生卵
「は、はいっ!!」
「うん、やっぱり笑顔の方が可愛いじゃないか」
「か、かわっ!かわかわっ、可愛いっ!!?」
先程から綺麗だの可愛いだの、わたくしの旦那様は何なのだ。
初心な子娘でもあるまいに、旦那様の一言でこんなにも、自分でも制御出来ないほど狼狽えてしまうなど、一体わたくしの身体に何が起きているというのか。
もしかして奴隷契約の時にわたしを騙して感情をコントロール出来なくなる契約をしていたりなどと思うのだが、その様な契約はされていない事は、これでも魔術師の端くれである自分自身が良く分かっている。
「ああ、もう俺の言葉でいちいちフリーズしなくて良いから、早く座った座った」
「す、すみません………っ」
「ほら、奥方様。奥方様の席は旦那様の隣りですよ。ささ、座りましょう座りましょう」
そしてわたくしはルルゥに促され旦那様が座ったのを確認してからその隣へと座る。
テーブルには既に料理は出されており、後はわたくしだけ待っている状況であったみたいである。
因みに旦那様もわたくしも使用人達も皆同じ料理が各々の前に置かれているのだが、分かる料理と言えば焼き魚ぐらいである。
「では、皆揃った所だし頂こうか」
「「「「「頂きますっ」」」」」
「神よ、そして我が国国王様によって、え?いっ、いただきます………っ?」
「あぁ、すまん。別に食事前などの習慣を変えろとも真似しろとも言わないし強制させようともしないから今まで通りで大丈夫だ」
そしていざ食事を食べようとした時わたくし以外食事前の祈りが違うという衝撃的な展開に思わず祈りを中断して、周りと同じ様に「いただきます」と口にする。
「い、いえ。わたくしはここシノミヤ家に嫁いで来た身ですわ。でしたら食事の祈りも、いえ、それら以外の事も出来るだけシノミヤの仕来りに合わせるべきでございます」
そして旦那様が無理に合わせる必要は無いと仰って下さったのだけれども、わたくしはシノミヤ家に極力合わせる様に返事をする。
と、いうのも貴族界のパーティーで異分子だと断定された令嬢がどの様な扱いをされて来たのか嫌という程見て来たからである。
そして今のわたくしはシノミヤ家において異分子の何者でも無いのだ。
「まあ、無理せずにな」
そんなわたくしを見て旦那様は苦笑いを浮かべて優しい言葉をかけてくれる。
「奥方様、今日の朝食は鮭の塩焼き、卵焼きに海苔、そして生卵にお味噌汁、主食には白ご飯で御座います」
「な、生卵っ!?」
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