そこだけ目を瞑れば良い
今までの流れからしてあの子供達が食べている物が美味しく無いわけがない。
生卵という所が今までのわたくしの常識から忌避してしまうのだが、逆に言えばそこだけ目を瞑れば良いのである。
そもそもその程度の忌避など美味しい物を食べたいという欲求の前では無に等しい。
そう、等しいのだが今のわたくしには白ご飯が無いのである。
おかわりも頭に過ぎりましたが流石に来て間もない家でおかわりを頼める程の度胸も無ければ羞恥心もある。
そしてわたくしは泣く泣くリンダさんへ生卵を茹で卵にして頂くよう、手渡すのであった。
◆
「………成る程な」
「如何致しましょうか?」
シャーリーという娘がいたという普段と変わった部分もあるのだが、いつもの様に使用人達と朝食を食べ終え、俺は今日本で国王からの手紙を読んでいた。
その手紙の内容にはダグラスという男がバカ息子シュバルツの命令により暗殺しに向かっているという内容であった。
「そうだな、お前達の事を信頼していないという訳では無いのだが万が一という事も起こり得るだろう。シャーリーには申し訳ない事をしてしまうのだが少しの間だけこちらで過ごして貰った方が良いのかもしれないな」
「私もそう思います」
こちらの世界での秘書兼執事を担っているジョンが俺の言葉に肯定する。
彼は異世界で産まれた元孤児であるのだが戸籍は日本である。
日本で働かせる為に日本戸籍を取らせたとも言うのだが。
「ではその為の準備を進めるとしようか。女性の生活で必要な物は分かるか?」
「総一郎様、私は男性で御座います」
「知っている。女の事に詳しいと思ったから聞いただけだ。それが嫌ならば早く身を固める事だな。いつまでスーを待たせるつもりだ?コッチでで複数の女を作っているのではという噂が流れ出してるぞ?」
「わ、私は───」
「ジョン、関係ない俺に言われてシャクだとは思うが悩んでいるウチは未だ間に合う。スーも良い娘ではないか。メイド仕事も頑張っているみたいだしルルゥやミヤーコからの評価も高いぞ?。足りないものと言えばお前の一歩踏み出す勇気だと俺は思うがな」
どの口が、とは思うのだがだからこそ俺の様な思いはさせたくないと思うのも事実で、ついつい世話を焼いてしまう。
というか、この二人の馬鹿ップルぶりにさっさと結婚させて落ち着かせろというメイド達(主に非既婚者)からの圧力が日に日に強くなって来ているのは黙っておく。
「とりあえず今はこちらで生活させる為の準備だな」
そして俺はこの話は終わりだと元の話へ戻すのであった。
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