ちよこれぇーと
「ねぇねぇシュバルツ殿下ぁ~」
「何だ?アイリス」
「今巷で噂になり始めている『ちよこれぇーと』なる甘味を食べてみたいんだけれどぉ~。ダメ?」
あぁ、アイリスのこの庇護欲を掻き立てられる上目遣いで強請られてしまったら嫌だとは言えないではないか。
そして先ほどまでの苛立ちもも見事に消え去り、幸福な感情が満たされる辺りやはり俺の妻は会うだけでストレスの溜まるシャーリーと違いアイリスで良かったと心底思う。
「ああ、良いだろう良いだろう。その『ちよこれぇーと』が何なのか分からぬのだが家臣に取り寄せて来るように言い使わせようではないかっ!!」
「さっすがシュバルツ殿下っ!!愛してるっ!!」
「お、俺もだぞっ!アイリスっ!!」
ああ、今俺は王国一幸せだなと、思うのであった。
◆
「シュバルツ殿下っ!『ちよこれぇーと』がようやっと届いたとの知らせを聞いたのですがっ!?本当ですかぁ~っ!」
「ああ、本当であるぞアイリスっ!!見よっ!これが『ちよこれぇーと』という甘味であるらしいっ!!」
家臣へ『ちよこれぇーと』なる甘味を探させて二週間もの歳月が立ち、忘れ始めていた頃。ついに俺の元へ『ちよこれぇーと』なる甘味が届き、二週間前のやり取りを思い出した俺は即座にその旨をアイリスへ伝言するよう側仕えのメイドへ伝える。
すると半刻も経たずしてアイリスが満面の笑みで俺の元へ飛んで来るではないか。
この笑顔を見れただけでも頑張った甲斐があったというものである。
しかし、素直に喜んでくれるアイリスと違いシャーリーの場合は『頑張ったのは殿下では無くて家臣でございますわ。それに、国民が収めてくれている大切な税金をこんなくだらない事に消費して、シュバルツ殿下は血税を何だと思っているのですかっ!?シュバルツ殿下は次期国王としての────』とがみがみと小一時間は小姑の様に口うるさくがなり立てる様が容易に想像できる為、やはりあの時シャーリーと婚約破棄をした俺はまさに天才であると言わざるを得ない。
「では早速この『ちよこれぇーと』なる物が入っている箱を空けてみて下さいっ!私、もう待ちきれませんっ!!」
「それもそうだな。では────」
「………………」
「………………何か、黒くて地味だし美味しそうには見えないな………」
「そ、そうですね。でも巷で噂が立つ程ですからきっと味は美味しいに違いありませんっ!!」
「あ、おいっ!?アイリスっ!!えぇいっままよっ!!」
そして逸る気持ちを抑えながら『ちよこれぇーと』なる甘味が入っている箱を開けると、そこには黒くて丸い何かが二粒だけ入っており、この得たいもしれぬモノを本当に食べて良いのか不安に思い始めていると、同じく箱の中を覗き込んでいたアイリスが『ひょい』と口の中へ放り込む姿が見えたため、どうせ毒見はされているのだろうと慌てて俺も後に続く。
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