かっぷめんという料理やれとるとという料理
しかしながら、旦那様は『わたくしも一緒に行く』とは言っていない。
もしかしたら旦那様だけで旅行という事も無きにしも非ずなのだが、例え押し付けられるように嫁いで来たわたくしと言えど一応はシノミヤ家当主、ソウイチロウ様の妻なのだ。
で、あれば旦那様と一緒に日本旅行へと行くのだとしてもなんらおかしな話ではない。
むしろ、もしかしたら旦那様のゆかりの地巡り方々へ結婚した事の挨拶と妻であるわたくしを紹介して周るという可能性は大きく見て良いだろう。
そしてわたくしは何とも思っていない風の表情を顔に張り付け、心の中では『わたくしも行きたいですわっ!わたくしも行きたいですわっ!わたくしも行きたいですわっ!わたくしも行きたいですわっ!』と高威力広範囲魔術を行使する時の長い詠唱を唱えるかの如く呟く。
「そして日本旅行へと一緒に行くメンバーなのだが────」
この瞬間、大広間に緊張が走るのが痛いほど伝わってくる。
それ程までに皆日本旅行へと行きたいという気持ちの表れでもあるのだろう。
かくいうわたくしも思わず緊張のあまり生唾をごくりと飲み込んでしまう。
「使用人全員と行く事にした。申し訳ないのだが今日一日は全員最低限必要なこと、洗濯と風呂掃除以外は働かなくてかまわないので、明日の朝に備えて旅行の準備をしてくれ。そして食事であるのだが、厨房にあるカップ麺やレトルト食品等を解禁とする。その変わり各自洗い物は自分でするように」
そして旦那様が旅行を一緒に行くメンバーとそれまでの仕事内容や食事などを説明し終えた瞬間大広間にはまるでパレードかと思える程の歓喜の声で満たされる。
しかしながら、その中でわたくしだけは悲しみと絶望の中────
「あぁ、すまない。伝え忘れた事が一つあった。勿論シャーリーも一緒に行く為使用人の皆は初めて日本を訪れるシャーリーの事を気にかけて、何かあればその都度フォローをしてやってくれ」
────だと思っていた場所は一変し、天国へと一瞬にして変わって行くのであった。
◆
あれから小一時間、未だ興奮が冷めやらぬのだがそれでもお腹は減るもので今現在ルルゥと一緒に厨房へと足を運んでいた。
「かっぷめんという料理やれとるとという料理はこのわたくしでも作れますの?」
「ええ、心配せずとも簡単に作れますよ。恐らくビックリするほど簡単なのに病みつきになってしまう程の魅惑の美味しさに奥方様は驚かれるかもしれませんね。かくいう私も驚いた一人ですし」
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