もう一つの兵器
外で待てと言われたので壁に寄りかかりながらひたすら待ち続けた褌は少しずつ眠気が襲ってきた。さすがに寝るのはまずいので限界まで耐えたが耐え切れずおちた。と思ったが何かで思いっきり頭を叩かれ眠気が一気に吹っ飛んだ。バランスを崩すも倒れることはなかった。
「何すんだよ。」
叩いた本人に顔を向けながら怒りとまではいかない感情を込めて言った。
「眠りかけてたから起こしただけじゃん。」
全くもってその通りの答えが返ってきたので返す言葉がなかった。
「で、どうだったよ。」
とりあえず結果だけを聞くことにした。失敗談なんて聞きたくなかったのだ。
「もちろん。成功したよ。それとかなり面白い結果も出たし。」
薄笑いを浮かべながら結果だけを言った。もちろん成功したことにはホッとしているところもあるが気になったのが「面白い結果って」結果だけを聞いたが少し聞いてみたくなった。
「あの子の中に入ってる核はAI兵器と一緒のものだった。」
それはとても興味深いものだった。あいつと会ったのは洞窟の中だったのだから、機械になった後に会っている。ということはもともとAI兵器だったのか、はたまた人間だったのか。まぁそれはどうでもよかった。今は大事な妹なのだから。
「で、あいつは今どうしている。」
一緒に出てこないと思うと少しだが心配はしている。
「安心しな。眠らせているよ。」
その一言で全身にめぐっていた緊張が一気に解け、崩れ落ちた。
「なにおちてんだよ。次はお前だよ。」
力がなくなった顔を今度は上に向ける。「え?」と驚きの言葉と脱力感の言葉が混じった言葉を漏らす。
「え?じゃなくてお前も戦いたいんだろ。妹一人を戦場に出すのは私だってごめんだ。」
そう言いながら褌を無理やり立たせて今度は反対側――キララが寝ている部屋の向かい側の部屋に入れ込んだ。こっちの部屋には刀らしきものがあったが刃が無かった。ちょうど鋭いところが綺麗に無くなっていた。
「これは?」褌が指で指しながら捺姫に聞く。
「こいつは『伊耶那岐の剣』。刀型の光学兵器だよ。バリバリの近接用で核は入ってない。」
そこまでの説明を聞き手にとってじっくりと見る。やはり刃が無かった。だが手元の塚に出っ張りがあった。「塚にあるレバーを引いてみ」といわれたので引いてみると刀から黒っぽいオーラのようなものが刀身を包み込む。これが光学なのかと感心しつつ触りそうになったところを思いっきり止められた。
「そこ触ると死ぬよ。っていうのは冗談だけど、痛みが消えなくなるのが事実。」
どういうことなのか軽く目の前に立てかけてあった鉄パイプを切ってみた。ブンという鈍い音を出しながら鉄パイプに刀身の刃が当たる。そこからは早かった。何の音も無くスパッと切れたのだ。しかもかなりの熱量なのか鉄パイプの切り口が赤くなっていた。
「でしょ。」
これはかなり強い武器とともにかなり危険な凶器だった。
「ちなみにレバーを戻すと消えるから、エネルギーは節約してね。」
刀を塚にしまいながら捺姫に言われる。エネルギーというのはあの刀身のオーラのことだというのは理解できたがエネルギーなら充電できるんじゃないかと思った。
「エネルギーだから充電できると思ったでしょ。できなくはないけど妹に負担がかかるだけだよ。」
そういわれ捺姫は出て行ってしまった。一人残った褌は棒立ちで考えていた。妹に負担がかかるとはどういうことなのかを。その場で答えが出ることはなかった。刀を鞘にしまい、捺姫の後を追うように部屋を後にした。