とある中年男性の回想記-ついでに、今。
はじめての記憶は2歳くらいの頃だと思う。
産まれたての弟、次男に乳を飲ませていた母親の姿を、今でもハッキリ覚えている。
それ以降は記憶が飛び飛びだ。
3歳の頃に近くの公園に遊びにいって、のちに親友となる同級の男の子に、いじめられて泣いた記憶や、親戚一同が集まり、従姉妹のお姉さんたちに可愛いとあやされた記憶とか、連なっている記憶ではないが、記憶に残っていることは数々ある。
母が数字やひらがなの表などを作って、俺に教えてくれていた事や、なかなか俺が懐かないでいた親父がしょげていた事も覚えている。
今思えば、あの時は確実に俺は、愛されていた。
それが当たり前になってしまったのがいけなかったのか、それとも俺が家族を愛さなくなったのがいけなかったのか、それは会話すらなくなった今の家では
もはや、わからないであろう。
記憶の曖昧な三歳児を経て、節目となる幼稚園へと入園するころになると、もうかなりの事柄を覚えている。
とにかく俺は、ほかの同級生より体が弱く、小さく、よくいじめられていた。
いじめといっても、突き飛ばされたりするくらいのケンカレベルだけど、俺は誰にも勝てなかった。よく泣かされていた。
それでも何故かわからないけど俺のことを好きだと言ってくれていた女の子がいた。
その子とよく夫婦ごっこをしていたのを覚えているし、
最後にその子がわざわざ俺の家まで持ってきてくれたバレンタインチョコと、その時の彼女の表情も、今でも覚えてる。
その子のことは今でも母から近況を聞くが、
あまり幸せに生きてるわけではないようで、
せめて元気でいてくれたらと、願っているけど
もう、二度と会うことはないのだろう。
弱い俺を初めて好きになってくれたマヤちゃん。
どうか、幸せでいて欲しい。