良い見世物
そもそも、王国貴族で魚など飼っている者自体が居ないというのに、この魚達の煌びやかさたるや。
それがより一層この空間を幻想的な異空間へと変貌させる。
「奥方様、コレをどうぞ」
「こ、これは………?」
そしてわたくしが幻想的な空間を堪能しているとルルゥが紙袋に入った複数の黒い小さな粒を渡してくる。
「この魚達、錦鯉の餌です。ほら、錦鯉達が餌を求めて近寄って来てますよ」
「ほ、本当ですわっ!お口をパクパクしながら沢山寄って来ていますわっ!皆さんお利口さんですわねっ!」
普通魚という生き物は近づくと物陰に隠れるものなのだが、この子達はまるでお腹が空いたと言わんばかりに我先にとわたくし達の近くへと寄って来ているではないか。
この錦鯉という魚だけではない。
気が付くと亀さんや真っ白い水鳥さんまで集まって来ている。
正にここは御伽の国なのではないかと思ってしまいそうになる。
そしてわたくしは魚さんや亀さん、そして水鳥さんとお昼まで時間を忘れて戯れるのであった。
◆
「この俺を誰だと思っているんだっ!!王国騎士団次期団長候補であり第一部隊隊長のダグラスだぞっ!!何でこの門を通れないんだっ!!今回の任務はシュバルツ殿下の命でもあるっ!これ以上この俺様を通さないと言うんなら覚悟しろよっ!?今回の件をそのままシュバルツ殿下に申告しても良いんだぞっ!!」
「ご自由にどうぞ。どう申されようともこも門を通す訳には行きませぬ」
何なんだっ!何なんだっ!!何なんだっ!!?
たかが一門番の癖に、この俺様をここまでコケにするとはっ!!
しかも腹立たしいには奴の目だ。
まるで俺を哀れみ、見下すかの様な目つき。
「お前らも見てんじゃねぇぞっ!?これは見世物じゃねえんだよっ!!」
「「「ひぃぃいいっ!!」」」
そしてこの門番がスムーズにこの俺様を通さなかったせいで、今俺は周りにいる者達の良い見世物にされているではないか。
そして何よりも腹立たしいのが、貴族であるこの俺様を差し置いて下民達が先に門の向こう側へと進んで行っている事である。
「俺は貴族だぞっ!何故平民如きをこの俺様より先に門を潜らせているっ!!即刻平民が門を潜る事を辞めさせろっ!!」
「出来ません。そもそも先程申させて頂きましたが上の者よりダグラス様を決してこの門を潜らせてはならぬと言う御達しが出ております。この御達しが無効とされない限りはダグラス様をお通しする事は出来ません」
「貴様こそっ!!この俺様はシュバルツ殿下の命で来ていると先程から言っているっ!証拠を出せと言うのならば見せてやるよっ!!」
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