プライドがそれを良しとしない
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そんなこんなで一旦『あにめ』というのは置いておいて、まず初めに『ひらがな』と簡単な文法を覚える所から始めることにしたわたくしはルルゥと一緒に小一時間勉強した後夕食を食べる為にダイニングへと向かう。
本日の夕食も当然の事ながら何が出るのか、どんな味であるのか等楽しみで仕方が無いのだが、それと同時に食事が終わった後の勉強も今の時点で楽しみである。
勉強をもっとやりたい、早く習いたいと思える事が初めての感覚で何だか変な気分である。
そしてわたくしはいつもの席に着くのだが、席の前には二本の棒状の食器、『おはし』がおかれている。
この『おはし』なのだが、事前にわたくしが用意するようにお願いした物である。
それというのも、言語同様にシノミヤ家に嫁いでいて、旦那様のルーツであり故郷でもある日本で代表的な食器を使って食事ができないというのは、これから一緒に外で活動していくにあたってやはり旦那様の知人や近しい貴族達との会食も出て来る訳で。
その時になって『おはし』を扱える事が出来ずわたくしだけナイフとフォークを使っては旦那様の顔に泥を塗る行為を、わたくしはしたく無いと思うし、わたくしだけ『おはし』を扱えないのは恥ずかしくもあり、そして「日本人じゃないから仕方ないよね」と言われてしまうの、それが例え優しさから来る言葉であったとしてももそれはそれで腹が立つというものだ。
一言で言うならばわたくしのプライドがそれを良しとしない。
因みに、皆様上手に『おはし』を扱う姿は何だかカッコいいですし、わたくしだけ仲間外れの様で少しだけ悲しく思ってしまう為でもあるというのは、知られるのは恥ずかしい為秘密である。
更に付け加えるのならば、もし万が一まだモーリーとアンナがわたくしの事をお友達と思ってくれており、お茶会等を開く時が来た時に『おはし』を美しく、そして器用に使いこなして自慢してみたい、と思っている事も当然ながら秘密だ。
「なんだか嬉しそうだな」
「ええ、日本語のお勉強も、『おはし』の練習も、まだ見ぬ料理も、全てにおいてワクワクしておりますもの」
「そうか。まぁシャーリーがそう思うのであれば俺も嬉しいし安心できる。しかし日本語もお箸も俺と結婚したから覚えなければならないという訳でも無いからな。その部分だけは心に留めておいて欲しい」
「あうあう」
そして旦那様はそう言ってくださると優しそうな笑顔を向け、わたくしの頭を少しだけ乱暴に撫でてくれる。
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