乾杯の音頭
「ほ、本当ですのっ!?ありがとうございますわっ!!…………………す、すみません」
ジョンにこの『ざいす』という椅子を頂けると知って思わず声を上げて喜んでしまい、恥ずかしさの余り縮こまってしまう。
こういう所が旦那様から見て子供っぽいと思われるのだろう。
わたくし自身、子供っぽいと思いますもの。
以後気を付けなければ。
「別に恥ずかしがる事でもないだろう。嬉しい時に嬉しいと素直に表現できるのはそれはそれで魅力的だと俺は思う」
「そ、そんな………魅力的だなんて」
とは思っていたのだが、旦那様がそう言うのであれば話は別である。
嬉しい時は素直に嬉しいといって行こう。
しかしながら旦那様がわたくしを見つめる目が久しぶりに会った叔父さんと同じ目をしているのは気のせいでしょうか?
「旦那様、流石に女心を弄ぶのはいかがなものかと」
「ジョンにしては面白くない冗談だな」
「いえ、冗談とかではなく………奥方様が幸せそうでございますのでこれ以上は発言を止めさせて頂きます」
「………ん?まぁ、良いか」
『テステス、ただいまマイクのテスト中ただいまマイクのテスト中本日は晴天なり』
そしてジョンと旦那様が会話をして、それがちょうど終わったその時、マジックアイテムか日本製の音を拡声するアイテムであろう物を手に握りルルゥが意味が分からない言葉を喋り出すと、雑談をしていた使用人達は一斉に口を紡ぎ辺りは静かになる。
『これよりグラデリア王国側使用人と日本側使用人の友好を深める親睦会を開催したいと思いますっ!!旦那様により乾杯の音頭を取らさせて頂きますので皆様一同、一度ご起立して頂きますよう何卒宜しくお願い致します』
ルルゥが続けてそう言うと先ほどまで一同立ち上がった後静かになっていた使用人達は一斉に騒ぎ出し、時に指笛が部屋に響き渡る。
それはまるで王国王都で行うセレモニーの開始を告げた時の様な騒ぎ様である。
『静粛に、静粛に。皆様、グラスには飲み物が注がれているでしょうか?では旦那様である総一郎、乾杯の音頭をお願い致します』
『えー、本日はお日柄もよく────』
『そんな形に嵌った文言でなくて良いのでさっさと言って下さい。それに今は夜な上に室内でお日柄も良くとか言う必要も無いでしょうっ』
「「「「そーだそーだっ!!」」」」
『お、お前たち………まぁいい。俺も若い頃は上司の長話は苦痛だったからな。では、両陣営の更なる発展を願って、乾杯っ!!』
「「「「「「「かんぱーーーーいっ!!!!」」」」」」」
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