『啜る』という食べ方
そう言うと旦那様とルルゥが蓋の上の人形型の重しを退け、紙の蓋をペリペリと剥がし始めるのでわたくしも急いで二人を真似してペリペリと剥がし始める。
そして漂う嗅いだことのない、しかし食べる前から美味しいと言うのが分かる程の食欲をそそる匂いが辺りに漂い始めるでは無いか。
わたくしはその、物凄く美味しそうな匂いを漂わせている『かっぷめん』へと恐る恐るフォークを入れてみると、目の前には旦那様やルルゥが言う様に、確かに美味しそうで見たこともない料理が一品出来上がっていた。
そしてわたくしはもう待ち切れないとばかりに『かっぷめん』を食べようとしたその時、旦那様とルルゥの方から『ずずずっ!』という音が聞こえて来るではないか。
「ああ、そうか。麺を啜る音は確かに俺の世界でも日本人以外には基本的には受け入れられないみたいだしな。せっかくの食事なのに気が利かなくて申し訳ない」
「い、いえ。しかしいつも所作が綺麗なルルゥまで音を立て食べるという事は、それがこの『かっぷめん』の正しい食べ方なのでしょうか?
その音にビックリしたわたくしに気付いて旦那様が気にかけてくれるのだが、旦那様だけではなくルルゥまでもがそうやって食べているという事に何らかの意味が合っての事なのでは?と聞いてみる。
「そうだな、正しいって事でもないというか、別に作法では無いため音を立てて食べなければならないという訳でもないし、逆に音を立てずに食べても良いのだが、そうだな……俺の故郷はこういう細い紐状の食べ物は基本的には音を立てて啜っても良いという暗黙の了解の様なルールは確かにあって、基本的にみんな音を立てて啜り食べているな。勿論咀嚼音は聞こえない様に口を閉めて食べるとか犬食いなどは行儀が悪いとされているから細い紐状の食べ物だからといって何でもありでは無いのだが」
「こちらで言うところの、お酒であるヴァインと同じです奥方様。ヴァインの味を楽しむために啜りながら空気と一緒に口に含み、そしてその空気を鼻から抜ける事で風味や匂いと言った物を強く感じる事でより一層美味しく、そして深く感じとる事が出来る技法ですよ。この食べ方は香りも絶品な蕎麦という日本の麺料理が一番美味しく頂けます。因みに平安時代前後でさじから箸へと主流が変わってから啜る様になったとされています」
「ルルゥ、何で俺より詳しいんだよ………」
そこまで聞いてわたくしは、でも何で啜る時だけなのか?そもそも啜るという事は音を立てないと無理なわけで、何でこの『啜る』という食べ方が黙認されているのか?と少し疑問に思っていたのだが、その疑問をルルゥが解決してくれた。
「なるほどですわ………であればわたくしも啜って食べたくなって来ましたわね」
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