凄い便利
「それで半分騙されている様な状況になっているんじゃ、意味ないじゃん」
「耳が痛いこって」
そんな俺にマルコが指摘してくる。
実際に数年来の親友だと安心して保証人へサインした結果多額の借金を背負わされたという話もよく聞く為マルコの指摘は実に耳の痛い返しであるのだが、例え国王陛下であるラインハルト陛下に裏切られたとしても許せるくらいには恩義を感じているし、信頼もしている。
その時は自分の人を見る目が無かったという事と、ある意味で恩を返せたのだと思うであろう事が容易に想像つく。
しかしその事は良いのだが、今俺が考えなければならないのは俺の妻となる女性の事であろう。
ラインハルト陛下の事だ。
どうせ高階級の貴族令嬢であり美人、性格も申し分ない女性が選ばれている可能性が高い。
本当に俺なんかで良いのか?むしろ嫌々結婚させられた可能性だって捨て切れない。
むしろ未だに政略結婚が根強いこの世界においてはその可能性の方が高そうだ。
しかしだからと言って婚姻を破棄して送り返すという事は同時に彼女にそうせざるを得ない何らかの欠陥があるという噂が立ち、瞬く間に広まってしまうのは火を見るより明らかであろう。
どうすれば良いのか?と小一時間悩んでみたはいいものの結局良い案は一つも思い浮かべる事ができず、なるようになるさと逆に開き直るのであった。
◆
賊を引き渡すのに時間がかかった為本来であればもう着いている時間を過ぎてしまっている為、今現在既に日も暮れ始め辺りは夕焼け色に染まり始め肌寒くなって来ている。
現在我が王国であるグラデリア王国の季節は秋から冬へと変わろうかという時期であるのだが王都から離れるにつれ寒く感じるのは精神的な物なのか、それとも実際にこちらの方が王都より寒いのか。
「こちらミヤーコ、こちらミヤーコ、聞こえたら応答願います」
『どうされました?』
「道中賊に出会い、その対応をしていた為遅れましたがあと数十分ほどで到着する旨を旦那様へ伝えてください」
『かしこまりました』
そんな事を思っているとミヤーコが誰かと会話し始めるので中から御者席の方を覗いてみるとミヤーコ以外誰もおらず、黒い箱を口に近づけて話しかけている姿が見えた。
「ああ、このマジックアイテムは初めて使用している所を見たらビックリしてしまいますよね。実はこれ、念話スキルが無くても遠く離れた人と会話ができるマジックアイテムなんですよ。会話できる距離には限りがあるのと、これ単体では使えないのですけれども、凄い便利ですよねー」
確かに、身を乗り出して御者席を覗き見る姿は、端から見れば興味津々といった風で覗いていた様に見えたのかもしれないと思い一瞬だけ羞恥心が襲ってくるのだが、そんな羞恥心などミヤーコの次の言葉で全てが吹き飛んでいった。
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