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春に呼ばれて

「いい天気だね。」


「そうですね。」


空は青く、雲一つない。

風も穏やかに暖かな陽気を運んできていく。

その風に乗って、淡い桃色の花弁が一つ通り過ぎていった。


「行きましょう、セイ。」


「ティルさんたち、どこ行ったんだろう。」


「さあ。

ほら、行きましょう。」


乾いた大地。

地と空が、遠くで橙と青の鮮やかな地平線を描いている。

そして白く滑らかに切り出された大きな石がゴツゴツとした広野に無秩序に広がっていた。

セイリアは真平らの人工的な白い石に横になっている。

そうして暫く空を見上げているだけで、酷く無防備だった。

…イアンはセイリアの横に腰掛けて、ずっと遠くの地平線を見つめ続けていた。

二人は何も言わず、ただ見つめていたのだ。

セイリアの一言を合図にイアンは立ち上がったが、それでもまだ起きあがろうとしない。

呆れたように息を落としながら手を差し伸べると、彼女は笑顔でそれを受け取る。


「よいしょ。

イアン君、どこ行くの?」


「どこでしょう…誰かがずっと呼んでいるんですよ。」


「誰か?」


「そう。」


「誰かなあ。」


見渡す限りの広野。

空気は澄んでいるが、どこか埃っぽい。

その埃っぽい空気に乗って聞こえてくる「声」に誘われるまま、二人は手を繋いで歩いていった。

再び静かな時が流れていく。


「あ。」


「わあ!」


セイリアはイアンの小さな手から離れ、駆け出していった。

二人を待っていたのは、


「花…。」


花畑がそこにあった。

こじんまりとしたスペースではあったが、いくつもの淡い色が確かに揺れている。

セイリアは屈み、足元の花を撫でながら振り返って満面の笑顔を向けた。


「キレイ!もしかしてお花に呼ばれたのかな?」


「…ええ、そのようです。」


手を添え耳を傾けると頷く。

イアンの細い肩に花弁がとまり、消えた。


「イアン君すごいね。私もお話ししてみたいよ。」


セイリアは隣に来た小さな頭に柔らかく手を置き、撫でる。

イアンは顎を引いて視線を逸らしたが、拒まないでいた。


「本当に、素敵。」


「「ありがとう」だって。セイ。」


「こちらこそ、って伝えておいて。」


「もう伝わっていますよ。」

20080301

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