表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

曇桜

深く青い夜だった。

満月が光を伸ばす青の夜空では、薄い雲が足早に流れていく。

その下で煌々と輝く月の光を浴びた石垣が、くっきりとモノクロのコントラストを画いていた。



曇桜



延々と続くコントラスト以外は、何もない。

…二人の影を除いて。


「…明るい夜だ。」


「ああ。」


「僕はどうも慣れない。」


「…。」


ひたすら闇を被ったようにマントで全身を覆った長身の男が、あなたはどうかと問いかけるように視線を向けた。

しかし静かに問い掛けられたはずの男は黙って反応すらしない。

束ねた長い髪を強い風に靡かせながら、その眼でずっと、鋭く月を見上げたままだ。

こうして時々彼が何かに集中すると、返答を求めても無駄であった。

しかし彼には特に返答を期待していたわけではない。


「月明かりは闇を惑わす。…僕はもう行く。」


「ああ。」


「“月冷え”…しないように、ナビキ。」


「…気をつけよう。

頼んだぞ、ヤミ。」


ヤミは横一線だった唇をわかりにくく弧にすると、ゆっくり融けて気配を消していく。

彼がいた辺りにはヤミ色の欠片が花びらのように舞った。

エナメル質の艶が月明かりを白く反射させながら渦巻き、花びらが月を撫でるようにして一瞬隠す。

そして霧となって消えた。

訪れを知らせる“桜”には変わりない。

しかし知らせるのは春ではなく、闇だったのだ。

20080428

企画サイト投稿作品

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ