何ですのっ!?この音はっ!?
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あの衝撃的な朝食の後、わたくしは食後の運動をする為にルルゥと共に庭を散策することにする。
「わぁー………美しいですわ……………」
初めてこの屋敷に来た時は緊張感から周囲を良く見渡すと所々小川や池がある、異国風情溢れる庭が広がっていた。
自然の赴くままに、しかしながら手を加えるべきは手を加え自然の美しさを損なう事無く、むしろその美しさを際立たせている技術に思わずため息を吐いてしまう。
わたくしの実家もそうであるように我が王国貴族の庭は基本的に左右対称であり、それは植えられた木々の形だけでなく石や花々に至っても同じく左右対処になるよう庭師により手入れされており、自然の美しさではなく庭師の技術により作られた人工的な美しさを楽しむ造りとされている。
それはそれで美しいとは思うのだが、だからこそ正反対なシノミヤ家の庭の美しさが際立って美しく見えてしまうのは致し方ないとわたくしは思う。
その二つの庭を言葉で表すとするのならば王国の庭は自然をコントロールする様な美しさであり、シノミヤ家の庭は自然と共存という様な美しさであると思う。
自然のまま伸びた枝葉に所々赤や黄色に色づいた草木、苔の生えたにぽつぽつと不規則に咲いた花々、水の流れる音や草木が風で擦れる音、鳥の鳴き声。
それと同時に庭師の技術の高さも自ずと伝わってくる。
森や林に行っただけではこの庭の様な美しい光景を見る事はなかなかに難しいと言わざるを得ないのだが、その景色がこの屋敷で偶々みられるというのは考え難い。
であるのならば庭師により人為的に作られた美しさである事が伺えて来るというものである。
そして偶に聞こえてくる乾いた何かを石に打ち付けるかの様な甲高い音が聞こえ、それら全てがわたくしの心を落ち着かせて────
「って、何ですのっ!?この音はっ!?」
「鹿威しでございます。元々は草木や木の実などを食べ荒らす鳥獣を追い払うための農具でございますが、現代ではその音が風流であると楽しむようになり鳥獣を追い払うための農具ではなく音を楽しむ目的で設置されております」
「た、確かにこの甲高い音もそう言われれば心地よく聞こえてきますわね。むしろその音が異国の世界にに舞い込んだ異空間という神秘的な雰囲気をより一層引き立ててくれますわ」
「ええ。私も初めてこの家に仕えた時は奥方様と同じ感想を抱きました。それと、もう一つこの庭で感動した事がございます」
そういうとルルゥはわたくしの手を取り池の淵まで案内してくれる。
するとそこにはまるで泳ぐ宝石の様な色とりどりのお魚が泳いでいるのが見え、庭の風景も相まってその美しさに思わず息をするのも忘れてしまう。
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