サイドB第1話『魔窟の洋上楼閣都市』Part55 『決戦・怪腕と剛拳』
第二章サイドB、魔窟の洋上楼閣都市56
決戦・怪腕と剛拳
スタートです
それはまさに――
『巨大な蜘蛛型モンスターの群れ』と『白磁と精錬なる青の甲冑戦士』
――の対立の構図だった。
蜘蛛型モンスターは――
【武装警官部隊盤古・情報戦特化小隊隊長:字田顎】
大脳直結型のネットインターフェース装置を組み込み、脳組織を全て分解するような壮絶な脳強化手術を経て、常人を遥かに超える情報処理能力を得た男。そして周囲のメカニズムと自分の頭脳を直結することで様々なメカニックや情報機器を遠隔コントロールする事が可能となるのだ。
字田は自分自身が内部に入るタイプの蜘蛛型のシルエットの大型のパワードスーツの如き装備『外装機』を所有している。
そして、その蜘蛛型の外装機に入り込み内部から直結することで自らを人間のシルエットから解き放ち、犯罪者をスチームローラーの如き威容にて圧殺戮するのだ。
その時、彼のパーソナリティはもはや人間ではない。完全に非人間的な蜘蛛型のバケモノと化してしまうのだ。そしてそれは殺戮の結果に満足できるときまで決して止まることは無いのだ。
対する、白磁と精錬なる青の甲冑戦士――
【日本警察・特攻装警第7号機グラウザー、オプショナルアーマーギア装着形態】
日本警察の新たなる主戦力であるアンドロイド警察官・特攻装警――、その第7号機である彼の名は『グラウザー』
アトラスから始まったその開発と進化の歩みは、ついに6体目にして一つの頂へと到達した。
そう、それは――
『人間に歩み寄ったより豊かなヒューマニズムを宿した通常体』と、
『より強力な局地戦闘能力を発揮しうる高性能高威力の戦闘体』を、
――自由かつ随意に切り替えることのできる〝人間社会の護り手〟の姿であった。
それはとりもなおさず、グラウザーたち特攻装警らを生み出すために長い苦闘を続けてきた技術者たちが導き出した一つの答えだったのである。
特攻装警の生みの親――〝第2科学警察研究所〟通称、第2科警研――その組織に彼らは居た。
その第2科警研にてグラウザーを生み出した人物――
第2科警研・主任研究員、G班班長『大久保克己』
世界的な人工頭脳の権威であるチャールズ・ガドニック教授から薫陶を受けた愛弟子にして、人工頭脳学の世界でも屈指の若き英才である。
@ @ @
府中市中河原駅から南西方向にある施設『中河原シヴィライゼーションイクイップメント』
公的機関が複数雑居するために設けられたその庁舎の半数以上を専有しているのが件の第2科警研である。
その第2科警研研究施設内の一角に彼らは居た。
グラウザー開発専任チーム・通称『G班』
大久保を班長とした彼らは、第2科警研の中でも若き精鋭たちが集っていることで知られており、開発コンセプトも、技術的ヴィジョンも、非常に先進的、かつ奇抜なアイディアを惜しみもなく採用する事で有名であった。言いかえれば彼らは良い意味で野心的だったのだ。
その彼らが生み出した存在――
それこそが特攻装警開発計画の一つの到達点、すなわち特攻装警第7号機『グラウザー』である。
G班は今、緊迫した状態にあった。
洋上のスラム市街区・東京アバディーンにて、かのグラウザーが臨戦状態にあったからである。
居並ぶG班メンバー職員たちはそれぞれが専有するコンソールの前にかかりきりであった。何故ならグラウザーは今、あの洋上スラムの土地の一角にて交戦状態にあったからである。
G班班長の大久保が問う。
「中枢頭脳部・接続系統のシステム余裕率は?」
それはグラウザーの体内のメイン頭脳と脊髄ユニット、さらにはその周辺部分との相互接続状態を数値化して示した物だ。
100%が稼働可能状態ギリギリであり、100%以下は稼働不能状態、100%を超過すると余裕を持って安全に可動する事ができるとみなされる。当然、余裕率は高ければ高いほど良い。
「現在数値は137%、装着開始から変わっていませ――っと『-1%』、少し下がりました」
大久保に答えたのは少し背の高い人物だ。その彼の言葉に別な人物が答え返す。
「今、ショックオシレーションを〝ショックハレーション〟モードで起動しました。戦闘モードです。おそらくそれに引っ張られたんでしょう」
その隣の別な人物が発言する。
「それまずいっすね。中枢脊椎系は電磁障害に弱いからシールドを何重にも施してるけど、どこかシールド被覆が破れてるんでしょう」
大久保が指示を出す。
「どこが破けてるか探査できるか?」
「遠隔探知ですね? やってみます」
そして大久保は先程の背の高い研究員に声をかけた。
「数値は下がり続けてるか?」
「いえ、ショックハレーションの起動時に下がったのみです。そのまま安定してますね」
「よし、数値が下がり始めたら即報告してくれ」
「了解です」
「そっちシールド破損箇所は?」
「まだです! もう少しください!」
彼らがそんなやり取りを続けていた時だった。G班のオペレーションルームに入ってきた影があった。恰幅のいい肥満体。丸メガネに刈り上げ短髪、いつでもサンダル履きの鷹揚な関西系、D班主任の市野である。
ペタペタとサンダルの音を鳴らしながら大久保の近くに歩み寄りながら、こう問いかけてきた。
「克やん、今、どないや?」
〝克やん〟――市野が大久保を呼ぶときの愛称だ。その声に軽く振り向き視線を投げるとモニターへと視線を戻しながら答えた。
「そうですね。なんとか順調に稼働中――と言うところですか。本格的な戦闘はこれからです。先程、禁則機能以外のすべての兵装を開放しました。ですが早速、不安の種です」
「なんや? 不安て?」
「ショックオシレーション系統――電磁波増幅機能部を可動させたら、中枢系統の余裕率が下がりました。このまま重戦闘を継続して行けば更に下がる可能性もある」
「余裕率は今どないや?」
「137から136へ落ちました。リミットを120で設定しているので、これからダメージを受ければさらに下がるかもしれません」
「そっか――、そら心配やな。電磁被覆がどっか破けとんのやろ」
「ええ多分――」
二人がそんなやり取りをしていた時だった。
「っと! 見つけた! 第3頚椎後方! 直線型の水平亀裂です!」
先程、電磁被覆シールドの損傷部のチェックを命じられていた研究員が声を返した。懸念されていた部分を見つけたのだ。その声に市野が反応する。
「見してみぃ」
市野の専門は物性学である。アンドロイド開発研究に関与するようになってからは素材研究のみならずその研究範囲をさらに広げていた。
「微小損傷の連続体やな――肉眼感知でけんレベルやけど電磁被覆破れには十分や。けんど微小損傷やったらナノマシンプラント可動させて修復できるやろ」
市野は第2科警研に来てから、ある技術を生み出していた。アンドロイドの内部損傷の自動修復機構である。通常なら人間が手術を受けるように、損傷部を開放切開しないと修復できなかったのが、ナノマシンやマイクロマシンを駆使することで、密閉されたままリアルタイムに遠隔修復できる――そんな自動化システムを編み出したのである。
とは言えまだ開発途上であり遠隔による確認操作が必要であったが、それでも開発者である市野自身が運用するなら、その落差を埋めるには十分である。
「わいがやる。ナノレベルで遠隔修復できるか試してみるわ、遠隔操作コンソール立ち上げてくれや」
「お願いします!」
研究員が市野に願い出る。そしてコンソールを操作するととあるプログラムを起動させた。
【 ANDROID ORGANIC 】
【 REMOTE MAINTENANCE 】
【 SYSTEM 】
【 】
【 ―WORKING CELLS― 】
【 】
【 Virtual Interface 】
【 >START 】
そして、立体視可能なフルフェイス型のVRゴーグルと両手装着型のVRグローブを用意する。市野は自ら背もたれ付きの椅子を用意しながら、それを受け取り装着する。
「克やん! 一人借りるで!」
「お願いします」
市野にVRシステムを提供した研究員はそのまま市野の補助に回ることとなった。そしてVRシステムを装着し、シートに着座しながら作業を開始したのだ。
「よっしゃ。時間がない。早速始めるで」
「了解! 遠隔システム、ダイブスタートします!」
そして市野が装着したVRシステムが稼働し始める。そして市野の主観をグラウザーの中枢部内部へと招き入れていくのである。
@ @ @
その脇で大久保は呟いた。
「しかし、ショックハレーションを使用しているとなると――、使用目的は――『オメガハンマー』か?」
大久保のつぶやきに隣の研究員が答える。
「多分そうでしょう。戦っている相手があの黒い盤古の継ぎ接ぎ隊長ですからね。物理的な『殴り合い』に陥っているでしょう」
「他に使われている武装は?」
「〝エアジェットスタビライザー〟〝タランチュラⅡ〟――それと〝ショックハレーション〟をオメガハンマーモードです」
「高速移動しつつ単分子ワイヤーを放出して敵を足止め――そして急所を一撃と言うところか」
大久保のその推測はほぼ的中していた。だが傍らの研究員は疑問を呈した。
「そんな簡単に行くでしょうか? 黒い盤古の隊長は蜘蛛型の外装機を装着しているのでしょう? 6脚以上の多脚ボディは機動性が想像以上に高いです。立体空間での移動能力は桁違いだ。下手をすればグラウザーが張ったワイヤーを逆利用される恐れもあります」
「それはそうなんだが――、くそっ、グラウザーのエアジェットスタビライザーで蜘蛛型機体の立体機動能力にどこまで追いすがれるか――」
「それともう一つ不安が」
「なんだ?」
「あの字田はネット接続能力を強化するために〝脳改造〟を行っていると言います。おそらく〝子機〟を同時遠隔制御してくるでしょう。1対1ではなく1対多数になるでしょう」
脳改造――、それがもたらすメリットと不利益はあまりにも極端だ。頭脳の処理能力を飛躍的に向上させられるが、脳そのものの安定性や情緒性はダメージを受ける。場合によっては人間からかけ離れる恐れもある。
「脳改造なんて大国の軍人だってやらない。〝人間じゃなくなる〟からな」
大久保のその言葉に、場の誰もが頷いていた。大久保はさらにつぶやいた。
「グラウザー――、負けるなよ」
そう語る大久保の視線の先にはグラウザーの現状を示すデータ群がディスプレイモニターに映し出されていた。それはグラウザーの戦いのすべての〝片鱗〟であった。
グラウザーの生みの親である大久保だからこそ、心から願わずにはいられなかったのである。
@ @ @
――電磁波破砕法――
それは電磁波――すなわちマイクロウェーブの研究の過程において見つけ出された現象に由来する技術である。
数十キロヘルツから数百キロヘルツの高出力電磁波を対象物に照射して内部加熱を誘発させ爆砕的に破壊する技術だ。
本来は、ダイナマイトやドリルに代わる、岩盤破壊の方法として研究がなされたものである。しかしながら実用性が乏しいためにキワモノ的研究の範囲に留まっていたのが現実である。
だが、これを兵器に応用する研究が、21世紀に入り、密かに行われていた。
なぜなら、銃器の弾丸に代わる方法で、サイボーグやアンドロイド・ロボットの強固な装甲・防御を破壊し、敵を無力化する必要が出てきたからである。
技術の発達により、防御装甲は軽量薄型でありながら、より強固な物となっていた。
かつては防弾チョッキを突破するのはそう難しい事ではなかった。それゆえに世界中の警察諸組織は、45口径を超える強力な弾丸を使用することは無かった。だが時代が変わり、テクノロジーが発達することで犯罪者の防御力はそれまでとは比較にならないくらいに強固な物となっていた。
使用される弾丸も44マグや357マグ、50AEや10ミリ弾など、それまでは強力すぎて警察や治安用途には過剰威力であるとされていた物が続々と警察用途に採用される状態にあった。だが警察は軍隊ではない。高威力の兵器を安易に使用するわけにはいかないのだ。
そして、弾丸以外の手段で、犯罪者のハイテク化された防御力を突破する方法が模索され始めた。
電磁波破砕法による物質破壊もその一つである。
翻って――
特攻装警には6号機フィールに〝ショックオシレーション〟と言う機能名で電磁波発信機能が備えられていた。
そしてそれは従来のマグネトロンタイプをさらに改良した物であり、単なるレーダー用の電磁波発信とは異なり、電磁波照射による対象物への攻撃用途へも適用可能な物であった。最大出力においては極めて広範囲、かつ爆砕的に電子機器を破壊することも可能な程であった。
対シルバーフェイスのファイブ戦において使用した【ショックオシレーション・インフェルノ】がそれである。
だがこれと同じくして開発が進められていたグラウザーの2次装甲武装には、フィールのショックオシレーションをさらに改良し、より攻撃な運用が可能なように機能設計されていた。
使用される電磁波発信素子をマグネトロンから超小型化ジャイロトロンへと変更――、さらに小型のものを複数で並列装備することで電磁波発生源と電磁波の使用部位との伝送路を短縮する事に成功。グラウザーではフィールよりもさらに積極的に攻撃用途へと適用可能となっていたのだ。
グラウザーは元来が、センチュリーの内骨格型アンドロイドを土台とした設計思想に基づいている。
反射速度と運動性を重視し、肉弾白兵戦闘を重視している。
そこに強化された電磁波発信機能と電磁波破砕法の概念が結びついた時、グラウザーの戦闘能力を強化するためのプランが決まった。
ショックオシレーションを更に強化した機能を【ショックハレーション】と称し、
そのショックハレーションにより生じた大出力の電磁波を両拳にて開放し、電磁波破砕法を適用した攻撃を【オメガハンマー】と呼ぶ。
2次武装装甲――セカンドアーマーギアを装備した時のグラウザーの両拳は――
――剛拳――
――そう呼ぶにふさわしい恐るべき物だったのである。
@ @ @
その洋上のスラム、南東の開発放棄エリア――
開発計画途上で放棄され、荒れ果てた大地である。
今では放置された車両や詳細不明の建築物がわずかに並ぶだけであり、今なお再開発の目処はたっていないエリアである。
そこで〝二人〟は対峙していた。互いににらみ合いながら、戦局の主導権を握ろうとしていた。だが先んじて初手の攻撃を成功させたのは特攻装警の6人目のグラウザーである。
ワイヤーを密かに張り巡らせトラップを仕掛けつつ、左腕の拳のオメガハンマーを敵である字田めがけて炸裂させたのだ。結果、グラウザーは敵の胴体と左前腕にダメージを与える事に成功していた。
しかし――
「――なんだ?」
――彼、グラウザーの優位は続きはしなかった。
疑問の声を漏らす彼の頭上から降り注ぐように舞い降りてきたのは【10体の蜘蛛】――
一体一体は1メートル四方のブロック状の物だったが、それが展開されると6脚の足を持つ自立型の有脚歩行戦車となるのだ。
当然、小型故に内部に何者かが乗っているとは考えられない。
6本の脚部を広げてしっかりと地面を捕えるその動きは、機械的なプログラムだけではなく、まるで自意識を有しているかのようにしなやかで自然だった。
そしてそれはある者によって〝操られて〟いたのだ。
字田はある脳力を有していた。自らの人格を時分割スライス制御し、複数の行動判断を同時に行うことだ。そしてそれと無人稼働機械に遠隔リンクさせる事で、複数の機体を自らの分身のように自在にコントロールできるのである。
【 生体中枢頭脳強制拡張ブースターデバイス 】
【 〔BRAIN BACK DOOR〕 】
【 】
【 ―システム・ドライブ― 】
【 】
【 コマンド実行 】
【 >ナイトヘッド領域活性化:加速 】
【 ≫強制実行 】
【 〔中枢頭脳機能強化率⇒184%〕 】
【 】
【 >中枢意識時分割マルチタスク 】
【 制御レート変更 】
【 ≫時分割レート 】
【 ①通常行動:42% 】
【 ②拡張身体制御:32% 】
【 ③対ネットワーク制御:20% 】
【 ④拡張身体制御:31% 】
【 ⑤遠隔体時分割制御:50% 】
【 ⑥システム余裕率:9% 】
巨大な蜘蛛型ボディの中に収まっているのは、情報戦特化小隊の隊長である字田だった。
彼はその生脳内に特別な頭脳強化装置埋め込んでいる。人間の生脳をネット環境へと直接接続する技術の開発の過程で生まれた人体生脳の強制活性化装置である。中枢神経の中にくまなく超小型電子制御デバイスによるマイクロコンピュータ・ネットワークを埋め込み、己の脳を強制的に電子頭脳化して能力強化を図るものであった。
当然、脳その物への負担は大きく生命の危険も増大する。過激な連用は死に直結する。それ故に開発元の軍の非合法サイボーグ研究ユニットにおいても適用例は皆無という代物であった。
だが彼はそれを敢えて望んだ
「誰ガ1対1を望んデイルと言っタ?!」
悲願を達成するために己のすべてを放棄したのだ。人間であることで得られる未来と、幸福のすべてを――
「俺ガ望むノハ、お前を倒す事デモ、この馬鹿騒ギヲ鎮圧すルコトデもなイ!」
――そう、全ては違法なる存在を視界から消し去るために
――ガギンッ!――
字田が残された6本の脚を強く震脚させる。その衝撃に刺激されたかのように〝金属製の飢えた害虫〟の如き蜘蛛型子機体は、一斉にグラウザーめがけて襲いかかったのである。
「あくマデモ俺は望ミ、求めル!」
字田は破壊されずに残った右腕を可動させると、その前腕部内に内蔵されていた指向性放電兵器の放電効果装置を露出させる。
「平穏ダッタ! かつテノ日本を! 異物ドモの居なカッタ! 安らカダッたこの国ヲ!」
字田が時分割人格で操る9体の蜘蛛型子機体は、視聴覚機能を集積した頭部から頑強な可動性ワイヤーを射出した。強化アルミナ金属ワイヤーの周囲に微細人工筋肉群を張り巡らせ、自ら曲がりくねり動くことを可能とした、言わばサイボーグ技術を応用した〝触手〟である。
それがグラウザーの周囲からまたたく間に射出され、グラウザーの両手両足と頸部と胴体を抑えようとしたのである。
「そのタメなラ〝異物〟はスベテ〝除去〟すベキだ!」
完全拘束されるのをグラウザーは本能的に回避しようとした。全身の大気流加速移動装備『エアジェット・スタビライザー』をフル稼働させ、強引にその場から左へと身体をかわそうとする。触手の4本ほどに捕らえられたが、それでも逃げ場はまだ残されている。
「オ前も除去スル! グラウザァアアア゛ア゛!」
その耳障りな合成電子音声の叫びと同時に、字田の右腕の指向性放電兵器は、その放電効果装置から紫電を一直線にほとばしらせた。
紫色のレーザーが放たれそれに導かれるように数十万ボルトの高圧電流が解き放たれたのである。
【≫エアジェット・スタビライザー 】
【 >フルブースト 】
それと同時にグラウザーは必死の抵抗をこころみる。全身のエアジェット・スタビライザーの全推力を振り絞るとなおも絡みつこうとする〝触手〟から逃れることに成功していた。グラウザーの右肩と頭部を指向性放電はかすめた。だが直撃は避けられダメージは軽い。そして――
「いける!」
――グラウザーにとって僥倖は残されていた。
右腕がまだ捕らえられておらず、フリーだったのである。
【≫右腕パルサーブレード 】
【 >膨張展開、ブレード伸張、刀身部形成 】
【 帯電膨張合金通電開始 】
【 高周波振動スタート 】
右手拳の甲の部分からその白銀のサーベルブレードは出現した。刃渡り60センチ超のそれは闇夜の中で鮮烈な輝きを放っていた。グラウザーはそれを巧みに翻らせながら、なおも絡みつこうとする触手の群れを切断し始めたのだ。
――ザクッ! ズアッ! ザッ!――
小気味よい音を立てながらそのブレードは触手を切り裂いていく。身の自由を取り戻してグラウザーは高く跳躍して距離を稼いだ。
「チッ! はしっこいヤツめ!」
字田の苛立ちの声が響く。その声のする方をグラウザーが見た時だった。
「なっ?!」
グラウザーはそこに信じられないものを目の当たりにしたのだ。
「なっ? 何をしてるお前?」
驚愕がそのまま言葉となる。
「何ヲ驚く? オ前のアーマーギアの再構成プロセスと原理ハ同ジダ」
「マイクロマシンセルマトンか!」
「そノ通リ」
字田は蜘蛛型子機体を1体のみ残していた。それに破壊された自らの左腕を突き立てると、蜘蛛型子機体はその機体を崩壊させながら自らの一部を字田の失われた左腕へと再構成していったのだ。否、有り余る余剰パーツを繰り入れることで、当初の右腕よりもさらに頑強な右腕へと改修せしめたのである。後に残されたのは最低限の可動フレームの上に内部メカと攻撃武装を搭載したむき出しの蜘蛛型メカである。
それはまさに――
――怪腕――
――以外の何物でもなかった。底知れぬ得体のしれ無さが邪悪なるオーラを解き放ち始めていた。
字田は語る。
「俺のコノ蜘蛛型ボディの手足ト胴体の一部は、オ前のアーマーギアと同ジ様に、高機能ノ微細マイクロマシンの結合連結体デ構成されてイル。同様に子機体モ大半が微細マイクロマシンの集積体ダカラな。こうシテ転用は十分ニ可能なのサ」
その太さを増した右腕は、明らかにグラウザーの剛拳・オメガハンマーの打撃を意識したものであった。打撃や電磁波破砕を加えられえても、その衝撃を拡散吸収させかねない。そう思わせるほどの視覚的威力がそこにはあったのである。
そしてグラウザーは、周囲に展開されている10体の子蜘蛛ロボット体の意味を思い知ったのである。
「つまり――これは、お前のスペアパーツ!?」
焦りがにじみ出たグラウザーの言葉に、嘲笑う字田の声が響いた。
「やっと気づイタか。デク人形――」
そして10体中、残された9体は二重の包囲網をグラウザーの周囲に張り巡らせていた。押そうが引こうが、グラウザーがどの位置に居ても彼らは即座に襲いかかってくるだろう。
「お前ニ逃げ場は無イ!」
字田のその言葉に一体の子蜘蛛ロボットがグラウザーへと襲いかかった。そしてそれに対してとっさに左拳からオメガハンマーを打ち込む。だが――
――グシャッ!――
――その打撃は敵の急所へは届かなかったのだ。
拳を打ち込まれた蜘蛛型子機体は瞬時にその形状を変えると、まるでゴムまりのように衝撃を分散吸収させてしまったのである。殴られた反動で後方へと飛び去るが、それでもその機能性は失われる事はなかった。
無論、その光景は、グラウザーの心理に打撃を与えるには十分だったのだ。
「だ、打撃が効かない!」
その動揺が、ほんの僅かにグラウザーの動きを止めてしまう。そしてそれを逃すような温さは字田には無かったのである。
勝ち誇ったように6つの脚でしっかりと立つと、右腕の指向性放電兵器を稼働させる。先端の放電効果装置がほんの僅かなチャージ時間の後に紫電を迸らせた。
「馬鹿メ」
短く吐き捨てるのと当時に、字田が放った一条の雷撃は見事にグラウザーの胴体を一直線に撃ち抜いたのである。
凄まじい衝撃がグラウザーを後方へと弾き飛ばし、完全にグラウザーの行動の自由を奪った。
戦局は完全に字田の方へと傾く。あとは――
「俺に潰サレルだけだナ」
――それ以外には考えられない状態だったのである。
@ @ @
その戦闘の行く末を少し離れた場所で眺める影があった。
それを人はピエロともいう、ジェスターともいう、アルルカンと呼ばれることもある。赤い衣、黄色いブーツ、紫の手袋に、金色の角付き帽子、角の数は2つで角の先には柔らかい房状の球体がついていた。襟元には派手なオレンジ色のリボン――、派手な笑い顔の仮面をつけた道化者。人は彼をこう呼ぶ――
「クラウン様――」
――あるいは〝死の道化師〟と。
彼に語りかける声は妙齢の落ち着いた女性の声だった。だが声の主の姿は見えない。
その声を背後から聞いていたのはクラウン自身である。
クラウンは紫のマスクの上に、横棒3つのシンプルな目口のみで表情を浮かべている。無論、そしてそれが好意的な感情を現しているとは到底思えなかったのである。
「これはイケませんね」
右手を顎に添え、左手を右手の肘にかけている。そして思案げにしていたがなにやらつぶやき始めた。
「あの黒い盤古の継ぎ接ぎ隊長が、ここまで絡め手の機体システムをもっていたとは。ましてや微細マイクロマシンによる機体構築システムまで持っていたとは――、どこまで自分を〝あいつら〟への生贄にしたのか。単独のグラウザーが打撃白兵格闘で御しれる相手では無かったと言うことか――」
背後の声がクラウンへと問いかけた。
「いかがなさいますか? 支援いたしましょうか?」
つまり、暗にグラウザーへと加勢すべきだと言っているのだ。だがクラウンは顔を縦に振らない。
「いいえ。それだけは絶対になりません」
「なぜでしょうか?」
「シータ――、我々はなぜここに居るのかその最終目的を忘れたのですか?」
「最終目的――」
その言葉に従者たる声の主がハッとなるのがわかる。
「きたるべき〝メインステージ〟を作り上げるための――」
「そうです。そのための主賓をより輝かせておかねばならない。だが、それを我々自身でなにもかもお膳立てするわけには行きません。我らプレヤデス・クラスターズが〝メインステージ〟にてお相手すべき主賓には、彼ら自らの力で輝いてもらわねばならない。そう――」
クラウンは右手を顎から離すと両腕をしっかりと組んでこう言い放った。
「〝この程度〟の逆境、跳ね除けてもらわねば――」
クラウンの仮面は赤く染まり、そこに金色の黄色に輝くアーチ型の目口が満面の笑みを浮かべていたのだ。
「――〝私が倒す〟甲斐がない」
冷徹な視線が、グラウザーへと注がれ続ける中、クラウンは言った。
「ここで潰されればそれだけの存在だったということです。挽回できなければ、我々は即座にここから離脱します」
つまり見放すということだ。
「承知しました」
従者たるシータが告げる。
そして二人はなおも、その視線をグラウザーたちへと向けていたのである。
@ @ @
今、3機の大型ヘリが、千葉・神奈川・埼玉の3方面から集結していた。その濃い灰色の機体の巨大なヘリは、ローターを旋回させていたが爆音は響いていない。人為的な仕組みによって静音性を保ったままである。ステルス戦闘を有利に運ぶためには今や必須の機能。
3機のヘリはあと十数秒たらずで目標位置に到達するだろう。そして、目標地点到達時の行動準備を、彼らは開始していた。
そのそのヘリの側面にはあるシンボルマークが描かれていた。
――それは〝カラス〟だった――
だがただのカラスではない。
足は3本足で羽を広げて顔は頭上を仰いでいる。
――ヤタガラス――
神武天皇が熊野から大和に進入しようとして山中で道に迷ったとき、アマテラスにより使わされて天皇の軍を導き,山中を抜け出させたという逸話に基づくものだ。
その3本足のカラスは古来より〝国家鎮守守護〟の象徴として語り継がれたものであった。
そしてそれこそが、そのヘリの中に待機している者たちの素性を如実に現していた。
【日本警察・武装警官部隊『盤古』】
年々凶悪さを増す犯罪事情に能動的に対処するために組織された警察系特殊部隊組織である。
専用設計の肉体強化用プロテクタースーツを装備し、最新鋭の重火器やハイテク兵器で武装した、犯罪制圧の『盾』となる誇り高き人々だ。
だが、誰も声を発しない。なぜなら――
――第1級音声封鎖状態――
――だからである。
ヤタガラスの実効指揮を執る、武装警官部隊大隊長・檜枝枝聖人が音声封鎖のルート権限を掌握していた。
その檜枝岐がモニター越しに降下予定の地点を最終確認していた。
その視界の中に見えるのは――
――字田の蜘蛛型外装義体とその子機の群れに包囲されつつあるグラウザーの姿――
――だ。
それが危機的状況だというのは誰の目にも明らかだったのだ。
もはや一刻の猶予もならなかった。
檜枝岐は機内の全隊員に対して、最終確認として、行動指針を暗号化ファイルにて送信する。
――――――――――――――――――――――
行動指針
撃破対象:
武装警官部隊盤古・情報戦特化小隊第一小隊、小隊長[字田顎]
補足:
抹殺許可
現地戦況情報:
字田専有で運用されている、サイボーグ体強化のための[蜘蛛型外装義体]内部に搭乗中
さらに同時遠隔操作可能な子機機体を10体を運用中。
なお現地にて特攻装警第7号機グラウザーが戦闘行動継続中であるが、字田によって包囲され不当に攻撃されている。
行動指針:
①蜘蛛型外装義体の子機機体の撃破
字田が専有使用している蜘蛛型の子機機体は、微細マイクロマシンによる機体回復機能が与えられていることが確認されている。先行して上空からの同時多目標狙撃を行い、微細マイクロマシン機能を抑制する。
これには専用のナノマシン散布弾丸を使用する。発射タイミングは適時合図し同期をとる。
しかるのちに蜘蛛型の小型機体を字田本人、およびグラウザーから引き離す事を第1の要諦とする。
接近無音飛行中に狙撃開始準備を行い、現地上空到達直後に多目標同時狙撃を決行する。
②特攻装警第7号機の支援
我々は蜘蛛型の子機機体の破壊を最優先し、字田の撃破をグラウザーに委ねる。
なお子機機体の撃破がされしだいグラウザーの支援戦闘へと切り替える。
③逃走テロアンドロイド・ベルトコーネの捕獲、または撃破
なおこれと並行して逃走中のテロアンドロイド、ベルトコーネの捕獲、または撃破を行うものとする。そのさい現地情報を収集して適時、これに臨機に対応するものとする。
以上――
――――――――――――――――――――――
それが居合わせた盤古隊員全てのヘルメット内部の眼球投影システムにより、克明に伝えられていた。その長文を一気に把握するのもまた盤古隊員としての必要な技量の一つである。
そして、突入の時は来たる。
〔 From B.C.>A.A.O. 〕
B.C.は『Battalion Commander』で大隊長、A.A.O.が『Allow All of the Operation』で、全行動活動承認を意味していた。
そして、飛行中の3機の大型ヘリの両側面のスライドドアが開き、ヘリ一機につき3名から4名の隊員が姿を表し、眼下に銃を構えている。使用する銃は狙撃性能を重視したH&K社製のG110A――、精密狙撃可能な20連射のオートマチックライフルである。
その弾倉の第1弾には、あらかじめ準備されていた特殊弾が装填されている。
コッキングレバーを操作し初弾をチャンバーへと装填する。そして安全装置のセイフティを解除し、各自、眼下の蜘蛛型子機体へと照準を合わせる準備をする。あと数秒後に到達時に即時に目標をターゲットして狙撃せねばならないのだ。
彼らが使用するオートマチック狙撃ライフルG110Aには照準確認装置が装備されており、誰がどのターゲットを狙っているのかデータリンクして互いに把握することができる。2秒もしないうちに10体全てのターゲットが補足された。
大隊長の檜枝枝聖人は狙撃準備が完了したことをデータ視認した。同時に3機のヘリは寸分のタイミングの狂いなく字田とグラウザーの戦闘現場の上空へと到達したのだ。
そして檜枝枝は叫んだ。
〔撃て!〕
その言葉が盤古隊員のヘルメット内の無線システムに響くと寸分の狂いなく狙撃が行われる。
大型ヘリの安定したホバリング性能と合わせて、射撃姿勢はパーフェクト、10の銃口は完璧に、字田の操る蜘蛛型子機体へと、特殊弾丸を撃ち込んだのである。
――タタァアアアン――
複数の銃声がシンクロしながら鳴り響く。そして、漆黒の弾丸は不気味な蜘蛛もどきのメカの群れを射抜いたのである。
――バッ! バッ! ババッ!――
弾丸は二重構造をしている。外部外殻と内部弾芯だ。鋭いニードル状の内部弾芯が目標装甲を貫き、開けられた穴から外部外殻を構成していた圧縮粉体が目標物内部に侵入する。そしてそれは――
「クソぉっ!」
必死の抵抗として右拳に紫電をまとわせながらグラウザーは右のオメガハンマーを繰り出していた。
――ドガァッ!――
その右拳の打撃が当たる瞬間――その上空からの特殊弾がヒットし、即座に効果を発揮する。
それは驚くべき変化だった。本来なら微細マイクロマシンの結合体部分がクッションの役割を果たし、グラウザーからの打撃を全て吸収分散させてしまうのだ。だが今、目の前で起きているのはそれとは全く異なる反応である。
――パキィン!――
硬質のセラミックが割れるような音をたてて、その微細マイクロマシン群塊は砕けたのである。
「なに?」
グラウザーは疑問を抱いたがそれに神経を向ける時ではないとは心得ていた。残る8体の蜘蛛型子機体にも次々に打撃をヒットさせていく。もとより、グラウザーは蹴り技やフットワークに秀でたアンドロイドだ。両拳の打撃が有効ならば周囲を包囲されても、その囲みをまたたく間に破るだろう。
3体ほどを左右の連撃で弾き飛ばすとそこから包囲を脱出する。そして体制を整え直しながら周囲の状況をあらためて把握したのだ。
「あれは?」
グラウザーは見覚えがあった。かつて研修として東京以外の武装警官部隊の見学研修を行った際に、千葉大隊の成田エアポート待機基地にて部外秘である事を厳命されて特別に見せてもらった機体だ。最大で14人乗りの大型のステルス機能ヘリ――、盤古隊員10名以上を、極秘かつ速やかに作戦領域へと投入するための、隠密突入専用ステルス機体のジェットヘリだ。
現状では千葉・埼玉・神奈川の3大隊にのみ配備されている――、そう教えられていたのだ。
それがなぜ? ――驚きと戸惑いは隠せない。
だが――
「バ、馬鹿な? 近隣3県ノ盤古がナゼここニ?」
――驚愕していたのは字田も同じだったのである。
だがこれは幻ではない。
――カッ!!!!――
字田を強力なサーチライトが照らす。
3機のヘリの機体下部に備えられた大型投光機が闇夜に沈み込んでいた字田のシルエットをまざまざと浮かび上がらせたのだ。
それは蜘蛛だった。殺人蜘蛛だ。
全身に血サビ、血脂を染み込ませた、醜悪なる蜘蛛――
これまでも数え切れぬほどの人命を吸い続けてきた狂気の機体だった。
「貴様らァア! こコハ東京だゾ! お前ラノ管轄でハナい!」
――焦りを隠さぬ叫びが響く。だがそれを遮ったのはヘリの中の一機、埼玉大隊所属のヘリから発せられたスピーカー音声である。
その場一帯に響くほどの音量でその声は鳴り響いたのである。
「情報戦特化小隊第1小隊隊長・字田顎! お前には殺人罪、殺人教唆、ならびに情報略取、脅迫、重窃盗などの複数の罪で逮捕状が発行されている!」
それは処刑宣告だった。
字田が、非合法な闇の警察戦力として活動してきた事実を全て否定する物であり、彼を一介の犯罪者へと貶める物である。
だがその死刑宣告に等しい言葉に字田が返したのは反省と恭順では無かった。
「黙れェエエ!! そんな事アル訳がナイ! 俺こソガこの国ノ正義ダ!!」
――ダンッ!――
字田は蜘蛛型ボディを脚をひとつ踏み鳴らすと、憎々しげに吐き捨てた。
「貴様ら、何者ダァ!!」
字田は問うた。襲撃者の名を。国家と法の威厳を背景にして字田を犯罪者と断じた者たちの名を問うたのだ。
そして彼らは答える。
誠意からではなく、警告として――
なぜなら彼らの存在と名は極秘のものだったからである。
「我々は――」
3機の大型ステルスヘリの左右ハッチと後方ドアが開き、そこから盤古を知る者ならよく見慣れたシルエットが空中へと躍り出る。背面にはノーロープパラトルーパー用のエアジェットパック装備が装着されている。そしてそれは武装警官部隊・盤古の、標準仕様の装甲プロテクタースーツによく似ていた。
だが色は盤古通常色の〝白〟ではない。大きく異なり青みがかったガンメタリックであった。
ヘリ1機から10名、3機のヘリで総勢30名が一斉に降下してくる。暗闇の夜空からヘリからのサーチライト光を背後に浴びて舞い降りてくる姿は、まさに〝天界の軍勢〟――
下界の理不尽に対して、怒れるアマテラスがもたらした御使いの名を彼らは告げたのだ。
「我々は〝特殊秘匿部隊・ヤタガラス〟――日本警察の緊急事態に応じ現状制圧に駆けつけた!」
センチュリーが去り、フィールが倒れ、ディアリオは姿を見せず、アトラスとエリオットも行方が知れない。
何者にも頼れぬ状況下で必死に己を鼓舞して孤独に戦っていたグラウザーには、またとない最高の加勢であった。
そしてその言葉は、満身創痍で孤独に戦っていたグラウザーにも送られたのだ。
「グラウザー! お前を支援する! これより連携戦闘行動を行う!」
拒む理由はなかった。
そう――
【――特攻装警と武装警官部隊は、回る両輪――】
――互いが互いを支え合いながら、この大都市を日夜守ってきたのだ。
今、グラウザーはその体の底から震えるほどの勇気が湧いてくるのを感じた。そしてその思いを言葉にして告げたのである
「特攻装警7号! 救援に感謝します! 連携作戦行動を開始します!」
「了解!」
「はい!」
彼らの反撃が始まったのである。
次回は――
第2章エクスプレスサイドB第1話〔魔窟の洋上楼閣都市56]
【決戦・ヤタガラス】
公開予定は1月25日金曜日よる九時です