一番驚いた事
念話スキルも無しに離れた相手と会話出来るマジックアイテムがどれほどの価値があるのか使用しているミヤーコは分かっているのだろうか?
それこそ戦争の概念が覆りかねない程の力を持つマジックアイテムである事は間違いない。
「どうかしましたか?奥方様」
「い、いえ。何もありませんわ。しかしながら本当に便利なマジックアイテムですわね」
そこまで考えを巡らした時、ミヤーコに声をかけられてハッとする。
そうだ。もう私はお国の為にとあれこれ考える必要が無いのだという事を思い出す。
ここ数日同じミスを何回かしてしまうくらいには、わたくしにとってお国の事を思い憂いる事は無意識にしてしまう程に習慣づいていた様で自分でもびっくりである。
そんなわたくしが婚約破棄を下され、王妃としての教養も何もされていない平民の娘が王妃として婚約者となる。
なんとも皮肉なものだと自分でも思う。
こんな事になるのならばレッスンや勉強も適当にやって程々にすれば良かったと、今更ながら思う。
「ささ、もう直ぐで目的地である旦那様のお屋敷に着きますよ、奥方様。長旅ご苦労様でございます」
そんなこんなで負の感情に浸っているとミヤーコから遂に目的地である嫁ぎ先のお屋敷についたらしい。
目の前には見たこともない外観の、しかし洗練されているデザインの庭に建物が目に入って来る。
「ミヤーコもここまで御者してくださってお疲れで御座いましょう。ご苦労様ですわ。今日はゆっくりと休んでくださいまし」
「ふふっ」
そして、ここまでの功労者でもあるミヤーコに労いの言葉をかけてやると何故か笑われてしまっい、もしかして言葉を間違えてしまったのかと焦ってしまう。
「外見からはキツそうな雰囲気でしたが、意外とお優しいのだとこの道中含めてそう思いましたので旦那様とソックリだなと思わず笑ってしまいました。申し訳ございません」
「…………あ、謝る必要等ございませんわっ」
そしてわたくしは照れ隠しでつっけんどんな態度を取ってしまうのだが、なんだか心の奥底がほんの少しだけぽっと温かかくなった気がするのであった。
◆
「お初にお目にかかります。この度ソウイチロウ・シノミヤ様の妻となりましたただのシャーリーという者でございます。家名等は剥奪され名乗る事を許されておりません事を何卒お許しくださいませ」
屋敷に着くと早速この家の主でありわたくしの旦那となるソウイチロウ・シノミヤがいる部屋へと通された。
フスマという聞いたことも無い扉を含めてこの家は全体的にスライド式の扉が多く驚いたのだが、何より一番驚いた事は家の中で靴を脱がなければならないと言うルールであろう。
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