんですかっ!?」
そしてわたくしがルルゥへ旦那様に言われた事を思い出して謝罪では無くて感謝の言葉を述べてみた瞬間、ルルゥに後ろから抱き付かれて旦那様へわたくしとの間に早く子供を作れと捲し立てるではないか。
「ル、ルルゥ………流石に恥ずかしいですわ………」
「ほらっ!旦那様がぐずぐずしているせいで奥方様は傷ついているじゃないですかっ!」
「いや、そう言われてもシャーリーはまだ四宮家に来たばっかりで────」
「こんな意気地の無い旦那様は放っておいて一緒におにぎりを食べましょうっ!」
「くっつけたいのか邪魔したいのかどっちなんだよ、全く。あ、美味いなこれ」
「あぁぁあっ!!ちょっと旦那様っ!?勝手に食べないでくださいっ!!それは奥方様の為に作ったおにぎりですよっ!!」
「こんなにあるんだ一個くらいかまいやしないだろう。それに、好き勝手言ってくれた慰謝料だ」
そして、気が付いたらこのシノミヤ家はいつもどこからか笑い声が聞こえ、笑顔が見えてくる。
そんな光景がこのシノミヤ家では当たり前の日常だからこそ、シノミヤ家の人は勿論のこと、そのシノミヤ家の中心にいる旦那様はこんなにも温かいのだと思う。
そんな温かな家に嫁げたわたくしは、過去はどうあれ幸せであると、そう心から言える日が近い未来訪れるような、そんな事を思うのであった。
◆
鮭もおかかも、そして昆布もやはり凄く美味しかった。
これなら梅干しも食べれるのでは?とまだ見ぬ食材に胸を膨らませながらわたくしは今ミヤーコとルルゥの三人で領内の街に来ていた。
といっても王都と比べると小さな村だと言われそうなのだけれども。
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