高級なシルク
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「では、私も一緒にお風呂へ行きましょうか」
「ああ、そうしてくれ」
「あ、あのわたくし一人で入れるので、ここまでして頂かなくても大丈夫でしてよ?」
「あ、一人で入れないのは分かってますので大丈夫です。ささ、行きますよっ!奥方様っ!!」
貴族としてはメイドに身体を洗わせるのは至って普通の事ではあると思うのだが、わたくし自身なんだか裸を見られるという事に慣れず、お風呂だけは一人で入る様になった。
そのため旦那様や名乗り出てくれたルルゥには悪いとは思うものの断るのだがわたくしの意見はピシャリと却下されてしまう。
恐らく貴族、それも公爵家の女という事でお風呂も一人で入れない箱入り娘とでも思われているのであろう。
「わ、わたくしは確かに箱入り娘ではあるのですがお風呂だけは一人で入れるのですっ!!」
そしてわたくしは二人の誤解を解くために胸を張って一人で入れると宣言するのだが、何故か旦那様であるソウイチロウ様と、メイドのルルゥは困惑した表情をしていた。
「………あぁ、いや、そういう事ではなくてだな……」
「………?そういう事でないのならどういう事ですの?お風呂はお風呂ですわよね?」
「まあ、お風呂はお風呂なのだが───」
「一回体験すれば話すよりも早いですからっ、ささっ行きましょうっ行きましょうっ!旦那様曰く百聞は一見にしかずですよ奥方様っ!!」
「まあ、確かにそれもそうだな。ルルゥ、頼んだぞ」
「えっ、えっ?ひゃ、ひゃくぶんは何ですのぉぉおっ!?」
そしてわたくしの宣言も虚しくルルゥに手を引かれてそのまま浴室へと向かうのであった。
◆
凄いお風呂場であった。
ボタン一つでお湯が溜まる湯船もさることながら、あのシャワーというマジックアイテムも凄い。
捻るだけで水や熱湯、お湯がでるあのマジックアイテム一つで一財産作れる程の価値があるのは間違いないだろう。
それに石鹸が高級なのは使用しただけで分かるのだが、あのシャンプー、コンディショナー、リンスである。
使っている時は石鹸と何が違うのかと思っていたのだが、今自分の髪を手櫛してその変わりように驚きを隠せないでいる。
まるで高級なシルクを触っている様である。
そう言えば旦那様の宝石な様な輝きを放っていた事を思い出し成る程と納得する。
こんな物を毎日使っているのならばあの輝きも頷けるという物である。
しかし、あの熱風だけを送り続けるだけのマジックアイテムにも驚いたものである。
そして今、一人で行かなくて良かったと心から思う。
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