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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

きんぎんほのぼの

作者: 七四

 登場人物の容姿に関してはあまり描写していないので、お好きなイメージで妄そ……想像してください。


 学生か、社会人か…


 姉妹か、友達か…


 色んな設定思い付くと思うので、どうぞ。


「何してるの?」

「んー…ねぐせなおんない…」


 とある街の一軒家にて。


「じゃあくし貸して」

「ん…」


 二人の少女が言葉を交わす。


「うわ~やっぱり髪の毛サラサラだ」

「うゅー…」


 片や楽しそうに相手の髪を弄り、片や寝惚け眼でされるがままになっている。


「うぅ~…こんなのこうしてやる!」

「にゃぁ~」


 ロクに手入れなど考えていないだろうに美しい髪に、八つ当たりのように捏ね回すが、反応はとろけるような気の抜けた声。ここに他に人がいたならば、お前が言うか、とツッコんでいただろう。


「むー…ほら、起きてよ」

「おきてるー」

「起きてないでしょ」


 これ以上やったところで望んだ反応は見込めないと判断した少女は眠り姫の意識を覚醒させようとする。


「起ーきーろー」

「ふわぁ…」

「………」


 呑気な欠伸にじとっとした目を向けつつ、少女は最終兵器を持ち出す。


「あーあ、早く起きないとご飯冷めちゃうな~」

「ご飯」

「…もうちょっと早く起きてよー」

「無理」


 一瞬で覚醒した少女に呆れつつ、もう一人の少女はトーストやスクランブルエッグ、サラダなど、シンプルな洋風の朝食を小さなテーブルへと並べていく。


「いい匂い」

「ふふん、そうでしょ」

「さすが」


 配膳している少女は言葉少なな称賛に露骨に喜びつつ、いつの間にか席についていた食いしん坊の対面に座る。


「早速、」

「「いただきます」」

「美味しい」

「だから早いって」


 二人同時に手を合わせ、感謝を捧げる。最早恒例となった食いしん坊少女の箸の早さに軽くツッコミつつ、もう一人の少女も食事を始める。


「今日は家出るの、ちょっと遅くていいよね」

「ん」


 食事をしつつの確認に、箸を止めることなく返ってくる簡素な返事に苦笑する少女。


「「ごちそうさまでした」」

「美味しかった」

「当然でしょ!」


 味わっているのか、というスピードで飲み込んでいた少女だが、感想をしっかりと伝える。もう一人の少女も、その言葉が出任せや適当なものではないと分かっているため、誇らしげに答える。


「準備できてる?」

「ん」

「じゃあ行こっか」


 二人は新しい一日の始まりの喜びにピコピコと耳を動かす。


「「いってきます」」


 玄関を開けると共に吹き込んだ優しい風が少女らの、金銀の髪を揺らし、そのくすぐったさに、少女たちは臀部から伸びるモフモフとした尻尾を震わせた。



 これは、こんな少女二人の一時を、ゆるゆると綴った物語。



…………………

……………

………



「たっだいまー!」

「ただいま」


 パチッと部屋に明かりが灯り、家主の存在を示し始める。


「汗かいちゃったねー」

「お風呂…」


 今は暑い夏。帰ってくるだけでかなり汗をかいてしまい、不快感が拭えない。


「お風呂はもうちょっとしないと。お湯張ってないから」

「むぅ…じゃあシャワー」

「んー、確かにちょっと長くシャワーしてたらお風呂たまるかな?」


 一刻も早くどうにかしたい無口な銀の少女はシャワーを提案する。


「じゃあ、どっちが先に入る?」

「「………」」


 残念ながら、こと今回において譲合いの精神なんてものはなかったらしい。二人はバチッバチッと火花が幻視されるように鋭く互いを見合う。


「「最初はグー、じゃんけん──」」

「パー」

「チョキ!」

「………」

「やったー!」


 どちらからともなく突然始まったじゃんけん。

 勝ったのは金の少女だ。喜ぶ金の少女に、銀の少女はあからさまに不満げな視線をぶつける。


「そ、そっちだってじゃんけんに乗ったんだから譲ったりしないよ!」

「……じゃあ、一緒に入る」

「…………へ?」



………………

…………



「せ、狭くない?別々で入ろうよ…」

「狭くない。私が先なら別々でもいい」

「それは…」


 先程、エアコンをつけるのを忘れて睨み合っていたため、不快感は帰ってきたときよりもかなり酷いものとなっている。

 この状態で待たされる……


「…一緒に入る」

「ん」


 返事を聞いた銀の少女は満足気に頷き、瞬く間に服を脱ぎ去る。


「脱ぐの早っ!」

「早く入りたい」

「ちょ、ちょっとくらい隠してよ…」

「? なんで?」

「な、なんでって…」


 驚いて、思わず銀の少女を凝視した金の少女は少し顔を赤らめる。

 前に銭湯や温泉に一緒に行ったことはあるが、家の狭い脱衣場で二人きり、裸で向かい合うという状況に、何となく恥ずかしくなってきたらしい。


「早く脱いで」

「う、うん」


 恥ずかしさから、そそくさと着替える金の少女と、それをじっと見つめる銀の少女。


「な、なんで見てるの?」

「見てない」

「いや、見てるでしょ!」


 何故誤魔化せるのかと思ったのか。


「脱いだなら早く入る」

「え、ちょっ…」


 銀の少女は強引に腕を引き、浴室へ入っていく。


「シャワー」

「ま、待って──わぷっ!?」


 銀の少女が早くも出したシャワーが金の少女の顔面を強かに打つ。痛みは無さそうだが…


「ちょっと?」

「っ!」

「なんで逃げてるの?」


 金の少女も、さすがに堪忍袋の緒が切れたらしい。


「悪い子は…」

「………」

「こうだっ!」


 金の少女は手に握ったシャワーを銀の少女へと向け、勢いよく……ちょっとやさしめの威力で水をぶつける。ただし、冷水である。


「ひぁっ!?」

「ふふふ、冷たいでしょ」


 可愛い悲鳴に嗜虐心をそそられた金の少女は楽しげに笑う。


「ひぁっ…あっ…」

「…………」

「んっ…ゃ…」

「…………」

「ひぅっ!…ぁ…」

「……はっ」


 あまりに色っぽい声に自分を見失っていた金の少女は正気を取り戻すも、銀の少女は少し疲労が見える。


「あ、えっと、ご、ごめんね?」

「………」

「え、えっと、わざとじゃ……わざとなんだけどそうじゃなくて…」

「えい」

「ひゃんっ!?」


 言い訳にならぬ言い訳をしどろもどろになりながら言う金の少女をじとっとした目で見ていた銀の少女はおもむろに手を伸ばし、そこにあったもの──金色の尻尾を掴む。


「なでなで」

「ひぅ…し、尻尾はだめぇ…」


 銀の少女は優しく、そして大胆に尻尾を撫で、そして撫でられた金の少女は切なげな声を漏らし、ゆっくりと体が崩れ落ちる。


「仕返し」

「ご…ごめ…んなさ…ぁっ…ぃ」


 心なしか、銀の少女の目に熱が入っている。それも危ない系統の熱が。


「………」

「…ひぅ…そ、そろそ…ひゃんっ!?…そろ、そろ…お、風呂…入ろ…」


 無言で黙々と尻尾をワサワサと撫で回す銀の少女に軽い恐怖を覚えつつ、この場を切り抜けるための提案をする。


「や」

「風邪…引くから…んっ…」

「……わかった」


 金の少女は不穏な間を感じるも、一先ず収まったことにほっとしつつ、体を起こす。


「あ、ちゃんと体と髪洗ってよ?」

「ん」


 しかし、そこまで広くない浴室。洗えるのは一人ずつが限界だろう。


「あ、二人は無理か。先にいいよ」

「あとでいい」

「え、そう?じゃあ…」


 小さな椅子に座った金の少女は早速体を洗おうとする。が、


「ひゃっ!?」


 突然、後方から腕が伸びてくる。


「な、なにするの!?」

「洗ってあげる」


 伸びてきた手は、よく見えていないだろうに、器用にボディーソープを掌にとる。


「ちょ、ちょっと、自分ででき──ひぁ!?ど、どこからしてるの!」

「? 胸」

「それはわかってるよ!」


 ひんやりとしたボディーソープを胸にいきなり塗りつけられ、嬌声が漏れる金の少女。


「や、やめてぇ…」

「気持ち良さそう。もっとやる」


 先程に比べれば善意多めの行動のようだが、如何せんありがた迷惑感が否めない。


「んん…」


 とはいえ、先程のような危うい気持ち良さではなく、マッサージを受けている感覚であり、健全である。健全である。


「も、もうちょっと上…」

「ん」

「ひぁっ!?い、行きすぎ!」


 本当にマッサージを受けている気分で場所の指示を出す金の少女だが、銀の少女はわざとか、そうでないのか、脇腹をツーっとなぞりながら金の少女の胸に手を添える。


「? こっち?」

「ひぅっ!?」


 次は肩甲骨をなぞり、うなじに手を置く銀の少女。


「も、もういいから!髪洗わなきゃ!」

「むぅ…」


 金の少女が手を振り払うと、銀の少女は不満気ながらも大人しく手を引く。


「ふぅ…」

「………」


 人心地ついて気持ち良さそうに髪を洗う金の少女。その背後で妖しい光を目に宿す銀の少女。


「「………」」


 金の少女の頭では、気持ち良さそうにもふもふとした耳がピコビコと小さく動いている。それに合わせ、銀の少女の目もあっちへピコピコ、こっちへピコピコ。


「………」

「───」


 そろーっと動き出す銀の少女。金の少女は全く気づかない。


「………」

「───!」

「っ!?」


 そろそろと伸ばしていた手が髪を洗う手とかすかに触れる。


「…何かして」

「してない」

「返事早くない?」

「気のせい」


 金の少女はまだ訝しんでいるが、気にしないことにしたらしく、そのまま髪を洗い始める。


「「………」」


 しかし、銀の少女は諦めないようだ。再び手を伸ばし始める。


「………」

「───」


 今度は気をつけてぶつからないように手を進める。


「………」

「───」


 そーっと、そーっと。


「せいっ」

「っ!?」


 盛大に驚いた──銀の少女が。


「そう何度もやられないよ!」

「むぅ…」


 振り向いた金の少女が、まさに耳に触れようとしていた銀の少女の腕を掴んだのだ。


「ほら、私は終わったから」

「わかった」


 金の少女と入れ替わりに銀の少女が椅子に座る。その背中を見ながら、仕返しを企んでいるのがまるわかりのニヤニヤ顔をする金の少女。


「終わった」

「早っ!?」


 早い。流れるような手つきで全身にボディーソープを塗り、髪もシャンプー、リンスとやってあっという間だった。おそらく洗ったというよりボディーソープでコーティングしただけの状態だろうが、それを指摘する者はいない。


「お風呂」


 洗い終わった二人は向かい合った状態で湯船につかる。


「「………」」


 視覚的な距離は大して変わっていないものの、足と足が密着し、かなり狭くなっている。


「狭い」

「そんなこと言っても…」


 金の少女が言い終わるより前に、銀の少女はざばっと立ち上がる。


「足開いて」

「え、なん」

「足開いて」

「…わかった」


 足を開いた金の少女。銀の少女は回れ右してそのまま湯船に腰を落とす。


「っ…」

「これでよし」


 現在の状態としては、銀の少女が金の少女の腕のなかに収まっている。


「………」

「ん……」


 金の少女の眼前には洗いたての艶々と輝く銀の髪と、わずかに覗くうなじ……


「───」

「?」


 ここまでのバタバタにより、若干悟りを開きかけているらしい金の少女。


「どうしたの?」

「───!」


 しかし、銀の少女は無自覚にして無慈悲である。

 至近距離で振り向いたことにより、二人は鼻がつくほどの距離で顔を見合わせる。

 銀の少女の尻尾は、不思議そうにユラユラと揺れ、金の少女の体をくすぐる。


 みるみる内に金の少女の顔が朱く染まり、耳と尻尾がブワッと逆立つ。


「風邪?」

「ち、ちがっ…」

「熱……あ、お風呂だからわかんない」

「───」


 銀の少女の猛攻は止まらない。風邪と勘違いしたのか、金の少女と額を合わせ、熱を測る。自分で気づいた通り、お風呂でやっても熱いだけだろうが。


 ただでさえ近かった距離はゼロになり、金の少女の意識もゼロになった。


「…あれ?」

「───」


 このあと、二人してのぼせた。



…………………

……………

………



「うぅ…ごめんね」

「ん、大丈夫」


 床に敷いた二枚の布団に転がって言葉を交わす。


「「………」」


 早く寝てしまえばいいのだが、どことなく落ち着かない雰囲気が漂う。


「あ、え、えと、今日なにかあった?」

「ん…本読んだ」

「どんなの?」

「…内緒」

「えー」

「「………」」


 銀の少女も話したくないわけではないようだが、何分振った話題がよくなかったのか。ほぼ一日中一緒にいたというのに何を話すのか。


「…あ!そういえば今日ね」


 しばしの無言の後、金の少女は何か思い出したらしい。


「えっとね、今日私、告白されたんだよ!」

「───」

「すごいでしょ?モテモテだからね、私!」

「………」

「…どうしたの?」


 思っていたようなリアクションが貰えず、あまつさえ黙られてしまい、不安になる金の少女。


「…なんて返事したの?」

「え、返事?そりゃ断ったよ」

「………」

「だって一回も話したことない人だよ?無理だよー」


 金の少女は返事が返ってきたことに安心しつつ、話続ける。


「私、あの人と話したことほとんどないん──わっ!?」

「………」

「ど、どうしたの?」


 突如、金の少女の腰に、銀の少女の腕が巻き付く。

 金の少女が話に夢中になっている隙に、銀の少女は、ゆっくりと金の少女に近づいていたらしい。


「…だめ」

「え?」

「…知らない人と付き合っちゃだめ」

「…えっと、だから断ったって…」

「だめ」

「えぇ…なんで…」


 金の少女の胸元あたりにあった銀の髪が、ずいっと動き、二人の目が合う。


「私のだから」

「わ、私のって」

「だから、取っちゃだめ」


 そう言うや否や、銀の少女は金の少女をぎゅっと抱き締める。


「───」


 しばらく、ぼーっとしていた金の少女だが、甘えるように──というか、完全に甘えて胸に擦り付けられる頭を撫でる。


「大丈夫。私はどこにもいかないよ」

「………」


 今日はちょっとだけ夜更かしした。



…………………

……………

………



「ち、遅刻するっ!」

「早く。遅れる」

「寝ぼけて起きなかったのそっちでしょ!?」


 とある街の一軒家にて。


「あれ?バッグどこ?」

「あっち」

「早く取ってこなきゃ!」


 二人の少女が言葉を交わす。


「これじゃない!」

「じゃああれ」

「あった!……スマホどこ!?」


 片やバタバタと探し物をし、片や涼しい顔で玄関に立っている。


「よし!準備できた!」

「ん、遅い」

「誰のせいよ!」


 玄関を開けると共に吹き込んだ優しい風が少女らの、金銀の髪を揺らし、そのくすぐったさに、少女たちは臀部から伸びるモフモフとした尻尾を震わせた。


 二人は外へ歩き出す。


「「いってきます」」


 繋いだ手の温もりに、頬を緩めながら…


 読んでいただきありがとうございます。

 楽しんで頂けたなら幸いです。

 もしよくない点があれば容赦なくどうぞお願いします。改善する(かもしれない)。


 皆さんの少女たちはどんな姿ですか?

 性格で想像が若干狭められたかもしれませんが、ご容赦ください。

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