あっちこっち上や下やと大わらわ
『…………っ!?聞こえるっ!お姉さんの声が頭の中で聞こえるよっ!!凄い凄いっ!
どうやってやってるのっ!?』
よ、良かったですわ。
どうやらわたくしとこの男の子との相性は凄く良いみたいである。
感情どころかこの男の子が思っている事まで理解出来る程に感度が良い。
これならば意思疎通に苦労せずに男の子の親御さんを探す事が出来るだろう。
それにこの『念話』に興味を持ってくれたのか食いつき泣き止んでくれたのもありがたい。
という訳で泣き止んでいる今のうちに聞ける事は聞く事にする。
『やり方は秘密ですわ。それよりも今はご両親と逸れて迷子になっているのではなくて?』
『違うよ?』
『そうなのですの?』
『うん。僕が迷子なんじゃなくてお父さんとお母さんが迷子なんだよ?迷子になるから離れちゃダメって言ったのに気がついたらお父さんとお母さんがどっかに行っちゃったんだもん。だから僕が迷子になったんじゃくてお父さんとお母さんが迷子なんだもん』
『そ、そうなんですのね』
なんとも子供らしい考え方というかなんというか、つまるところこの男の子は親であるご両親と逸れている事には変わりないという事であろう。
男の子の言い分は一旦置いておいて、男の子が泣いていた理由が想像通り迷子になったからであると確定できただけでも収穫である。
『では、お姉さんと一緒に迷子になったお父様とお母様を探しましょう』
『うん』
そしてわたくしと男の子の大冒険が始まった。
『と、トイレはどこですのっ!?』
『こっちっ!!』
『に、にほん側のシノミヤ家で一度おトイレを借りていて本当に助かりましたわ』
『次はこっち行こうっ!!』
『そちらには何があるのですの?』
『ゲームっ!!』
『お父様とお母様を探すにではなくて?それに子供がルールを理解できるゲームなどあるのでしょうか?』
『ついたっ!ゲームっ!お姉ちゃんお金っ!』
『お、お金っ!?わたくしは今お金など持っておりませんわ。それに他人にお金を払えというのはわたくしどうかと思いますの』
『良いもんっ!ケチっ!』
『けっ!?』
『次はあっちっ!』
『ちょっと、お父様とお母様を探さないといけないのではなくてっ!?』
もうてんやわんやであっちこっち上や下やと大わらわ。
子供故の無尽蔵の体力と欲望に忠実な物言いにもうヘトヘトである。
特に、わざわざおでこではなく手を握るだけで意思疎通が出来る様になってからは尚の事である。
『次はオモチャっ!あっちにオモチャがあるから行こうっ!』
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