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レベル800万越えの35歳童貞と娼婦の恋  作者: アホになろう
6/16

私の秘密を知っても抱いてもらえますか?

ナーテ視点です。

 涙をぬぐって、私は床で寝ているクレスさんの朝の生理現象に不能ということはなさそうで少しほっとした半面、相手にされていないことへの葛藤が募ります。

 


「おはようございます、クレスさん」

「あ、おひゃようございます」

「すみません、わたしがベットを取ってしまって」

「いえ、全然、気にしません。俺のベットで良ければ好きなだけ使ってください」

「でも、クレスさんは床で寝ることになってしまって……」

「全然、気にしすることありません。あ、着替えますよね、俺飯食いに行きますの部屋自由に使ってください」



 クレスさんは慌てて廊下へ出ました。私の体ってそんなに魅力がないのかな?


 でも、ここで諦めちゃダメ。クレスさんなら孤児院の借金問題を手伝ってくれそうだもん。それに、そのまま私を貰ってくれたら最高です!


 あ、よだれが出ちゃっいました。クレスさんは食堂よね、少しぐらい強引でもデートに誘ってみます。



「あのクレスさん。今日は何か予定がありますか?」

「いや、何もないよ」



 クレスさんは私と自然な感じでお話をしてくれます。これはまだチャンスありますよね、うん。



「もしよかったら、私と街で買い物をしませんか?」



 言っちゃった!ストレートすぎたかな?あ、そうよ、ジャイアントワイルドボアのお礼にすれば自然です。



「あれだけの報酬をやっぱり一人で貰うのは悪いのでお礼をさせてください」

「あ、全然気にしなくていいですよ」



 え、あれだけの大金を気にしないってどういうこと?やっぱりここは押しが必要なのね、押しが。クレスさんってもしかしたら良い人過ぎるかもしれないですから。



「いえ、是非ともお礼をさせてください」



 よかった、これでデートが出来ます。あ、違った。そうよ優先するのはお礼でした。



「それでは、支度をしてきますのでまた後で合流しましょう」

「え、ええ、わかりました」



 急いで支度しなくちゃ。どの服がいいかな、あまり服持ってないから、可愛い服はお店の服だけどそれじゃあダメ。絶対にダメよね。嫌われる可能性が高いです。



 なんとか待ち合わせ場所に間に合いました。クレスさんはまだ来ていないようです。落ち着いて私。このデートを成功させることは今後につながるはず!ファイト~。



「すみません、お待たせして」

「いえ、私も来たばかりですから」

「そうなんですか?」

「はい!」

「クレスさんはどこか行きたいところはありますか?」

「え、俺ですか?実はあまり王都の中を歩いたことがなくて何があるのかよく知らないのですよ」

「わかりました。では、私が案内します。いきましょう」



 まずは、男性でも興味が持てるお店に行かなくちゃ。あ、そういえばマジックリングが入荷していたっけ?それをクレスさんにも見てもらいましょう。



「ここは冒険者の魔法装飾品を扱っているお店なんです。私のマフラーもここでニーニャと一緒に買いに来たんですよ」



 前回はニーニャと来た時、値段をみてビックリしたのよね。しかも、まさか今回はデートで来るなんて……違ったお礼をしなくちゃ。



「あ、この指輪、魔法防御が上がるんです。それに、綺麗ですよね~」

「よろしかったら実際に指にはめてみてください、効果をすぐに体感することができますから」

「いいんですか?」

「はい、当店自慢のマジックリングになりますので是非ともご試着ください」



 店員さんにお願いして自分の指のサイズに合うものを用意してもらいます。と言っても、5つほどしかサイズの種類はなく私とクレスさんはサイズの合うものを選びますが二人とも左手の薬指に合うサイズしかなかったのは、偶然でしょうか?



「綺麗です~」


 

 左手の薬指に私とおそろいのを嵌めているのに嫌がっていないところを見ると、クレスさんは疎いのですね。


 私はわかってやっているから確信犯です!



「あの、これください、ナーテさんここは俺が払いますよ」

「え、いいんですか?」

「はい」

「ありがとうございます」



 クレスさんに指輪買ってもらいました。どうしよう、これどういう意味と捉えたらいんだろう?もしかして、もしかすると、もしかしてもしかして!


 私の思考はあさっての方向へ飛んでいきますが、視界にニーニャが入ってきたので戻ることが出来ました。あまりに浮かれていると怒られそうです。それにしてもまだ、仕事中のはずなのにどうしたんだろう?



「あ、ニーニャ!こんな時間に外を出歩くなんて?」

「大きな依頼が入ったから私が直接出向いて交渉をしてたの」

「そっか、どんな依頼なの?」

「そうですね……ナーテとそこの……」

「あ、クレスです」

「クレスさん、もしよかったら3日後に物資輸送のお仕事があるの。参加してみませんか?」

「ニーニャ、それ私も受けれるかな?」

「ええ、よかったらギルドでお話ししましょう」




 私とクレスさんはニーニャに勧められるクエストの説明を受けます。


 なんでも穀倉地帯の中心街タウバッハの街まで荷物を輸送するのだが、馬車が足りなくて困っているらしいです。


 そこで、クレスさんの収納魔法で輸送グループに加わり往復する回数を減らしてほしいとのことです。


 物資の量はかなりあるらしく金貨10枚ぐらいの報酬額って聞いて私は驚きました。


 クレスさんは快く依頼を引き受けていたので、是非同行させてほしいとニーニャに頼んでいました。するとニーニャもそういうだろうとクレスさんにお願いしてくれたようです。おかげでクレスさんの輸送依頼の護衛として一緒にタウバッハへ行くことが出来るようになりました。



「クレスさん、頑張りましょうね」

「もちろんですよ、よろしくお願いします」

「クレスさんと一緒なら私、何があっても大丈夫な気がします」



 3日後のクエストが楽しみで仕方ありません。ただ、その前にお店では伯爵様の予約が入っているのを思い出して私は気が重くなりました。




 クレスさんの輸送依頼の日、冒険者ギルドに行くとおびただしい数の馬車が用意されていて圧倒されました。



「ニーニャ、これ全部今回のクエストで使用するの?」

「ええ、そうよ。いくら収納魔法があっても限度ってものがあるでしょ。それに馬車の数が少なくて往復回数を増やすわけにはいかないの」

「そうか~今回は結構大掛かりな輸送依頼なんだね」

「だから、ナーテには御者もやってもらうけど出来るわよね」

「任せてよ、伊達に歳食ってないよ」



 自分で言ってて虚しくなります。ただ、他人に言われるともっと虚しくなるんです。




 しばらくするとクレスさんは荷物を回収して冒険者ギルド前へと現れます。



「ニーニャさん、こちらは?」

「はい、今回の輸送依頼での護衛になります、ランクDのドラゴンファイトというパーティです」



 あ、他の冒険者もいます。私も全然気が付きませんでした。



「おう、ドラゴンファイトのリーダーのガイディンだ。よろしくな」

「クレスです。よろしくお願いします」



 変わった格好をしている人だと思ったが根は真面目そうに見えます。それよりもその他の方がちょっと怖いかも。



「それともう一人、冒険者のナーテだ、彼女もランクDになる」



 ニーニャが紹介してくれました。私は帽子とマフラーで顔の面積の80%を覆ったパンツスタイル。可愛くない姿であまりクレスさんの前に出たくないってのが本音なんですけど。



「クレスです。よろしくお願いします」

「……」



 なんだろう、仕事している男性って感じのクレスさんがいつもより二割増しでかっこよく見えます。



「それでは、クレスさん。荷物をどれぐらい収納魔法に保管できました?」

「あ、全部です」

「そう、全部ですか……え?」



 流石クレスさんです。いい意味で期待を裏切ってくれます。どうですか、ニーニャ。クレスさんのすばらしさ。



「まさかここまでとは、正直呆れます」

「あはは」



 呆れるとは失礼ですよ、ニーニャ。


 とりあえず野営ポイントまで日が暮れる前に行くことになっているので時間厳守で出発しました。


 御者をやってくれたのはやっぱりガイディンさん。「俺に任せな」と張り切ってやってくれるので思った通り良い人です。




 私達は予定通りの場所で野宿です。テントや野営用の料理などはクレスさんの収納魔法に入れてきていたのでとくに不自由のない野営を楽しみます。正直、こんな野営は初めてです。



「クレスさん、最高だよ。俺、クレスさんならいつでも護衛しますぜ」

「あ、ありがとう」



 ガイディンがクレスさんにお礼を言ってます。やっと、クレスさんの良さが分かる人がここにいました。





 ただ、その夜にドラゴンファイトのメンバーが、私のことを知っているみたいで夜這いに来ました。ですがクレスさんがいるので絶対に無理!



「あの、やめてください」

「なんだよ、いいじゃねえか。店では散々やってんだろ、アリス」

「ここはお店じゃないです」

「大丈夫、金は払うよ。だから」

「お願い、やめてください」



 一人用のテントで襲われそうになっていましたが、またしてもクレスさんが助けに来てくれました。本当にクレスさんは白馬の王子様のようです。クレスさんが襲ってくれたらいつでもOKなのですが……。



「おい、何やってんだ」

「あ、なんだ、依頼主か。今、お楽しみ中なんだ邪魔しないでくれ」

「おいおい、ナーテさんは嫌がっているように見えるが、何が楽しいんだ?」

「何言ってるんだ。こいつはプロの……」



 ダメ、クレスさんに言わないで。お願い!それだけはやめて。



「やめて」



 クレスさんにだけは知られたくない。それを知ったらクレスさんはいなくなってしまいそうです。確信はないけどクレスさんの雰囲気はそんな感じの人。だから、お願いやめて。



「なんだ、そういうことか」

「なにがだ?」

「依頼主はこのナーテとどういう関係で?」

「まあ、知り合いだ」

「本当に知り合いなんですか?深い関係では?」

「いや、そんなことは……」

「あはは、依頼主、あんた騙されてますぜ。このナーテって女は王都の高級娼館の№1なんだよ」



 ああ、終わった。すべて終わりました。借金返済まで隠せたらいいと思っていたけど、もうバレてしまいました。



 その後、ひと悶着しているみたいだけど、私は絶望の中で佇むしかなかった。なぜ、娼婦であることがばれただけでこうも落ち込むのだろう。……嫌われたくない、この感情が先走っているからですね。



「ナーテさん……」



 誰が触った?まるで伯爵様が触った時と同じ気持ち悪い感じがします。



「イヤぁ」

「……っ」

「あ、違うんです……クレスさん」

「いえ、すみません」



 私に触れてくれたのはクレスさんだった。気がつかなかった。最低の態度を取ってしまった愚かさが胸を締め付けます。クレスさん違うの……私は……。



「あ、クレスさん、もしよかったらこちらで寝て下さい」

「え、でも」

「この辺りは比較的安全です。クレスさんは護衛対象ですので、俺は朝まで起きますから心配いりません。ナーテさんもいいかい?」



 声がでない……私は首を縦に振ります。



 クレスさんは私が娼婦だと知ってどう思ったのか知りたい。でも聞くのが怖いです。



「あの、クレスさん」

「なんですか?」

「あ……なんでもないです」



 とてもきつい口調で返されてしまいました。ああ、やはり娼婦ということで軽蔑されたに違いありません。嫌われたんだ私。


 でも、私はクレスさんのことが好き……娼婦としてでもいい。一度でいいから彼の腕で抱かれたいと強く思います。


 



 その日の夜は眠ることはできませんでした。


 朝になり私は着替えやテントの収納を行っているとどうやら揉めているみたいです。


 私はその言い争いに参加しませんでした。


 それよりもクレスさんの私を見る目が冷たい気がして胸に刺さる棘が痛くて痛くて耐えるのがやっとでした。

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