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レベル800万越えの35歳童貞と娼婦の恋  作者: アホになろう
15/16

光の柱に祈るナーテ

ナーテ視点です

 私がクレスさんに相手にされない理由がようやく分かりました。


 なぜならクレスさんにはニーニャがいるからなんです。


 昔からニーニャは男性への興味を一切持つことがありませんでしたから。


 特に冒険者ギルドで働き始めてから仕事一筋でそれ以外には本当におざなりになっており家の片付けもまともにできないほどです。


 



 私はどうすればいいのでしょうか?


 娼館のベットの上で私はニーニャとクレスさんのことで頭が一杯です。これから伯爵様がお見えになります。


 失礼のないようにマスターからは体を拭くように清潔にするようにと言われているのですが、頭が一杯になって手が止まってしまいます。




 伯爵様がお見えになる日はいつも憂鬱です。ですが、今日は別の意味で憂鬱になってます。



「私のお腹にもクレスさんの赤ちゃん―――(がいればいいのに)」


 

 ついついぼやいてしまいます。


 でも、実際にクレスさんとの赤ちゃんが出来たら男の子?女の子?どっちなのでしょうか。


 名前も決めなければいけませんね。


 それと服なども用意しなくてはいけません。


 小さい間は男女共用でもいいですが、年頃になると女の子ならスカートを履かせてあげたいですね。





 叶わぬ夢ですよね……ですが、ちょっと考えただけでも楽しくなってきます。



「アリス、何をそんなに楽しそうにしているんだ?」

「あっ、い、いらっしいませ。ご主人様」



 楽しい妄想タイムは終了となりました。伯爵様がお見えになられましたから。


 

「おら、今日も楽しませてくれよ」

「キャ」


 

 いつものように伯爵様は強引です。


 伯爵様にベットに押し倒され、胸を触られると気持ち悪いのはいつものこと、我慢するしかありません。




ドーーーン




 何でしょうか?何やら遠くで爆発音がしました。


 私は窓の方を見ると遠くで光の柱が空高く昇っているのです。


 すると伯爵様の秘書の方が部屋へと飛んできました。



「ご主人様、大変です。森の聖域付近で爆発音と光の柱が」

「ああ、わかっている。方角的に間違いないな?」

「はい、予言通りの……方角です」

「くそ、これからだっていう時に」

「気持ちは分かりかねますが、光の柱を優先されるのが良いかと」「

「わかっておる。それよりアリス」



 伯爵様がいつもに増して怖い感じがします。にらみつけるように私の顔を覗き込むので怖くて顔を背けてしまいます。



「な、なんでございましょうか?」

「きさま、孕んでおるのか?」

「え?いえ、月のものはしっかりと来ておりますのでそれはありません」

「フン」



 伯爵様は何が言いたいのでしょうか?も、もしや伯爵様の子を孕めと……それはどうにかして避けたいですが、このままではありえますよね。



 その後、伯爵様は私を抱くことなくすぐにお帰りになりました。


 


 あの光の柱はなんだったのでしょうか?でも、おかげで今日は気持ち悪い行為を我慢することなく終わりそうです。


 光の柱様のおかげですね。手を組んで祈りを捧げましょう。


 光の柱に祈りを捧げているとお店の従業員が入ってきました。


「アリスさん、よろしいですか?」

「まあ、アーロイさん」

「今日は大丈夫なようですね」

「はい、光の柱様のおかげです」

「さようですか」


 カッコイイお爺様ことアーロイは今日も来てくださいました。本当に優しいお方です。


 まだこの娼館に来て間もないころから伯爵様に抱かれた後はいつも泣いていました。そんな私を慰めにお話をして下さります。



「今日はあなたにお客さんが来ましたよ」

「伯爵様以外ですか?」

「ええ、確か、クレスと名乗っておりました」

「へ?クレス……さん?」

「おや、お知り合いでしたか」

「たぶん、そうだと思います」



 なぜクレスさんは私のところに来たのでしょうか?ま、ま、まさか……お別れの挨拶でしょうか?


 それともニーニャとの結婚の挨拶?……あまり聞きたい内容ではないです。



「アリスさん、どうされました?急に泣き出して」

「いえ、大丈夫です。アーロイさん。クレスさんはどちらに?」

「本日は伯爵様の予約が入っていましたので、お帰り願いました」

「そうですか」

「アリスさん、クレスさんとは恋人関係なのですか?」

「恋人ではありません。知り合いではありますが、仲良しなのかどうかは私も分かりません」

「そうですか、私は彼の様子から察するにアリスさんの恋人かとではなければ、彼の片思いでしょうか?」

「片思いですか?それはないですよ。だって、クレスさんはもうすでに……」


 

 クレスさんとニーニャの関係を思い出すと泣きそうになってしまいます。



「そうですか、彼は絶対にアリスさんに片思いしているとばかり思っていました」

「なぜですか?」

「彼が帰る時にアリスさんに予約が入っていると聞いた瞬間にゾッとするほどの殺気を放ってました。怒っていたのでしょうね」

「怒っていたんですか?それは予約が入っていたからですよね。申し訳ないことをしました」

「まあ、予約が入っているから怒ったのは間違いないですが、彼はどちらかというと嫉妬していたのでしょうね」

「クレスさんが嫉妬ですか?」

「まあ、老いぼれですが、同じ男としての勘みたいなものですかね」



 これはどう考えるのが良いのでしょう。


 ニーニャを孕ませて……もしや、私も孕ませるつもりでは……


 私もしかして妾にでもしてもらえるのでしょうか?


 どうしましょう、こんな私でもクレスさんの妾になれるのかな?


 でも妾になったらどんな生活になるのでしょうか。


 クレスさんは商人ギルドで稼いでいますので金銭的には妻二人いても生活は安定してそうですね。


 でも輸送依頼が得意そうなので旅が多くあまり家にはいないかもしれません。たまに帰ってきたら子供に旅の武勇伝を披露して寝かしつけたりする優しいお父さんになりそうです。きっとクレスさんなら優しいお父さんになるでしょう。


 そして、夜になると……ベットの上で武勇を披露してくれるのでしょうか?


 まだ、希望は捨てるのは早計かもしれないです。




「何やら想像が膨らんでいるようですし、老いぼれは失礼しますね」

「あ、いえ、その、ありがとうございます。アーロイさん」

「頑張ってください。アリスさん」

「はい、明日もお店で頑張ります」

「そうではなく、あなたの幸せのために頑張ってください。娼館で働きながらも幸せになった女性を私は沢山見て来ました。同時に不幸になった女性も見てきています。どうかアリスさんには前者でいてもらいたいのですよ」



 アーロイさん、なんて優しいんだろう。奥さんと子供がいなかったら私はアーロイさんに惚れていたかもしれません。実際に同じ娼婦仲間でアーロイさんは争奪戦が行われるぐらいだとか……その気持ち今なら分かります。





 森の奥で光の柱が昇った二日後、私は冒険者ギルドにクエストの依頼を探すために足を運びます。


 ですが、ニーニャが床に倒れているのを見て心臓が止まるかと思うほど驚いたのです。



「ニーニャ、どうしたの?」

「金……」

「金?」

「金貨1000枚……ガク」

「え?どういうことなの。ニーニャ、ニーニャ!」



 ん?ニーニャは倒れていますがなぜかとても幸せそうな顔をしています。それにしても、金貨1000枚って何ですか?



「ナーテ、おはよう」

「おはようございます、メロさん。実はニーニャが」

「あ、大丈夫だよ。ニーニャはこれまでにない金貨を貰って倒れているから」

「え?」

「クレスさんって知ってるでしょ。あの人がニーニャとナーテに金貨1000枚を譲渡したんだよ」

「どうして?」

「んーそれは、えっとねナーテ落ち着いて聞いてね」

「はい」

「どうやらあなた達を手籠めにしたいらしいのよ」

「冗談ですよね?」

「いや、本人がそう言ってたから、間違いないよ」




 正直メロさんの言っている内容が良くわかりません。


 整理してみます。


 まず、ニーニャが金貨を貰って倒れた。


 その量が金貨1000枚みたいです。


 そして、それはクレスさんが私とニーニャに譲ったものであることです。



 クレスさんは私達を手籠めにするために、報酬を全額ニーニャと私に?半分づつでも金貨500枚です。


 なぜ、すでに手籠めにしているニーニャをわざわざ手籠めにするために報酬の金貨を譲渡するのでしょうか?



 あー!ク、ク、クレスさん、もしかしてニーニャに赤ちゃんがいるのを知って手切れ金のつもりでしょうか?


 酷い、酷すぎます。


 私は薄情なクレスさんなんて嫌いです……もし私がニーニャだとしたらどう思うでしょう。





 クレスさんの子供を身籠って金貨500枚を貰う……あれ?意外に悪くないでは?







 でもでもでも、夫として責任を取るように叱ってあげなければダメ男になってしまいかねません。


 クレスさんを正しい道へ連れて行くのも一つの愛だと思います。



 待っていてください、クレスさん。ダメ男からすぐに元の優しいクレスさんに戻れるように私は努力を惜しみません。

 

 まずはクレスさんに会って直接話をしなくてはいけません。



「あのメロさん、クレスさんって今、どこにいるか分かりますか?」

「まあ、メロ的な勘ではクーク村かな」

「そうなんですね」

「もしクレスさんを探しているなら丁度いいクエストが緊急発注されているんだけど、受ける?」

「どんなものなのですか?」

「えっとね、クーク村のサンドリア姫の護衛ってやつ」

「私も受けれるのですか?」

「可能よ。それに一日でなんと報酬が金貨1枚という破格な値段なのよ」

「すごいです。私、そのクエスト受けます」

「了解、ナーテが最後の一人だね。それじゃあ、今すぐ出発をしてもらえるかな?」

「今すぐですか?」

「明朝に現地集合になっているからこれから馬車で行けば何とか間に合うよ、もしかして都合が悪いのかい?」



 仕方ありません、クレスさんのことは保留です。


 もしかしたらまた娼館に来るかもしれないで、アーロイさんには呼び留めてもらうようにお願いしておきましょう。


 


「あ、それは大丈夫です。私よりも―――」



 私は床で幸せな顔をしているニーニャをどうしようかと迷っていました。



「大丈夫、ニーニャはこのメロが面倒見ておくから」

「ありがとうございます、メロさん」




 私はニーニャをメロさんに任せてクーク村のスイデンさんという村長さんのところに向かいます。


 詳しい情報は馬車の中で聞きました。


 なんでも第三王女であるサンドリア姫をその日一日守るために沢山の騎士や冒険者が集められたとか。


 


 

 翌朝、私はクーク村へ到着です。


 私はこの村に到着してすぐに探し人を発見できました。


 まずは、お礼を言うのが礼儀ですよね。



「こんにちは、クレスさん」

「え、なんでナーテさんがここに?」

「はい、冒険者ギルドの依頼でクーク村へと来ました。それと……」

「それと?」

「あの、ありがとうございました」

「……受取出来ましたか?」

「本当によろしいのですか?金貨1000枚なんて大金を」

「ええ、孤児院の借金に当てて下さい」



 え?どういうことでしょうか?孤児院の借金って言われてもどこの孤児院でしょうか?


 もう少し詳しく聞く必要がありそうです。



「こんなことを聞いていいのか分かりませんが、どうしてそこまでしてくださるのですか?」

「そりゃあもちろん―――」

「やはり私を手籠めにするためですか?」

「はい……ってどうしてそうなるのですか?」

「冒険者ギルドの職員であるメロに聞きました。なんでも、そのニーニャと私を手籠めにするために金貨1000枚を差し出すって」

「ちょっと待ってください、そんなこと……あっ」



 やはり手籠め疑惑は間違いなかったようです。


 クレスさん、ちょっと見損ないました。どうしてそんなことするのでしょうか?


 性奴隷が欲しいなら私が代わりになってあげます。ニーニャまで巻き込まないでください。


 でも、手籠め疑惑が黒だとするとやはりニーニャに対しては手切れ金と考えるのが妥当なのでしょうか?



「そ、そ、そういえば、どういった依頼なのですか?」

「この国の第三王女の護衛の任務です。他にもたくさんの冒険者の方が集まっていますよ」

「へーそうなんですね。それで王女様はどこに?」

「はい、この村にもういらっしゃるということを聞いているのですが」

「それにしても、すごい人数だな」



 話題を変えて誤魔化そうとしています。


 どうしましょうか、このままでは本当にクレスさんがダメ男になってしまいまそうです。 



「クレス~どこ~?」



 え?女性の声。しかも、よ、よ、呼び捨て!まさか、この村の女性とお付き合いをするために手切れ金をニーニャへ渡したのですか。



「サン~ここだよ~」

「もう、遅いですよ」

「ごめんよ、ちょっと紹介したい人が来ているんだ」

「?」

「こちらの美人はナーテさん、王都で冒険者をやっているんだよ。俺も世話になっている恩人だ」

「……そうなんだ」



 ん?どうしましょう。姫様です。目の前にサンドリア王女がいます。


 しかもクレスさんはサンドリア王女を短縮形で呼んでいます。



 はっ、いけません。姫様に失礼がないようにしなくては……でも、ニーニャからクレスさんを奪うなんて、やるせない気持ちで一杯です。


 ただ、ニーニャも不幸です。相手が悪すぎます。




「申し遅れました。私は冒険者をやっているナーテと申します、サンドリア姫」

「はい、よろしくお願いいたしますね。美人のナーテさん」



 サンドリア王女はとても素敵な笑顔で私を威嚇してきます。


 ですが、同じ孤児院出身のニーニャのために少しぐらいは抵抗をしてみたいものです。



 笑顔には笑顔です。

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