約一週間の日本旅行
わたくし的には三食全て異国の料理でも良いのだが旦那様曰く『グラデリア王国で産まれ育つ子供たちが母国の料理がどういうものか分からないというのは悲しい事だと俺は思う』と言われてしまっては返す言葉が見つからないという事である。
しかし、だからこそ本日の朝食が気になって仕方が無い。
「ささ、奥方様。お着物への着付けも終わり髪のセットも終わりましたので大広間に行きましょう」
「ありがとうございますわ」
そう言われ、ルルゥと他二名のメイド、マチルダとナターシャ達により着物を着たわたくしを姿見で確認する。
そこには何度見ても見慣れない、しかしながら今現在貴族女性の間で流行っている様なドレスとはまた違う、別の種類の品や奥ゆかしさ、そして美しさがあり、鏡に映った別人の様な自分の姿に数秒間見惚れてしまう。
「今日も奥方様はお美しくございます」
「ありがとうございますわ。でもこの着物という衣服のお陰だという事は分かっておりますわ」
「それを着こなせるのですから、奥方様も十分お美しいとおもいますよ」
そんなルルゥのお世辞を聞きながら、鏡に映る異国の衣服に身を纏ったわたくし自身を眺める事に満足したので手提げ鞄を手に取り退室の準備を始める。
「では、行きますわよ。大広間まで案内をよろしくお願いいたしますわ」
「かしこまりました。それでは、はぐれない様について来て下さいね」
そんなこんなでルルゥの後をマチルダとナターシャ達と一緒ついていき、既に扉をあけ放たれている大広間へとそのまま入室していく。
大広間には旦那様を含めた調理担当の使用人二名、執事が二名にメイドが七名、庭師が三名と子供達四名の合計十九名が既に来ており、わたくし達が最後の様である。
しかしながら少ないとは思っていたのだが、自分の思っていた以上に使用人の人数が少なくて少しばかり驚いてしまう。
わたくしが以前暮らしていたところはメイドだけでも二十名はいたので尚の事である。
「では、全員揃った様なので説明を始めるとする」
そして旦那様がわたくし達が到着した事を確認すると、口を開く。
「急で申し訳ないのだが翌日早朝より約一週間の日本旅行に行く事になった」
内容は明日の朝から旦那様の故郷である日本へ一週間の旅行を行うという事であり、周囲が騒めきだす。
勿論わたくしも気が気ではなくそわそわと落ち着が無くなって行くのが自分でも分かる。
むしろあの日本へ一週間もの間旅行へと行くのだ。
たった数回でわたくしの胃袋をがっちりと掴んで離してくれない料理の事を考えると冷静でいられる方がどうかしている。
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