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叫び声

 

 ボン、ボンと真っ暗な夜、地中深くから爆発する音がする。

 それは牛の死骸の腐った結果、生まれたメタンガスが地上に出る音。

 それは牛たちの無念の叫びに聞こえる。


 口蹄疫、宮崎県を襲った家畜の伝染病だ。どこからどのように感染したか分からないが、感染した牛が一頭でもいれば、その牛舎の残りの牛も殺処分されると決まっている伝染病。

 

 殺処分の方法は銃殺や毒殺ではなく、麻酔の過剰投与による安楽死。執行人は獣医師だ。

 法律でそう決まっている。


 異常事態を分かるのか、注射針を向けられた牛たちは死にたくないと言わんばかりに暴れるが、数人掛かりで押さえ込んで麻酔を打てば安楽死が訪れる。中には獣医師を突き飛ばして大怪我をさせる猛者もいるが、最後は同じように安楽死へと導かれる。


 その姿を見て悔しかった。仔牛の頃から育てた牛たちが死に絶えていき、重機で掘られた墓穴に無理やり埋葬される。

 

 宮崎県の牛は良質なことで有名で日本各地のブランド牛のための仔牛の生産拠点だった。

 宮崎で生まれた牛がある程度育っていけば、ブランド牛の産地の方へ持って行かれ、一定期間飼育したならば、そのブランド牛としての称号を与えられる。 

 いずれは各地のブランドを背負って立ち、品評会で名をはせるだろう物もいたはずだ。

 

 大事に大事に育てた相棒、何時かは殺され、食用肉となる定めだが、そうならずに土に埋められる。


 宮崎の夜は静かだ。だからか、尚更ボン、ボンとメタンガスが吹き出す音が響く。


 ああ、すまない。そう祈るしか出来ない。それでもこの牛の飼育で生計を立てている以上、別れは必ずくる。

 口蹄疫が収束したら、新しい仔牛を育てて、もう一度やり直そう。二度と口蹄疫なんぞに負けないように頑張るから今は安らかに眠ってくれ。


 そう思い、目を閉じるも、ボンボンとガスが奏でる音がする。

 

 ボンボン、ボンボン。ボン、ボンボン。ボンボン。

 

これはかつて口蹄疫で牛をやられた宮崎県の親族の話が元の私小説です。

このときは獣医が宮崎に集められた上で麻酔の過剰投与で永眠させるそうです。

市街地なので銃は使えず、そもそもこういった場合は法律で安楽死が決まっているそうです

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