4 長崎編
「えー、5回目を迎えました、【お笑い!!quiz王】。これまでに、正解者が一人もいませんでしたので、キャリーオーバーして幾星霜。なんと、50万円に膨れ上がっちゃってます。何がって? ああ、もちろん、賞金に決まってまっしゅ。さて、行き当たりばったりのクイズ番組ですから、何が起こるか、アイドンノウです。
わたくし、司会進行を務めさせて頂きます、渡辺ヒロミと申します。よろしくお願いします」
パチパチ……(見物人の拍手)
「今回も、どんな珍解答が出るか、ベリー楽しみですねっ!本日は横浜にやって来ました。チャレンジャーは外人さんです。ハロー!」
「コニチワ」
「おう、日本語、大丈夫ですか?」
「ダイジョブ。ニホンノダイガクイッテル」
「オッケー。お名前は?」
「トム・サンクス、モウシマス」
「では、トムへの
第1問です。『源氏物語』の作者は?」
「ア、コレ、シッテマス。ムラサキシキフ」
「ブー! あ~、惜しい。5万円取り損ねましたね。正解は紫式部。濁点ありね。ふ~、セーフ。
第2問。武田信玄と言えば、何カザン?」
「……カツカザン?」
「ブー! 活火山のこと?」
「イエス」
「残念! 風林火山のフウリン」
「オー! フーリン(風鈴)ネ。チリンチリンネ。シッテルヨ」
「ま、いっか。
第3問。織田信長、明智光秀と言えば、何の変?」
「カンコーヘン?」
「ブー! 残念。本能寺の変のホンノウジ。肝硬変なんて、難しい言葉知ってますね?」
「トモダチ、ソレデ、ニューインチュー(入院中)」
「えっ? 20代で?」
「ノー、ノー。ソノヒト、ヨンジュー(40)スギノダイガクセー(大学生)」
「なるほど。では、
第4問です。表面の態度はきわめて礼儀正しく丁寧だが、実は尊大で相手を見下げているさまの四字熟語。何ブレイ?」
「ジョセー(女性)ノトシ、キク、ブレー(無礼)ネ」
「ブー! 残念。慇懃無礼のインギン。さすが、アメリカの男性は、レディーファーストですね」
「ノーノー、イングリッシュ」
「オー、アイムソーリー。私、総理。ひげソーリー」
ハハハ……(見物人の笑い声)
「では、
第5問です。身近な事情は、かえって分かりにくいことを、トウダイ何?」
「ノーノー、トーダイ(東大)、チガウネ。ヨコハマノダイガクイッテルネ」
「ブー! 残念。灯台もと暗しのモトクラシでした。ミスタートム、専攻は?」
「オー、センコー(先生)、チンチクリンノハゲチャビンネ」
アハハ……(見物人の笑い声)
「専攻と先生のセンコーと勘違いしたようです。えー、途中経過です。まだ正解がありませんが、1問目の紫式部は実に惜しかったですね」
「イエス。シーツ、ムラサキイロ。デモ、イチマイダケ。ニマイアッタラ、ムラサキシキブ、イッテタネ」
「ははーん、なるほど。通訳すると、こう言うことですね。シーツ、つまり、紫色の敷布を持ってるが、一枚しかないのでムラサキシキフと答えたが、もし、二枚持ってたら、複数になって、ムラサキシキブと答えたであろう。と言うことですね?」
「イエス」
「うむ……。一枚しか持ってなくて助かったと、ほくそ笑んでる関係者がいるかも、カモン。なんちゃって。では、
第6問です。機会を狙って、様子を窺うさまの四字熟語、何タンタン?」
「タンタン? ……オー、アレネ?シッテルヨ。タンタン、タヌキノ○○タマワ、カゼモナイノ二、ブ~ラブラ~♪」
アッハッハッハ……(見物人の爆笑)
「ブー! ブー! ブー! やだ、もう。放送禁止用語ですよっ! あー、ビックリした。生放送じゃなくてよかった。誰に聞いたの? それ」
「ヨンジュースギノダイガクセー」
「肝硬変で入院中の友達ですね? ったく、ろくなこと教えないんだから。ずっと入院してろ。正解は虎視眈々のコシでした。では、
第7問です。相撲などの最後の日をセンシュウ何?」
「オー、センシュー(先週)ワ、ツボハチイッテ、カラオケイッタネ」
「ブー! 残念。千秋楽のラク。ほう、楽しそうですね。居酒屋のツボ8に行ってからカラオケに行ったんだ? 誰と行ったの?」
「ゴジュー(50)スギト」
「その人も大学生?」
「ノーノー、コイビト」
「げっ。恋人? 50代の女性と付き合ってんの?」
「ソー。デモ、カワイー(かわいい)カラ、サンジューダイ(30代)二ミエルネ」
「愛してるの?」
「オー、アイラブユーエムイー(Ume)」
「ユメさんて言うの?」
「ノー、ウメ。アイラブUme」
テレビカメラに手を振るトム。
ボーーーッ!
「タイミングよく、偶然に鳴った船の汽笛も祝福してますよ。メイビー、ネイビー、アーミー。なんちゃって」
ハハハ……(見物人の笑い声)
「では、ツボ8ゆかりの
第8問です。ニシンが大漁にとれたことで有名は北海道の地名は?」
「ニシン? アー、ニシンゲポノコト?」
「ブー! 残念。石狩。ニシンゲポって、日進月歩のこと?」
「ソーソー、ソレソレ」
「難しい言葉知ってますね。これも40過ぎの大学生から聞いたの?」
「ソー。イガク(医学)ワ、ニシンゲポイッテタ」
「肝硬変で得た知識ですかね? では、
第9問です。コーヒーを漢字にしたとき、共通する部首は?」
「ブシュ? アー、ブスネ。カオブスデモダイジョーブ(大丈夫)。タノシー(楽しい)ヒトスキネ」
ハハハ……(見物人の笑い声)
「ブー! 残念。王でした。さて、最終問題です。ミスタートム、最後に5万円稼いで、ウメさんとのデート代にしてくださいね」
「オー、サンキュー。ガンバルデス」
「では、
第10問です。背筋が寒くなるとは、どんな感じ?」
「カンジ(漢字)ニガテ(苦手)ネ。シッテルカンジ、アイ(愛)ダケネ」
「ブー! 残念。恐怖感などでゾッとする感じ。でも、漢字は愛だけ知っていれば大丈夫。ミスタートム、ありがとうございました。これ、参加賞です」
「アリガト」
参加賞のポケットティッシュを受け取るトム。
パチパチ……(見物人の拍手)
「バイバイ。イケメンの上に、足が長いですね」
「サヨナラ」
ポケットティッシュをズボンのポケットに押し込みながら、海辺に向かうトム。テレビカメラがその様子を追っている。しばらく、紺碧の海を堪能すると、歩き出すトム。途端、つまずいて転びそうになる。
ハハハ……(見物人の笑い声)
「……トホホ。長身が災いして、足元の段差に気づかなかったみたいです。足が長いのもよしあしですね。あしからず、なんちゃって」
―OK!―