物凄く悲しい事のように感じてしまう
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そう思いながらシャーリーの頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細め、そのままもっと撫でて欲しそうに頭を預ける様に差し出してくる。
「旦那様旦那様、今日の料理はなんと奥方様の手作りなんですよっ!!お昼に食べた、自分で釣ったイワナの炊き込みご飯が美味しくて、旦那様にも食べて貰いたいと頑張ったんですよっ!!」
「あっ!安奈っ!!それは言わない約束を交わしたはずですわっ!!それにわたくしだけではなく、皆様がお手伝いして頂いたからですわ。わたくし一人では作れなかったですもの」
「だから今日奥方様は旦那様が帰って来るのを今か今かと玄関で待っていたのですっ!!」
「それも言わない約束でしたわっ!?」
そして撫でられた猫の様に幸せそうな表情をしているシャーリーは、杏奈の発言により瞬間湯沸かし器の如く一気に真っ赤に変わっていき杏奈の背中をぽかぽかと叩き始める。
その姿もまた可愛らしく、この家に来た当初抱いていた不安もなんのそのといった感じで年相応にころころと変わる表情をみて、守ってやらねばと、自然とより一層強く思う。
「それなら早く晩御飯を頂こうか。それと、今日はどのような所へ行ったのか聞かせて貰えないか?」
「はいっ!!今日はしおりんとアンナとで山奥にある釣り堀という所で魚釣りを生まれて初めて体験したのですわっ!!それから、お昼には自分で釣った魚で───」
そして、楽しそうに今日体験して来た出来事をマシンガンの様に語るシャーリーの姿を見て、胸の奥から温かい何かが流れ込んでくるのであった。
◆
自分で食材を、それも魚を釣るなどという経験は恐らく貴族の女性に生まれたわたくしは、一生体験できないことであると思っていて、それが当たり前であり別段おかしなことではないとすら思っていた。
食材を育てて調理するのは平民の仕事。
狩りをするのは男性貴族の嗜みと、平民の仕事。
ここ四宮家に嫁いでから、二回目になる料理に、はじめての狩り。
わたくしが釣った魚で作った料理を美味しいと感じ、この美味しいを旦那様と共有したいと、わたくしが釣った魚で同じ料理をわたくしが作り、旦那様がわたくしと同じように美味しいと言って食べてくれる。
勿論それは周りの方達がサポートしてくれたおかげであるのだが、それでもわたくしはとても、とても嬉しかったのだ。
シュバルツ殿下の婚約者であり、そしてそのまま妃となったわたくしでは恐らくこの様な喜びの感情を知らぬまま人生を終わってしまっていたのかもしれない。
この喜びを知ってしまった今、それは物凄く悲しい事のように感じてしまう。
この喜びをモーリーとアンナにも知って欲しいな。
そう思いながらわたくしは、日本語の勉強をし終えた後、眠りにつくのであった。




