ユキノシタ
冬。
全ての生き物の活力を著しく低下させる。
…冬のルマティーグは、世界で一番寂しい大陸なのだろうか。
「ルイ、君は素晴らしい。」
「ありがとうございます。」
「早くに亡くした君のご両親も、きっとお喜びになる。」
「はい、ありがとうございます。」
義父の元へきて、どのくらいになるだろうか。
数ヶ月程だ。
たったこの数ヶ月間だが、父上のご指導のお陰で俺の名が今や雲を掴む勢いで昇っている。
「イーズの血、そしてコルーンの名に恥じない魔術士になります。」
「よく言った。ドン=コルーン氏も、君を誇りに思うだろう!」
「ありがとうございます。」
人当たりの良い、柔らかい笑顔のこの人はサン=ナタリー。
三十代半ばのサン先生は、学園内随一の精霊魔術師だ。
この笑顔そのままの穏和な性格で、多くの生徒から慕われているらしい。
ここは冷たい学園の廊下。
真白の大理石は雪のようだ。
そこへ足音が響く。
細工の施された高い天井から、それが遅れて聞こえた。
足音が止むと、俺はそちらへ振り返ってみた。
同じく細工のある白の柱、その陰に透き通ったような女性が一人立っている。
「サン先生…今、よろしいでしょうか?」
「ああ、リオナか。
ルイ、紹介しよう。私のもう一人の教え子、リオナだ。」
リオナという女性が、小走りで先生の側へやってきた。
そしてゆっくり頭を下げる。
「…初めまして、リオナ=リロードです。」
「初めまして、ルイ=コルーンです。」
「リオナも君と同じく優秀でね、二人は私の自慢だ。」
「よろしくお願いします、ルイさん。」
「よろしく、リオナさん。」
先生に負けない、柔らかい微笑み。
張り詰めた大気が暖まったような、そんな気がした。
20080326




