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無理やり自分を納得させる



早朝、まだ太陽が顔を出す前にわたくしは荷物を少し大きめな鞄一つに纏め、家を出る。


鞄の中にはクマの人形、そして衣服数着ぐらいしか入っていない。


他に持ち出したものと言えばお父様から護身用に渡された短杖ぐらいなのだが、その短杖も初心者が初めて触る時に使用する様な短杖であり、わたくしの魔術行使に耐えられるだけの耐久力があるとは思えない。


その事がお父様はわたくしの身の安全ではなく自身の世間体を気にしているだけである事が手に取るように分かる。


因みにわたくしが今まで使っていた短杖、アクセサリー、金品等は全てメイド達に奪われた後だった。


あのあと書斎からわたくしの部屋へと戻って来た時、メイド達がわたくしの部屋を漁り散らかされた後であった部屋の惨状を思い出した所でわたくしはゆっくりと首を振る。


結局のところそれら全てはお父様の財産で購入した物である為どう扱おうがお父様の勝手であると、わたくしがどうのこうのと抗議したところで鼻で笑われ見下され蔑まれながら払いのけられるだけである事等想像に容易い。


わたくしの思い出にいる、優しかったお父様はもうこの世にはいないのだ。


縋った所でどうなる事でも無いのであれば無駄な労力を使わず、抵抗せず、反抗せず、言われた通り日の出前に家を出るのが一番正しいのだ。


「どうせわたくしなんか………」


そう思わずには、そう口にせずにはいられない。


最早口癖になりつつある言葉だ。


それでも、極刑とならずにこうして命があるだけでも運が良かったのだと、無理やり自分を納得させる。


平民に婚約者を奪われ、婚約者からは罵倒され、メイド達からは蔑まれ、お父様からは見限られ、住む家を追い出され、運が良かったなど笑い話にもならない事くらい分かっているのだが、そう思わずには生きる気力も湧かない。


そして更にわたくしに追い打ちをかけるのが嫁ぎ先である『ソウイチロウ・シノミヤ』という男性である。


この男の名前はわたくしの耳にも届いており、その逸話のインパクトに忘れず今も覚えている。


ソウイチロウ・シノミヤの髪と目は黒く悪魔の申し子である。

ソウイチロウ・シノミヤは若い女性の血肉を貪り不老の身体を手に入れている。

ソウイチロウ・シノミヤは変人のそれである。

ソウイチロウ・シノミヤは裏で人身売買をしている。

ソウイチロウ・シノミヤはetc、etc、etc。


耳に入る噂は全てその様な事ばかりであるからだ。


それでも現国王のご友人という事でそれなりの地位はあるみたいなのだが、未だに誰も自分の娘を嫁がせようとする貴族も、嫁ごうとするご令嬢も現れなかった。





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