ある日の森の中
「もうっ!アンタたちなんて知らない!」
「ごめんてば、マリオーズ。」
「マリー…心配かけてごめん。」
「本当に知らないんだから!
カナエ行こ!」
「…。」
大きな闇色の三角帽子。
鍔も広く、被ると顔を深い影に包みながらすっぽり頭が隠れる。
マリーのトレードマークだ。
そのトレードマークを乱暴掴み、マリーは足音をドスドスと立てながら行ってしまった。
ナサエルは苦笑をして溜息を吐き、ハーディーンは無言で立ち尽くしている。
残されたカナエはマリーを気にしつつ、二人にチラリと横目をやった。
「ハーディーン。」
「…何?」
「気を付けろよ。」
「うん。」
「ナサエルも、ムチャだけはするな。」
「はぁい、わかってるよ。」
「カーナーエ!!」
「今行く。」
ハーディーンは突っ立ってカナエを見送り、ナサエルは微笑して小さく手を振った。
カナエの様子が気になりふと振り返ったマリーが、反省の色のないナサエルを見てカッと顔を赤く燃やす。
そして地団太を踏んで舌を出した。
「うっわ、また怒らせちゃった。」
「…マリーは優しいけど怖いな。」
「…ね、ハーディーン。」
「?何?」
「今度は失敗しないようにしないとね。」
マリーが怒るのも無理はない、とハーディーンは思った。
見上げてくる挑戦的な眼、自信に満ち溢れた唇。
普段はカワイコぶりっ子などと言われるナサエルだが、実は熱い野心に満ちているのをハーディーンたちは知っている。
「そうだな。」
衣服をボロボロにした二人が、しっかりと握手を交わす。
その手も、小さな切り傷や擦り傷だらけだ。
緑の森だけがそれを静かに見守っていた。
20080224




