半時間前の考えなど吹き飛んでしまう
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そしてわたくし達は東京にあるという某動物園へとやって来た。
その施設がバスから見え始めた段階からララ含めて子供達のテンションは爆上がりである。
子供達がこれ程までに盛り上がっているという事は、それだけ期待できる場所という事でもあるのだろう。
ただ、わたくしからすれば動物を見るだけであるのならば別にこのような施設に訪れなくとも森や山へと赴けば良いのでは?とも思う。
確かにわたくし達の様な団体であればこの様な施設へ行った方が迷子の心配も無ければ騒々しい雰囲気で動物たちが逃げる心配も無い為有難いとは思うものの、一般家庭がわざわざお金を払ってまで見に来るかというと些か疑問に思う所がある。
それこそ小動物で良いのであれば庭に麦でも蒔いておけば小鳥やリス達がどこからかやって来て啄んだり頬へ貯めこんだりという仕草を簡単かつ安く観察する事ができるではないか、と。
そんな事を思いながらわたくし達はチケットを購入して動物園へと入園して行く。
そしてわたくしは、半時間前の考えなど吹き飛んでしまう。
「あぁぁああぁぁ……なんと可愛らしい生き物なのでしょう……持って帰りたいですわ……」
野生動物は常に同じ種類が見れる訳ではない。
比較的出会う確率が高い動物から警戒心が強かったり、そもそも珍しかったりしてなかなか出会えない動物もいれば、毎回同じ動物と出会えたとしてもそれが前回見た個体と同じ個体である保証はないのだ。
入り口から入園して真っ先にわたくしの目に飛び込んでくる、熊のような姿をしており、本来であれば恐れる姿であるにも関わらず白と黒の配色が絶妙に可愛らしさを演出しているこの奇跡のような生き物は?
こんな動物、見た事も無ければ、もし山で遭遇してしまったのならばこの可愛らしい姿よりも熊に似た姿から恐怖が勝り、生きるために逃げるか討伐してしまうだろう。
動物園という人間がしっかりと管理して安全だと分かるが故に今わたくしはこうしてこのパンダという動物を愛でる事ができるのだ。
なんなら今日一日終えるまでここで過ごしても良いくらいである。
しかしながら、やはりこれ程可愛らしい姿をしている為可愛いと思うのはわたくしだけではないようで、かなりの人気者である為長時間見る事が出来ないのが悔やまれる。
後ろ髪を引かれつつもパンダコーナーを後にすると同時に決意する。
スマートフォンなるアーティファクトを手にして操作方法、主に写メとやらと動画撮影とやらの操作方法を早急に覚えなくてはならぬ、と。




