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波風を立てないように働き終え、いつも通り定時で席を立つ。



「それでは、お先に失礼します」


「はーい、お疲れさまー」



返事をしてくれたのは、課長さんだけだ。



「派遣は気楽でいいよね」


「仕事は楽だし、定時で帰れるし、俺も派遣になろうかな」



そんな若い正社員たちの声と笑いが、扉を閉めた背中越しに聞こえた。


僕は、意識して頭の中から音を消した。



満員電車にまた乗って、自宅まで帰宅する。


スーツを投げ捨てるように脱ぐと、浴室に向かう。


シャワーを浴びながら、今日という一日を頭の中から消していく。


浴室から出て髪を拭いている頃、僕の頭には佐智子のことしかなかった。


本当に、佐智子がいてくれて、僕は幸せ者だ。



髪を乾かし、ゆったりとした普段着に着替える。


脱ぎ捨てたスーツをきちんとたたんで、クローゼットへとしまう。


簡単な夕食を作ると、小さなテーブルの上に並べる。


テレビを見るとはなしに見ながら、夕食を食べてしまう。


そのまま食器を洗い、片付けてしまう。



電気を消し、忘れ物はないか確認して、佐智子の部屋へと向かう。


扉から出た外の空気は蒸していたが、なんだか僕には気持ちよかった。



また駅に向かい、電車で2駅。


最寄り駅で降りて、早足で佐智子の部屋へと向かう。


今夜も、また帰りが遅いだろうけど、どうしても焦って歩いてしまう。



鍵を開けて部屋に入ると、中は真っ暗だった。


やっぱり今夜も帰りは遅いんだろうなと思いながら、慎重に部屋の中を進んでいく。


いつもの場所に辿り着くと、身体を横たえる。


思わず、ため息が漏れた。


なんだかようやく仕事が終わったような気がして、ホッとした。



深夜になろうかという時間になって、ようやく玄関から鍵を回す音が聞こえた。


佐智子は、いつも帰りが遅いので外食して帰宅する。


玄関の鍵を閉めて、部屋にバックを置くと、そのまま浴室に向かう。


僕は、横になったまま、シャワーの音と佐智子の鼻歌を聞いていた。


この時間は、僕にとってなんだかとても幸せを感じさせる。



やがて、佐智子も風呂から上がり、髪を乾かす。


おもむろに話始めるのは、突拍子もないことだった。


部屋の物が勝手に動くなんて、今時、小学生でも信じないだろう。


僕は、笑顔で話を聞くだけで、決して言い返したりはしない。


でも、彼女は酷く心配している様子なので、今度お守りでも買ってきた方が良いだろうか?



そんなことを考えていたら、僕の方が今夜は先に眠くなってしまった。


ベッドの上に佐智子がきちんといることを確認すると安心して、そのまま寝てしまった。


この日は、すっかり熟睡してしまい、気がついたら佐智子は既に出勤した後だった。



時間を見ると、僕も慌ててベッドから出て、急いで自宅へと帰る。


急いでスーツに着替え、蒸し暑い朝の空気の中、駅まで走る。


なんとか、いつもの電車に乗ることができた。



満員電車の中は、冷房がついているようだが蒸し蒸しして非常に不快である。


走ったこともあり、電車を降りる頃には、だいぶ汗をかいてしまっていた。


職場につくと、急いで冷房をつけて、少し涼む。


一息ついたところで、いつもよりは簡単に掃除する。



そして、いつもと同じような単調な一日が過ぎていった。

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