上の偉い人がやれば良い
そしてわたくしは思い出す。
ここ『にほん』という国は魔術では無くアーティファクトが優れている国である事に。
それは自動で動くマジックアイテムの様な物やそれこそ今座っている座椅子や食器一つとっても王国ではとんでもない高値で売られる様なクオリティーの品々であり、本日行った『いーおーん』なんかまさにその集大成と言っても過言ではない。
そして、恐らく旦那様の話からしてこのガラスの容器は職人の手で作られたものではなく、この容器をガラスで作る様に設計されて作られたアーティファクトによって作られたのだと言いたいのであろう。
何となくそれが当たり前の様に旦那様は言っているのだが、その技術がどれほど常識外れな事であるのかを理解していないのが窺えてくると共に、ここ『にほん』では当たり前の事なのだろう。
魔術がアーティファクトに劣っているとは言わないが、ここまでくれば最早新しい魔術の一つと言われても納得してしまう位には見分けがつかない、と思ってしまう。
それこそ、人の手を使わずしてゴーレムなどを作れるのだとしたら、この国の軍事力は計り知れないものとなるし、実際ゴーレムではなくとも似た様な物、下手をすればわたくしの想像も及ばないようなゴーレム以上の物だって作れるかもしれないのだ。
もし以前の、シュバルツ殿下の婚約者であった頃のわたくしであったのならば早急に帰国して『にほん』との国交を、それこそ戦争にならないようにという話し合いをしなければと行動していたであろうが、今のわたくしはただの一弱小貴族へと嫁いだ小娘であり、更にその旦那様はなにを隠そう『にほん』国人なのである。
そんな面倒臭い政治のあれやこれやは上の偉い人がやれば良いのだ。
今更王国の為にと自らを犠牲にしようとも思わない。
わたくしだって喜怒哀楽を感じる人間なのだ。
シュバルツ殿下から皆の前で辱めを受ける様に婚約破棄され、王国騎士団であるダグラスからは殴られ、公爵家の当主であるお父様から縁を切られると家から叩き出され、更には命まで狙われたのである。
今思い返してみれば何だか腹が立ってきましたわ。
「今日は飲んで食べて飲んで食べてやりますわっ!!」
「よっ!奥方様っ!!その意気ですっ!!」
少し前まではこんな事をした瞬間、お父様お母様躾係のメイドから怒鳴られ説教され一か月は部屋に閉じ込められるのだが、ここにはそんな事をする人がいないどころか、わたくしの宣言に合わせてルルゥが合いの手を入れてくれる。




