5回転
職場から自宅へ戻り、入浴後の髪を乾かしながら、幽霊について考えていた。
僕は幽霊なんか信じていないけれども、佐智子が安心するなら。
そう思って、神社でお守りを買おうと決めた。
出かける支度を済ませ、自宅から出る。
外に出た僕の頬を湿った風が撫でる。
歩くのが不快な気候ではあるが、佐智子のためなら我慢できる。
そう思いながら、駅に向かう前に近所の神社に寄ってみた。
夜になってしまったので、既に社務所は閉まっていた。
それでも佐智子に喜んで欲しくて、住居の方へ伺い、無理に頼み込んだ。
凄く迷惑そうにされてしまったが、なんとかお守りを売ってもらうことができた。
きっと佐智子は、喜んでくれる。
そう思うと、嬉しくてニヤニヤしてしまうのを自分でも感じる。
そんなことをしていたので、いつもより遅い時間になってしまった。
きっと佐智子は今夜も帰りが遅くなるのだろう。
でも、少し急ぎ足で歩く。
電車の来るタイミングも悪く、だいぶ遅くなってしまった。
部屋の鍵を開けて入ると、まだ部屋は真っ暗だった。
まだ帰ってなかったと僕はホッとした。
気をつけながら、部屋の中へ入っていく。
カーテンの隙間から差し込む街灯の光がリビングのテーブルを浮かびあがらせていた。
そこへ買ってきたばかりのお守りを置く。
佐智子の喜ぶ顔を想像して、笑顔になってしまう僕。
満足した気持ちで、お守りを見つめてしばらく立っていた。
すると、玄関の鍵が開けられ、部屋の電気が付けられる。
佐智子が帰ってきた。
僕は、ゆっくり振り向いて佐智子に笑いかけ、声をかける。
「おかえりなさい」