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その鎧 ○○につき 2

「やったぞ!完成だ!」


 大喜びで完成を上げるのは白衣の科学者たち、鎮座しているのは人が着込むには少し大きめの無骨な甲冑。


 試作機であることを示す形式番号が塗料で塗られた肩以外はセラミックと金属の光沢がまばゆい、いわゆるロールアウトカラーという無骨さそのものを示す甲冑の名前はプロテクトタクティカルギア。後にPT-Gシリーズと呼ばれる傑作機、その第一号である。


 「理論的には歩兵が持つ大口径ライフルにも耐えれる装甲、オプション装備では追加装甲と専用の大盾でミサイルも耐える。30ミリなどという化物ライフルも使える。それどころか推奨装備があの欠陥品と呼ばれたミニガンというではないか。これさえあれば我が国は如何なる敵も防げよう」


 制服と勲章から参謀総長とわかる大柄の男と嬉しそうに握手する背広姿の男。背後に控える黒服には独特のバッチが付けられているので警護担当とわかるだろう。そう、握手の相手は防衛大臣だったりする。


 2130年代に入り、大国同士の資源争奪戦、権益争奪戦は苛烈なものとなった。弱小なる国には生きる価値は無いと再び、覇権主義が台頭し、それに呼応するように抵抗勢力が生まれていった。


 当然、平和憲法などというお題目を唱えていた連中は戦争反対のプラカードを掲げていたが、デモとプラカードで止まるような軍隊はもはやなく、侵略者によって物理的に排除されていた。

 

 弱ければ強くなるしかない。その原理を理解した国家は武装を生み出していった。新型の戦艦、戦闘機、戦車は言うに及ばず、電脳世界では日々、新型のウィルスがネット中を駆け巡っていた。




 皮肉なことに核戦争に備えたシステムだったインターネットはウィルスによって汚染され、時代は海外との通信を制限した電子鎖国時代となった。




 そんな中、歩兵や戦車搭乗員、戦闘機クルーという人員の損害を減らしたほうが戦争に勝てると考えた極東の島国は残された技術力と資源を活かし、アニメの世界から現実の世界へと人型兵器を生み出していった。


 開戦当初、他国は侮っていた。機械の鎧とて壊せると。ところが戦闘ヘリは携帯ミサイルで落とされ、歩兵の銃は装甲に弾かれ、戦車の主砲も当たらなければいいと砲身の位置から砲弾の進路を予測され、当たらない場所へと回避される。


 装甲に弾かれ、煌めく跳弾の光。それを無視して進むPT-G、歩兵の機関銃の発砲する光と暗闇に浮かぶ曳光弾の輝き、暗闇にある壁、PT-Gの装甲に弾かれ、曳光弾が弾道を逸らす。ただ、恐怖に負けないために撃ち続ける敵兵に貴重な弾という風に数発だけ、撃ち込まれる30ミリ砲。爆風と衝撃波だけで兵は倒れ伏し無力化される。


 そんなとき、偶然、本当に偶然だが、支援砲撃により倒壊した建物によって動けなくなったPT-Gが確保され研究されてしまった。絶対の守護の終わりだった。


 そしてお互いにPT-Gを投入した戦争はワンサイドゲームではなくなった。


 より強力に、より堅固に、より俊敏に。相手よりも上とを目指した結果、次々とPT-Gが改良される。


 その結果、ついに禁断の思想が生まれた。PT-Gに核砲弾を打ち込ませようと言うものだ。


 装甲には鉛を混ぜた対放射能装甲を張り、密閉度を高め、放射能環境下でも戦闘可能とした。


 その装甲は新型装甲という名目でチタンコーティングされ、砲弾は新型特殊砲弾として核の実戦配備は秘匿されていた。


 そしてそのときは訪れた。首都へと迫る侵攻軍に向け、近距離で放たれる核砲弾。緩やかな曲射弾道を描き、着弾と共に電磁波と核の熱と強烈な閃光が生じ、焼き尽くす。それも数え切れないほどの砲弾が爆発力を期待され、広範囲に閃光と汚染と共に死を導く。


 その時のPT-Gは呪われた光に輝いていた。人類が二度と見たくない光にて。


 このことから全面核戦争へと発展してしまったが、その後もPT-Gは各戦線で活躍し、無意味な戦争は終わった。誰も何も得ることなく、汚染のみが世界を変えた。




 だが、国家崩壊後もPT-Gは活躍する。なぜなら人類は生き延びたからだ。




 復興を遂げた街を守る機体として、その街を狙う強盗団の武装として、開拓地を往来する行商人の護衛として、そして核で汚染された場所から貴重な資源を掘り出すハンターを守るために。どれも往年の輝きはなく、汚れとサビが浮かぶものが多いが、技術と資源を持つものは塗装を施し、往年の名機を復活させていく。


 朽ち果てるまで手入れされて、使われていくそれは兵器としては当たり前だろう。たとえそれが国を守るという理念があっても使うもの次第なのが兵器だからだ。

 

 今日もどこかでPT-Gの生き残りが戦っている。



私は衣装と言われるとどうしても軍用品か定番の制服物が思い浮かぶほど、衣装に関する知識がないです。

いわゆる昔のアムラーがどうとか、今の黒ソックスがどうとかいうのは女性誌が多い情報なのでどうしても苦手な分野です。

で、これを出した回のテーマはキラキラ衣装、じゃあ、いわゆるロールアウトカラーで輝く新品のパワードスーツの流れってイケるんじゃね?というわけで出してみました。


他の皆さんは衣装の細部に渡るまでこだわり抜いた設定でしたから逆に衣装ネタなのに戦闘描写とかが上手と言われてくすぐったい感じです。

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