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メガロポリス未来警察戦機◆特攻装警グラウザー [GROUZER The Future Android Police SAGA]  作者: 美風慶伍
第2章サイドB『魔窟の洋上楼閣都市』第5部『死闘編』
114/147

サイドB第1話『魔窟の洋上楼閣都市』Part32『輝きの残渣』

特攻装警グラウザー

第2章エクスプレス

サイドB第1話魔窟の洋上楼閣都市32


スタートです

本作品『特攻装警グラウザー』の著作権は美風慶伍にあります。著作者本人以外による転載の全てを禁じます

這部作品“特攻装警グラウザー”的版權在『美風慶伍』。我們禁止除作者本人之外的所有重印

The copyright of this work "Tokkou Soukei Growser" is in Misaze Keigo. We prohibit all reprints other than the author himself / herself

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

■平和島ジャンクション上空にて:フィールとフローラの場合――


 フィールとフローラはともに手を携えながら東京アバディーン上空を西方ヘと離脱しつつあった。視界の先には大井ふ頭と羽田空港エリアが見える。フィールの上司である大石へは直接コールを試したが向こうも作戦中なのだろう返信は無い。業務上必要な報告メッセージは送った。何かあれば向こうからメッセージが返ってくるだろう。

 羽田エリアの航空管制データを得て行き交う航空機を躱しながら2人は第2科警研への帰路を戻りつつあった。そして、羽田近傍を過ぎ東京モノレール上を過ぎ、平和島ジャンクションを過ぎた辺りに差し掛かったときだ。

 2人に近寄る航空機の姿がある。民生用のティルトローターヘリ。第2科警研のオフィシャル機だ。当然そこにはあの人物が乗っていた。

 機体側面のドアが開いて聞き慣れた声がかけられる。


「フィール! フィールじゃないか?」

「新谷所長?」

「新谷さん!」


 第2科警研所長の新谷だ。ヘリの爆音に抗うように新谷は大声で問いかけてくる。それに答えたのはフィールだ。フローラは基礎育成中にも何度か遭っているが、第2科警研の施設外で遭ったのはこれが初めてであった。


「それにフローラまで――お前たちも今回の一件で借り出されたのか」

「はい、グラウザーたちが活動しているエリアの上空で監視任務に当たれと指示を受けまして」

「それでか、しかしなぁ――」


 新谷は呻くようにつぶやく。


「ヒドい有様じゃないか」


 そう漏らす顔には愛娘に等しい存在が受けた労苦を辛そうに案する新谷の顔があった。

 両足喪失、左腕損傷、左脇腹損壊、頭部左半壊――、飛行機能が無事だからこうして飛んでいられるが、それすらもギリギリと言ってよかった。


「そうとう手を焼いたらしいな」

「はい、戦闘用のステルスドローンの大群に襲われまして――」


 そう語りながらフィールは傍らのフローラに視線を送る。


「この子に駆けつけてもらってなかったら、助からなかったと思います」

「そうか。ご苦労だったなフローラ」


 新谷がフローラにねぎらいの声をかける。そこには〝一命〟を取り留めるという大役をこなしたことへの素直な称賛が込められていたのだ。だがそれに浮かれるようなフローラではない。


「いえ、私は無我夢中で少しだけお手伝いしただけです。敵を倒したのはお姉ちゃんだし」

「私だけでは無理だったよ。2人で力を合わせたからできたのよ。それで、所長」

「なんだ?」

「申し訳ありませんがこの状態なので離脱します」

「まぁ、しかたないな。気をつけて帰れよ。本当なら回収して送ってやりたいがまだグラウザーたちが作戦中だし、センチュリーも大破している。なんとしてもこれで回収しないといけない」

「そんな! セン兄ィが?!」

「あぁ、右腕全損、両眼焼損、かなりやばい状態だ。今すぐにでも牽引作業をやってやりたいが何しろアイツらがいるからなぁ。近寄れんのだ」


 アイツら――、その意味をフィールは知っていた。


「黒い盤古ですね?」


 フィールの問いに新谷は頷く。


「攻撃される恐れがあるので退避しているんだ。スキを見て突入するつもりだ。そういうわけだ、すまんがフローラ、送っていってやってくれ」

「はい、わかりました」


 フローラは災害現場の救助活動を主眼に置いた機体だ。今のフィールくらいなら抱いて飛ぶくらい容易いことだ。

 そしてフィールが新谷に告げる。


「新谷さん、後のことはよろしくお願いいたします」

「あぁ、任せろ! 幸い、ここにはグラウザーの居る涙路署の刑事さんたちも同行してくれてる。近衛さんたちもなにやらやっているようだ。最悪の自体には絶対にさせんよ。それより体をしっかり治すんだぞ」

「はい、皆さんのご武運が有りますように」


 フィールは唯一残された右手で敬礼をする。フローラもそれにならう。

 それは当然、機内にて待機している第2科警研の派遣メンバーや涙路署の捜査員たち、そしてパイロットの室山も、戦いを終えたフィールとフローラに対して労をねぎらう視線を送っていた。


「それでは皆様失礼いたします」


 敬礼を終えてフィールとフローラはその身を翻すと空域から去っていく。一路西へ、第2科警研庁舎へ――

 新谷は2人が飛び去る姿をいつまでも見つめていた。



■何処かの高級ホテルにて。未知の2人の場合――


「ゾラ、早速ひと勝負決まったよ!」


 大型のスマートパッドに映る街頭からの監視映像を眺めながらアナははしゃぐように傍らのゾラを呼んだ。


「日本のアンドロイドポリスのフェアリープリンセスと、正体不明のアバターのファイブ君の一戦だ!」


 ゾラは体に巻いていたバスタオルを外すと、蒼い色のバスローブへと着替えていた。その手には高級シャンパンのグラスを新たに手にしている。


「あぁ、日本のマスコット気取りのティンカーベルね? それとサイレント・デルタのファイブか。まぁ、彼のことだろうから自分は最前線に出ずに遠隔ドローンで取り囲んで袋叩きってところでしょうね」

「あたりー! 完全包囲まで成功させてるよ」

「あら」


 ゾラはアナが寝そべっているロングソファーの背もたれに腰掛けた。


「それじゃティンカーベルが羽を毟られておしまい?」

「いやいや!」


 アナがもったいぶって人差し指を振りながら新たな映像を見せた。


「ほらこれ! ジャパニーズポリスの正義のヒロイン第2号登場!」


 そこにはフローラの姿が映し出されていた。


「すごいよこの子! ほらこれ」


 そこには火炎放射ドローンからナパーム弾をあびせられる光景が写っていた。


「最低でも800度から900度はあるのに、全くの無傷! それに100機以上のドローンの群れの中に突っ込んで、僚機を的確に救出するスキル! この子の援護でフィール嬢は無事救出! そっからがまたすごいんだわ! 見て見て!」


 アナはフィールとフローラが共同で反撃を開始した辺りからの動画を連続で流していた。

 2機同時の超高速起動

 フローラのナパーム火炎突破

 フィールのインフェルノ

 そしてフローラの逆侵入ハッキング


 それらの映像を見終えて、はしゃがない冷ややかな声でのアナが問う。


「どう? ゾラ」


 アナの問いに、ゾラも冷静に答えた。


「表の技術でここまでできるなんてすごいわね。作ったの誰?」

「こいつ」


 そしてアナのスマートパッドには第2科警研の女帝と揶揄されているあの女性が映し出されていた。


「布平しのぶ?」


 ゾラもその名には記憶がないらしい。


「日本人て大学関係とかではろくなの居ないんだよ。かえって在野の技術者のほうがすごかったりすんだわ」

「所属組織は?」

「第2科学警察研究所。ま、警察組織付属の公的機関だね」

「ふぅん」


 ゾラはなにやら思案しているようだった。


「要注意ね。あとでファイザにも相談しましょう」

「オーケィ――っと、あーあ、ファイブ君爆破されちゃったよ。ゴールデンセントラル200の中でちゅどーん!」

「なんでわかるの?」

「音と振動、ビル内とは言え爆破の振動は外にも多少はもれるからねぇ」

「なるほど、でもあの組織のことだからすぐにスペアは出すでしょ」

「だね、アバターはいくらでも替えがあるし。あ、こっちでもやってる! おーおー、カエルくん頑張っちゃってまぁ」


 次に映し出されていたのはクラウン配下のイプシロンだった。


「さて、こいつのお相手はだれかな〜?」


 アナはまるでスポーツの試合でも観戦するかのように楽しげに監視映像を検索していた。それは明らかに支配する側の人間だけが持ちうる欲望の発露であった。そんな彼女にゾラが問いかけた。


「アナ、楽しそうね」

「あたりまえじゃない! ナマの殺し合いだよ? 最高のショーじゃない! 徹底的に楽しまなきゃ!」


 まるで神の視座でも持っているかのようあ傲慢さを隠しもせずに2人はさらなる戦闘の光景を傍観したのである。



■何処かの部屋にて、ファイブの場合――


「畜生! 畜生! 畜生っ!!」


 何処かの空間、何処かの場所、何処かの部屋――

 何処とも明示されない場所に彼は居た。

 そこは電脳空間――、VRテクノロジーを駆使して造り上げられた仮想実存空間、通称『サイベリア』――そこに彼は居た。

 呆然と立ち尽くしていたかと思うと、両膝をつき頭をかきむしっている。そのシルエットは総銀無垢であり三揃えのスーツ姿だ。


「畜生っ!! なんで! なんであんなやつに! あんな生まれたばかりの新参者になんであんな事がぁ!! 畜生っ! 僕の! 僕の! アバターをよくもぉ!! うがぁあああ!!」


 そして床に顔を伏せると地面をかきむしるように爪を立てる。その慟哭と怒りは獣の咆哮のごときだ。

 そんな醜態を晒す彼の周囲に光が灯る。その数、総数8体、光の中に立つのは様々なシルエットのアバターたち。その一つが声を発する野太い男性の声だ。


「無様だなぁ? おい、負け犬ってやつぁ! あ? ファイブよ」


 その声の主は厚手のバイカージャケットに黒ワイシャツを着込み、赤いネックマフラーをネクタイ風に巻いていた。頭部はガトリングの銃口でありアイカメラはガトリングの中心軸とガトリングを囲む四隅に設けられていた。


「何しに来た! エイト! 僕を笑いに来たのか!?」

「あぁ、そのとおりだ。負け犬様ってやつを――」


 エイトはつかつかと近寄ると、ふいに右足を後ろへ引くと返す動きでファイブの頭を蹴り込んだ。


「制裁にな!!」

「がふっ!!?」


 エイトの痛烈な蹴りにファイブの体は二転三転する。転げるファイブに別なアバターが嘲りをあびせた。


「ほーんと、あんたってすぐに図に乗るからさぁ、こういうことをしでかすんじゃないかって予想してたのよ。そしたら案の定」


 ハイヒールの甲高いヒールの音が鳴り響く。金色のメタリックのピンヒール。細く絞ったヒールを持ち上げるとそれをファイブの左手の関節へと勢い良くおろした。


――ズガッ――


「がぁああ!」

「ちっとは頭使えよ。このウスノロ!」


 ファイブにピンヒールを打ち込んだのは美しいモデル体型のリアルなヒューマノイドボディだ。だが体の表面にまるでタトゥーの様に接合線が走っていることからかろうじて人造ボディであることが読み取れている。肌の色は日本人、目は黒、髪は艷やかな黒髪でボリュームのあるミドルボブだ。

 膝までの丈のマーメイドドレスは紫と青のグラデーション。シースルー気味でベースボディが浮かんでいる。


「あんたはデバイス管理に一番長けてるしハッキングスキルもそれなりだから安心してセブンカウンシルの管理を任せてたけどさぁ! この始末どうしてくれんのよ!! これでのこのこカウンシルのメンバーの所に出てってもう一回信じてくれって言えんの? 追い返されるのがオチでしょ! 今までの苦労、全部パーよ! どうしてくれんのよ! このクズ!」


 罵詈雑言をあびせまくると、ヒールを引き抜いてファイブの顔を蹴り上げる。その彼女にかけられる声がする。落ち着いた老年の声だ。


「おちつけシックス。騒いでも始まらん」

「ワン?」


 ワン――、その名の主は大理石製のヘッドが取り付けられたステッキを手にしていた。そのステッキを床につきながら悠然と歩いてくる。着ているのは古めかしさの漂うクリーム色のブリティッシュトライディショナルスーツ。腰には懐中時計の金鎖を下げ、襟元は純白のスカーフ。頭部は20以上は有ろうかという小型のカメラアイと10以上のワイヤレスターミナルが集合している。それが一定速度で回転している。


「こいつはすでに制裁を受けた。アバターの破壊。それが何を意味するか判るだろう? シックス、エイト」

「まぁ、そりゃあねぇ」


 そう不満げに答えるのはシックス。


「あんたに言われちゃしゃあねえな」


 あっさりと引き下がるのはエイトだ。


「我々にとって固定アバターは存在そのものだ。不揃いナンバーのアンマッチから始まって、二つ揃えのダブル、そして3つゾロ目のトリプルと位階を上げるのに相当な苦労を越えて皆ここに到達している。アバターはそれぞれの人生そのものだ。それを規定通り破壊されたのだ。これ以上は勘弁してやれ。それより――」


――カッ!――


 鋭い音をたててステッキを床へと突き立てる。そして眼下にファイブを見下ろしながらワンはファイブへと告げた。


「サイレント・デルタ、メインアドミニストレータ・トリプルファイブ――通称、シルバーフェイスのファイブ。お前に宣告する」


 宣告――、その言葉にファイブは顔を振り上げる。


「お前のIDナンバーである〝555〟を凍結し、メイン・アドミニストレータとしての地位を剥奪する」

「な――」


 冷酷なまでの宣告がくだされる。もはやファイブには問い返す気力すら無い。それに対してかけられたのは若い男性のスレた口調の声だった。世の中を斜めに見ることのしかできないひねくれたティーンエイジャーを彷彿とさせる口調だった。


「当然だろう? テメぇ組織にどれだけの大ダメージを与えたのか考えろっつーの!」


 声の主を探して振り向けば、直径2センチほどの六角形の円筒から変形したハチ形の飛行デバイスだった。


「フォー?」

「気安く名前を呼ぶなっつーの。落ちぶれのナンバーレス風情がよぉ!」


 六角形のハチはファイブの周囲を飛び回ると、ファイブから離れていく。ハチが飛びゆく先にはラフな仕立てのグリーンのフード付きのロングパーカージャケット姿の青年男性のアバターがあった。フードから垣間見える顔面は蜂の巣のハニカム形状そのもので、その蜂の巣の一つ一つにハチ型の飛行デバイスが無数に収納されているのだ。

 ハチ型のマイクロデバイスが蜂の巣穴から見え隠れしている。非人間的な不気味さが何よりも印象的だ。


「俺たちサイレント・デルタのルールじゃ、ナンバーIDの指定権限はワンにあるんだ。それはてめぇも解ってんだろ? そのワンが剥奪を宣言したんだよ! たった今! この瞬間から! てめえは名無しのナンバーレス! 組織の最下層の落ちぶれ野郎だ! どん底のクズが生意気にメインアドミニストレータを名乗ろうと言うのがそもそもの間違いだよ! おとなしく便所掃除かIT土方でもやってろよ! ばーーか! そっちのほうがよーっぽどお似合いだぜ! ひゃっひゃっひゃ!」

「そ、そんな――」


 ファイブは慌てて立ち上がる。そして周囲に懇願するように声を発した。


「頼む! もう一度! もう一度チャンスをくれ! セブン・カウンシルを構築してアイツらをまとめ上げたのはこの僕だ!」

「ソレは無理だよ。なあLトゥー?」

「そうだよね! Rトゥーにいちゃん」


 ファイブの懇願を無碍に否定したのは双子のアバターだ。身長140くらいでRが兄でジーンズにスカジャン、頭部は特撮ヒーローのようなメカニカルマスク。隣のLは女児向けのふわふわのエプロンドレス、頭部は可愛らしい着せ替え人形の頭だ。

 さらにそれに続いて発せられる声は少し歳かさのある青年男性の理知的な声だ。


「これは決定事項です。そしてワンの裁決が覆ったことは今までただの一度もありません。諦めてください」

「ナ、ナイン――」


 ファイブが視線を向ければそこに佇んでいたのは純白のホワイトセラミック製のスリット眼のマスクの男だ。長身で医師が着るような純白の上下に白衣をはおっていた。


「それでもチャンスをと言うのなら、また最下層からやり直すんですね。それくらいの機会は与えられるでしょうから」


 どうあっても覆らない現実に元ファイブは崩れ落ちるようにつっぷしるしかない。

 そんなファイブをスルーするかのようにエイトが苛立ちを発した。


「しかしよぉ、これからどうする? セブン・カウンシルはおれたちにとっちゃぁ一番のマーケットだぜ? これを失っちゃあ」

「それについては――」


 エイトに問いかけたのは地理的で理路整然とした大人としての落ち着きを備えた若い声だ。


「僕に一任していただけませんか? 皆さん」


 ワンが振り向くこと無くカメラだけを向けて声の主の名を呼ぶ。


「セブンか」


 そこに佇んでいたのは濃紺のスリーピーススーツにビジネストランクを下げた男性だった。頭部は直方体で、四面を埋め尽くすように8セグメントのデジタル表示が無数に敷き詰められている。


「お久しぶりです。みなさん。スリーさんも来ていますよ」


 セブンの傍らには女性物のスカートスーツに見を包んだ純白のヒューマノイドボディの女性体が佇んでいた。顔面も瞳も純白だったが、その身のこなしはナチュラルで不気味さより可愛らしさのほうが勝っていた。

 ワンはセブンに問うた。


「策はあるのか?」

「はい、簡単とは言えませんが多少の出費はやむを得ないでしょう。ここはひたすら金品や彼らが欲しているものを徹底して提供しましょう。すでにスリーさんと一緒に手を打ってあります」


 セブンの言葉にスリーは小さく頷いた。無口で声は発しない主義らしい。


「さすがだな。マーケティングジャンルはお前の独壇場だからな。いいだろう。お前に任せよう。次のメインアドミニストレータはお前だ。セブン」

「恐縮です。ミスターワン」

「皆もいいな?」

 

 ワンが問えば。


「あぁ」


 と、エイト。


「しゃあないわね」


 と、シックス。


「当然だろう? ここであのどん底野郎を超えるリカバリーができるのはセブンしか居ねえからよ」


 と、フォー。


「そうだね。Rお兄ちゃん」

「あぁ、そうだね。L」


 と、トゥー。


「わたしも意義なしです」


 と、ナイン。


 最後にスリーが小さく頷いていた。

 全員の同意が取られたのでワンは告げた。


「全員の意志は決定した。そう言うことだ。なぁ元ファイブよ」


 そう告げるワンの声はどこか冷ややかだった。


「ま、まさかワン――貴様――」


 絶望の中でファイブは悟った。この男が何を考えていたかを。そしてファイブはそれぞれのメンバーに視線を走らせる。


 マルチアイのワン

 チャイルドドリームのトゥー

 ホワイトドールのスリー

 ビークラスターのフォー

 マネキンのシックス

 デジタルのセブン

 ガトリングのエイト

 ホワイトセラミックのナイン


 これがサイレント・デルタの最上級幹部トリプルナンバーである。

 ワンは〝元〟ファイブに告げた。


「当面の間、トリプルファイブの名は空位としておく。お前が這い上がる気なら後任が決まるまでに間にあうかもしれん。多分な――」


 そしてワンは一瞥もくれずにその場から姿を消した。

 一人一人、三々五々に姿を消していく。最後に残ったのはナインだった。


「ファイブさん」

「ナイン」


 ナイン――彼だけはファイブの名で呼んでいた。


「あなた忘れてますよ。ここが〝マフィア〟だと言うことを」


――マフィア――

 

 その言葉はファイブの耳に深く突き刺さっていた。


「スキを見せれば足を掬われる。裏で何が行われているか予想すらつかない場所です。そうなるべく組織を拡大したのは私たち自身。そうでしょう?」

 

 過去を夢想する様に視線を巡らせながらナインは続けた。


「このサイレント・デルタのアバターシステムを造り上げたのはたしかにあなただ。創設当時からのバディだった私がよく知っている。だが、それだけにあなたの発言権はでかくなりすぎていた。いつこうなってもおかしくなかったんですよ」

「――――」


 元ファイブだった男は無言のまま拳を握りしめていた。そしてナインは語りかける。


「這い上がってきてください。手段を選ばずに――」


 ナインの言葉にファイブはハッとなって視線を向けた。その視線にナインは頷き返す。そして最後に一言だけ告げたのだ。


「また、どこかでお会いしましょう」


 そして身を翻してナインは姿を消した。無言のまま元ファイブも姿を消す――


 *     *     *


 そしてさらにどこかともわからぬ場所。そこは研究所の如きハイテクの城であった。電動走行する車椅子の上に一人の若者が体を預けている。体の自由があるようには見えず、指一本すら動いている素振りもない。だが、音声だけはモニター画面越しに電子音声で流れていた。


「そういうことかワンのたぬき親父、僕のアバターシステムに〝バックドア〟を仕込んでやがったな。それをあの時に開きやがったんだ! 僕を――僕のドローンとアバターを潰すために!」


 そのバックドアを見つけて侵入してきたのはあのフローラとか言うアンドロイドの技術あって物なのは確かだ。だがそれを誘発させたのはどう考えてもワン以外には有りえない。なにしろ、サイレントデルタのメンバーID管理という最強の権限を持っているのはワンなのだから。


「いいさ。もうファイブの名に未練はないさ。なぁナイン、またやろうぜ。お前は中から僕は外から! この電子の世界から、この世のすべてを奪い返してやろうぜ! 今日から俺は――」


 そしてコンソール画面に文字が踊る。


【 ネットワーク・アバターデバイス     】

【        メンテナンス管理システム 】

【                     】

【 アバター新規起動            】

【 管理ID:000            】

【 アバターネーム:トリプルゼロ      】

【 サブネーム:サイレントクリスタルのゼロ 】

【 オリジナル人体とアバター体の接続    】

【   〔  ――接続開始――  〕    】


 ハイテクの城のごとき部屋の中、その中央に佇んでいるのは男性型のボディのアバターだった。だが、それはそれまでのファイブのアバターとは異なっていた。全身がクリスタルガラスのように透明であり、角度によっては内部メカがおぼろげに浮かび上がっている。全く新しいボディであった。

 それが接続コマンドと同時にボディに命が灯る。その四肢に力がみなぎり悠然と歩き始める。そしてそのアバターに宿った魂はこう告げたのだ。


「今日から僕はトリプルゼロ、サイレントクリスタルのゼロだ!」


 そして、予め用意していた黒い三揃えスーツを着こなすとその身を翻していく。


「待っていろワン! 特攻装警! お前たちの1を0にしてやる! サイレントデルタとこのハイテク世界は僕のものだ!!」


 叫びを残してかつてファイブだったゼロはあるき出す。

 そして今、ここに一人の復讐機が誕生したのである。


 

■ゴールデンセントラル200の円卓の間にて


 セブン・カウンシル定期会合場――円卓の間――

 そこは今、混乱の極みにあった。

 爆散した機体の残骸がそこかしこに散らばっている。そればかりか、金属パーツの砕片が弾丸の様に飛散し天井やら壁面やら、四方八方に食い込んで、その凄まじさを物語る。


 ゴールデンセントラル200を管理する白翁グループの警備員たちが円卓の間に飛び込んでくる。グループ総帥の王麗沙の指示で呼びだされたのである。

 速やかに遅滞なく到着した信頼の置ける警備員たちは、麗沙の指示により手早く正確に状況を処理していく。麗沙の凛とした落ち着いた美声が響いていた。


「一切の残骸を残さず処理しなさい。爆発により生じた破損や消失は速やかに補充すること。タイミリミットは明朝5時。急ぎなさい!」


 麗沙の激がさらに飛ぶ。


「それと本社機能をここから予備の拠点へと移します。全ての情報資産及び機材・資料の全てを残さず持ち出しなさい。内部職員は最優先で召集! 明朝6時までにはここを退去します」


 すると、麗沙の所に社内内域専用のスマートフォンをお付きの女官が差し出してくる。最上階の執務室からだ。


〔王総帥、失礼いたします。お聞きしたいことが〕

〔速やかに話しなさい〕

〔ビル管内の情報基幹ネットワークはいかがいたしましょうか?〕

〔その件はすでに手を打ってあります。あなた達は現オフィスの退去準備を進めなさい。一切の痕跡を残さぬように。その後規定マニュアルに従いあなた達は専用チャーター便で帰国なさい。いいですね?〕

〔承知しました。総帥。すぐに取り掛かります〕

〔よろしい。これまでの勤めご苦労でした。またいずれ働いてもらうことになります。それまでゆっくり体を休めなさい〕


 麗沙は自らの執務室の秘書官たちに指示を出し、しばしの別れを告げる。そしてスマートフォンを切るとそれをお付きの女官へと返しつつ告げる。


「あなたたちも準備なさい。持ち場に関して規定の退去処理を行い、同じくチャーター便で帰国です。一切の遅滞はゆるされません。いいですね」

「はい、麗沙様――」


 主人たる麗沙の言葉を耳にしつつ、うやうやしく頭を垂れていたが、その肩が震えているのが判る。その女官に麗沙はそっと声をかけた。


「これが今生の別れではありません。時期が来ればいずれまた呼び寄せます。それまでの休暇のようなものです。いいですね?」

「はい、麗沙様――」


 顔を振り仰いだ女官の顔には涙が光っていた。別れはあまりに唐突だった。そして部屋の中の他の女官たちにも告げる。


「皆も、永の務め、ご苦労でした。また会うこともあるでしょう。さぁ、早くお行きなさい」


 麗沙の声に頭を垂れつつも女官は袖のたもとで、みな目元を拭っていた。慚愧の思いに耐えながらも、皆、粛々と務めをこなすのみだ。だがその涙こそが麗沙と女官たちとの絆の深さを物語っていたのだ。

 一通りの指示を出し終えて、麗沙は軽くため息をつく。そしてその視線は己の師にして祖父である王之神へと注がれる。王老師も厳しく指示を発しているところだった。

 之神のそばに黒衣のマオカラーシャツ姿の若者たちが数名召集されている。彼らに王老師は告げた。


「〝銀龍部隊〟を呼べ。そして一切のネット上の痕跡を消去させろ。お前たちは下層階の側から、上層階へのアクセス履歴がないかチェックだ。あらゆる一切の痕跡を残すな。行け!」

「ハッ!」


 両踵と両袖を規定どおり揃えて姿勢を正して声を発する。命令受諾の儀礼動作だ。そして足音も建てずに速やかに行動を開始する。彼らは白翁グループの者ではない。王直属にして、翁龍オールドドラゴンのメンバーなのだ。

 整然とそして粛々と退去作業は進んでいく。憮然とした表情でその作業の手際を眺めていた王老師は吐き捨てた。


「とんでもない大損害だ。いくらになるか検討もつかん」


 その老師の側へと麗沙が歩み寄る。


「老師、全ての手はずの指示出し終えました」

「よし、我々も一時、ここから移動する。状況を見ながら活動拠点を新たに構築する」

「承知しました。警察諸組織からの捜査に対しては?」

「すでにそちらも手を打った。〝銀龍〟が偽装証拠をでっち上げるだろう。建物内の爆発事故としてな。偽装が完了したなら証拠資料を送達する。暗記して漏れがないようにしなさい」

「承知しました。そのようにいたします。しかし――」


 その時、麗沙の視線はある男の所へと向いている。

 ファミリア・デラ・サングレのペガソだ。

 そのシャツの背中には飛び散った破片がいくつも食い込んで血だらけになっている。その様を心痛な思いで眺める。


「これからどうすれば――」


 思わず弱音を吐いた麗沙を王老師は横目で睨みつける。


胆小鬼ダンシャオグイ


 小声で吐き捨てた言葉は臆病者を意味する侮辱の言葉だった。その言葉を叩きつけられて麗沙の顔はハッとした。


「何も変わらん。何も変化せん。損失には対価を要求する。そのうえで彼らとの連携は継続する。今回の失態はサイレント・デルタのとしてのものではなくあくまでもファイブ個人のものだ。それに対してサイレント・デルタがいかなる代価を支払ってくるかで対応を決める。これで無視を決め込むなら総攻撃をかける。ネットの向こうの木人たちだろうが関係ない。翁龍の爪の力、思い知らせるのみだ」


 王老師は苛立ちこそは見せていたが、一抹の不安も諦念も無かった。ただ粛々と自らの組織の体制と行動と権威を堅持しつづけるのみだ。その全くブレない佇まいに麗沙は己の未熟さを噛み締めずには居られなかった。


「申し訳ございません。思い違いをしておりました。それではこちらでは他の七審の幹部の方々とも協議を内々に行います。早急に連絡網を構築いたします」

「うむ、それでよろしい」


 その上で2人は歩みをすすめる。向かう先はペガソの所だ。

 視線の先ではペガソは、ナイラと自らが弄んでいた若い女官をかばって抱きしめていた。とっさで無我夢中だったのだろうか、2人を抱きしめる力はあまりに強く、そこから抜け出るのに苦労しているようであった。

 ナイラがペガソに訴える。


「エル・ペガソ、もう大丈夫です。お離しください」

「あ? あぁ、ちょっと――ちょっとだけまて――ふっ!」


 ペガソが大きく息を吸い背中に力を入れる。隆々とした背筋が膨れ上がり、無数に食い込んだ多数の破片を押し上げていく。


――カラン、チッ、チチン、カラッ――


 大小様々な形の金属片が抜け落ちる。筋肉の力を使った自力での金属片排出である。そのうえで腕の力を緩めるとペガソは2人を開放する。そして大きく息を吐きながらペガソは立ち上がっった。


「エル・ペガソ!」

「ペガソ様!」


 ペガソの腕から開放された2人は立ち上がるが否や、ペガソの側へと駆け寄った。ナイラが左肩に、女官が背中側である。そして女官はペガソの背中に突き刺さったままの物を見るのである。


哎哟アイヤァ!」


 驚きがそのまま嘆きになる。そこに見えたのは長さ30センチほどになるだろうか細長い鋭利なプレート状の金属片だった。それが自力の筋力で排出できなかったのは、ひとえに刺さっている深度があまりに深かったにほかならない。

 女官の姿と言えば、ペガソの膝の上で弄ばれていたとき、そのままだった。前がはだけているのにもかかわらず、あられもない姿のままその金属片に飛びつくと両手で握りしめて引き抜こうとする。細い女の非力な力を振り絞りながら女官はゆっくりとそのナイフの如き金属片を引き抜いたのである。


――ズルッ――


 血と肉がぬめるような耳障りな音が響く。


――カラァン!――


 女官は金属片を放り投げながら、ペガソの背中の傷に手を当てた。


「ペガソ様!」


 悲痛な表情を浮かべながら女官はペガソの背中の傷を気遣っている。そしてその男の傷を案じる思いが思わず口を突いて溢れてきた。


「大丈夫ですか? お体が!」

 

 震える手でその背中に無数に開いた大傷に自らの衣装を布を押し当てて流れる血を抑えようとしていた。その手のぬくもりを背中に感じていたペガソは荒い息を漏らしつつも、こう言葉をかけたのである。


「これくれぇなんともねえよ。俺の体は作りもんだからな。サイボーグってやつよ。出血もすぐ止まる。死にゃしねえよ」


 そして女官の方へと振り向くと、その強い右手で彼女の頭を撫でてやる。その表情には苦痛はなく、女官の彼女の不安を拭い去るように微笑むを浮かべるペガソの姿があった。


「悪かったな。怖がらせて。でももう心配ねぇ。安心しな」


 そして、その彼女の乱れたままだった衣装の襟元に手をかけると、前の合わせ目を直してやる。


「これでいいか。そら――」


 ペガソは笑みを浮かべたまま、その小さな体の女官の背中を押してやる。向かわせる先は麗沙のもとだ。


「お前さんの上司の所へと帰りな。もう終わりだ」


 ペガソは言い放つと彼女の顔を一瞥することもなく自らが入ってきた扉の方へと歩いていく。その傍らにナイラがすぐに寄り添い肩を貸している。


「エル・ペガソ」

「すまねぇ」

 

 ナイラが右に立ち、ペガソに体を持ち上げる。だが、戦闘を意識した頑強な体は想像以上に重い。それに加えてペガソの体に力が入らないようだ。


「クッ!」


 ナイラの口から苦悶が漏れる。それを耳にしてペガソはそっとつぶやく。


「腰部脊髄の一部が傷ついてる。腰から下が少し麻痺してる。だが――」


 ペガソは王老師たちを意識していた。


「やつらに弱みは見せたくねぇ。このまま引きずってでもあの扉から出てくれ」


 ペガソの視線の先には自らが入ってきたサングレ専用のゲート扉がそびえていた。主人であるペガソの思いの〝真実〟をナイラは解っていた。どんなに辱められても心から忠誠を誓った主人である。そこに嘘も偽りもない。その彼が抱いている想いの底をナイラは知り尽くしていたのだ。


「心得ております。貴方様が来たるべき復讐を果たすその時のために、積み上げてきた苦難と誇り、サングレに身を置く者なら誰もが心得ております。それだけは誰にも汚させません」


 そう語るナイラの口調は力強く真っ直ぐだった。だが――


「あぁ、そっか。お前は速度重視タイプだったな。ちぃっと俺は重すぎるか。まいったな」


 自嘲気味につぶやいたその時だった。


「くっ――」


 ペガソの体の左側で肩を貸す者が居た。あの小柄な体の女官である。


「おい??」


 戸惑い声をかけるが彼女は本気だった。


「お手伝いいたします」

「やめろ」

「嫌です」

「邪魔だってんだよ。お前はうちの身内じゃねえ」

「いいえ、やめません。あの扉までの道のりだけでも恩返しさせてください」

「俺に恥かかせる気か! 身内じゃねえ奴に担がれるような安いメンツせおってるんじゃねえんだよ! さっさとどきやがれ!」


 執拗に食い下がる女官をペガソは左手で振りほどいた。彼女の小さな体は床の上へと投げ出される。だがそれでも彼女は引き下がらなかった。ペガソのもとへと這いよるとこう求めたのだ。


「それならば貴方様のお身内になります!」

 

 ペガソの顔を見上げる視線は本気だった。一抹も迷いもない。本気だからこそ、迷いがないからこそ、ペガソは突き放さずには居られない。怒号と罵声をもってその女官を再び突き放したのだ。


「ふざけんな! ガキの遊びじゃねえんだぞ! ド素人のてめえがやってける世界じゃねえんだぞ! それになぁ――」


 ペガソは半身をひねって、その女官を見つめると、憂いと苦しみを隠さずに心の中の苦悩を源とする言葉を発したのだ。


「俺は――、俺はよぉ――、自分で! 自分の身を守れねぇような生身の女は二度とゴメンなんだよ!」


 そう叫んで思わずナイラを突き放す。力のこもらない両足で立ちながら両腕を振り精一杯に思いのたけを溢れさせた。


「あの死の道化師の野郎が引き起こした〝血の惨劇〟の日! 少しでも多くのヤツを助けたかった! 助けようとした! でも守りきれねえんだよ! ズブの生身の体じゃ! サイボーグにも、アンドロイドにも太刀打ちできねぇ! キチガイみたいな機械の群れが! ニワトリでもむしるかのように殺しまくる! 助けようとしてこの手で掴んだ俺の恋人は右腕だけ残してミンチになっちまった! 手間のかかる舎弟も! ダチも! 腹空かせて俺のことを毎日おっかけてくる街のガキ共も! 骨すらのこらねえ! アレじゃ墓すらたててやれねえ!! みんな! みんなこの手から離れていっちまった! 俺はあの時! 守りきれなかった!」


 封じておきたい過去が、明かしたくない〝傷〟がとめどなく溢れてくる。そしてそれは血の涙となってほほをつたっていた。


「俺には王の爺さんみたいな伝統的な格闘スキルがあるわけじゃねえ! ウラジスノフみたいな軍隊経験もねえ! 伍のやつみてえに金にあかせて護衛を集められるわけじゃねえ! 天龍の旦那みたいな強力な組織があるわけじゃねえ! スラムの裏町で喧嘩して生きているのがせいぜいの俺達が、あんなキチガイじみた連中に立ち向かって生き残るにゃどんなに痛かろうが苦しかろうが! この体を切り刻んでサイボーグになるしか方法がねえんだ! 俺の身内になるって事はそういうことなんだぞ! 解ってんのか!」


 ペガソはもう何も隠さなかった。なぜ女官の彼女を突き放したのか、そのわけを声にして叫んだ。


「そのキレイな体! 汚すんじゃねえ!」


 それがペガソの世界だった。

 持たざる者が、持てる者に立ち向かうにはそれしかなかったのだ。そしてペガソが失ったものを彼女がもっているからこそ――


『取り上げたくなかった』のだ。


 だがそれでも彼女は――


「ならば――貴方様の決めた掟に従います。貴方様にこの身をお預けします!」

「な――、冗談言ってんじゃねえぞ」

「嘘偽りではありません。本気です」

 

 偽らざる気持ちを口にして彼女は立ち上がると、ペガソの前で両膝をついていた。そして両袖をつなぐようにして通して精一杯の礼儀を示す。

 なぜ? どうしてそんなにまで本気を貫くのだろう? 戸惑いと驚きを隠せぬペガソに声をかけたのは王麗沙であった。


「その子は半々(パンパン)です」

「あ?」


 半々――、聞き慣れぬ言葉がペガソの耳に強く残っていた。


「メキシコ人と華僑の混血と、大陸系中国人との混血――、加えて父親は殺人犯で投獄の身。この社会のどこにも身の置き場はありません。優秀で真面目なので特に私が手元に置いておいたのです」


 その言葉を耳にしてナイラが反応した。


「じゃあ、メキシカンのクォーター?」

 

 ナイラがつぶやいた言葉にその小さな体の女官は頷いていた。


「――――」


 少しばかり沈黙していたペガソだったが、そっと声をかける。


「お前、名前は?」


 その問いかけに顔をあげて答える。


雪花シューファ


 苦笑しつつもペガソは手招きする。


「来いよ。仲間にしてやるよ。あっちじゃハーフやクォーターなんてゴロゴロしてる。そんなの気にするバカは誰も居ねえ」


 そして駆け寄ってきた雪花を迎え入れる。


「たった今からお前は俺の仲間だ」

「謝々」


 再びナイラが右側から肩を貸し、雪花は左側からペガソを支えていた。


「でも、やるからには徹底的にやるぞ。覚悟しとけ」

「我知道」

「あ?」


 ペガソは中国語が苦手らしい。視線でナイラに問えば――


「覚悟しているそうです」

「そうかい。だが、どうせならスペイン語も教えてやらねえとな」


 そして、振り向かずにペガソは告げる。


「そう言うことだ。悪いがこいつもらってくぜ。王の旦那」

「好きにしろ。そいつは私の前でお前に対して礼儀を通した。その段階で私の身内ではなくなった。死のうが生きようが、我らとは無縁だ」

「あぁ、そうかい。じゃあ遠慮しねえぜ」


 それは礼儀と縁を重んじる中華社会ならではの価値観だった。新たな礼儀が通され、縁が切れた以上、もうその者は余所者なのだ。


「それとミスターペガソ。加えて伝えるが」

「なんだ?」

「いずれまた連絡する。七審とは別に我らで繋がりを築いておきたい」

「わかった。腰を落ち着ける場所が決まったら教えてくれや。祝の花の一つでも送るからよ」

「あぁ、必ず連絡する。そのときにまた会おう」


 王の声にペガソは片手を上げて挨拶する。そして、扉の向こうへと消えていったのである。

 だが立ち去るペガソと雪花に視線を送っている人物が居る。王麗沙である。麗沙に王老師が問いかける。


「これで、良かったのか? お前の親友の妹だろう?」

「かまいません。どのみちあの子には中華社会には居場所はありません。ここを引き払う以上、大陸本土へと送り返すわけにも行きません。あの御仁でしたら、少なくとも無駄に死なせることもないでしょうから」

「そうか」


 王はそれ以上はなにも問い詰めなかった。

 そして王老師は、かつてファイブだった物体へと静かに歩み寄る。ファイブの残骸のそばに立つと腰をかがめてファイブの破片を一つ取り上げた。ファイブの銀色のマスクフェイスのミラー外殻の破片である。焼け焦げた銀色に輝くそれを手にして老師は力強く告げた。


「木人ごときが、〝十三妹シーサンメイ〟相手に遊ぼうなどということ自体が、そもそもの間違いなのだ」


 十三妹――、中国の古い大衆小説に登場するうら若い女武侠の事だ。優れた剣技を持ち、親の敵を追いながら、世のため人のために戦い続けた義侠心に熱い正義のヒロインである。老師はフィールに十三妹の姿を見ていたのである。老師に麗沙が言う。


「たしかにあの立ち振舞いは十三妹しーさんめい以外の何者でもありませんね。それが2人も現れたのでは勝とうと言うのがそもそも無理な話」

「我々以外にはな」


 冷徹に強く断言する。


「行くぞ。撤収作業を完璧に遂行しろ」

「承知いたしました。では」


 その言葉を境目に2人は別々の行動を開始した。

 王麗沙は表の顔を、

 王之神は裏の顔を、

 それぞれに統率して組織を率いていくのだ。

 年月を経た太龍は決して死なない。伏龍として眠りの時を経て再び天へと舞い上がるのだ。

 彼らの名は『翁龍オールドドラゴン

 世界に爪をかける巨大な龍である。



■何処かの路上にて:エージェント、コクラの場合


「ん?」


 コクラは歩みを止めた。その耳に聞こえていた音楽が途絶えたからだ。


「ワーグナーが消えた。途中で途切れたということは――、そうか、そういうことか」


 コクラはさして気にも止めずに苦笑する。


「ワーグナーに関わるものは必ず破滅する。ルードヴィッヒ狂王しかり、ナチスしかり――」


 コクラは気配を殺したまま歩き続ける。


「愚か者にはレクイエムがふさわしい」


 そのつぶやきを聞くものは誰も居なかったのである。



■第2科警研にて――


「おねえちゃん? お姉ちゃん!!」


 フローラの声が強く響く。それは彼女が必死に抱き上げているフィールへとかけられていた。

 呼びかけても反応はない。ぐったりとして一切の反応が現れていない。

 突如として軌道が降下して慌てて手を繋いで抱きかかえたのが20秒前。このまま順調に飛行を続ければ1分半ほどで第2科警研へとたどり着くはずだ。

 フローラは第2科警研へと通信をつなぐ。その瞬間からフローラの顔は、フィールの妹から消防の人命救助のレスキューのそれへと変わっていた。


〔こちらフローラ! しのぶさん! 聞こえますか!?〕

〔聞こえてるわよ。フローラ〕

〔緊急メンテナンスの準備願います。20秒ほど前から6号フィールの意識の反応消失が開始。外部バイタルデータ視認ではほぼ無反応。電磁気計測では内部システムは作動していますが急速に減衰中。なお、6号フィールは四肢3本と腹部、及び頭部に重篤な破損を発生しています。対応指示願います〕

〔え?〕


 驚きの声が漏れるがそれも一瞬――、すぐに毅然とした声が返ってくる。


〔フローラ、第2科警研屋上ヘリポートへ直行! 河川上空域を外れてかまわないわ。全速よ!〕

〔了解、速やかに向かいます〕


 返答を待たずして通話を切る。そして、地図データを元に最短直行ルートを目指す。余分な声掛けはしない、今はとにかくたどり着くことが最優先だとフローラは心得ていたからである。

 彼女はすでにレスキューであった。



 *     *     *


 

 第2科警研の建物の屋上ヘリポート。固定照明が煌々と照らし出されている。そこにはすでに布平たちが待機している。そればかりか他班のメンバーも助っ人に駆けつけてきていた。

 呉川のC班、市野のD班、新谷のE班――、可能な限りの人員が集められていたのである。

 大型のストレッチャーの周りには布平しのぶを始めとして、同じF班の桐原直美が、市野正志が、そして数人の男性研究員が待機していた。そしてフローラが飛来してくるであろう方角目指して一点を見上げている。待つこと1分も立たぬ間にそれは飛来した。


「来ました!」


 男性研究員の一人が叫ぶ。そしてヘリポート中央に進み出た者がサイン用の小型投光機を手にして着陸ポイントを誘導している。そこを目指して真っ直ぐにフローラが降りてくる。その両手に抱きかかえられているのは姉であるフィール。すでに力なくぐったりとしていた。

 両足はない。左腕もない。頭部は半壊、脇腹にも大きな破損。そのまま全損処分と宣言されてもおかしくない惨状。

 その姿を目の当たりにして布平は言葉を失った。

 

「フィール……」


 流石にその有様に二の句が告げない。愕然として沈黙したが右手で自らの頬を叩くと気合を入れる。そして力強く歩き出し指示を出す。


「ストレッチャー用意! そのままF班研究室に運んで! 中枢系統に異常発生の可能性があるから運搬は慎重に! それと腹部胴体部分の破損を最優先で確認! メイン動力は切り離して外部動力を接続! 直美急いで!」

「わかった」


 フィールの体内の基本動力装置関連は桐原の担当だ。かつて有明のときにも破壊されて上空から突き落とされている。彼女の表情には、その時のことを思い出しているような節があった。

 降下してきたフローラの真下にストレッチャーを配置する。そしてそのままフィールを横たえる準備をする。まずは上半身のオプショナルアーマーを手動脱着する。メット、ウィング、ショルダープロテクター、胸部プロテクター、背部ユニット、腰部スカート――両脚部はすでに失われているから外す必要すらない。

 素体状態にして吊り下げられているが桐原がフローラを制止する。


「待って、そのままにして」

「はい」

「外部動力から動力ケーブル、出力設定はチャートAの2項の3番で。それと高速振動カッター」

「はい」


 桐原とともに待機していた男性研究員が指示に従う。可搬式の外部動力装置に電圧と電流値、そして周はサイクルを設定する。もう一人は作業用にツールを準備して差し出す。桐原が手にしたのはセラミック製のカッターで、超高速振動で的確に精密に切断できるツールである。

 それをもちいて破損した左脇腹の外被部分を大きく切り取る。上下40センチ、幅30センチ、楕円の形で切り抜き内部を露出させる。そこから更に主動力装置へとつながるパワーケーブルを探す。カラーはイエローで、そこにグリーンのサイドラインが引かれている。かつて有明でフィールの応急処置のために作業を指示したものだ。それを正負2系統でそれぞれ中継コネクター部分で切り離してスタンバイする。


「外部電源良しです」


 研究員が渡してきた外部動力ケーブルを受け取ると、中継コネクター部分にジョイントする。作業結果を指差し確認して桐原は告げた。


「パワーイン」

「パワーインします」


 可搬式外部動力装置から通電を開始する。同時にそれを布平が遠隔モニターで作動状況を確認する。手にしているのはB4大の大型のスマートパッドだ。


「直美、ベーシック内部バイタルOK、中枢部へのパワー供給は回復したわ。意識レベルは無操作でこのままにします。フローラ下ろして」

「はい」


 降下作業を再開してそっとストレッチャーの上に横たえていく。慎重に作業を行い全てを横たえてフローラは手を放した。


「作業完了しました」


 フローラが告げる言葉に布平がうなずく。


「ご苦労様、よくやったわね。あとは私達に任せなさい。あなたはゆっくり休んで! いいわね?」

「はい! フローラ、所定作業を完了し待機に入ります」


 そう宣言しながら敬礼をする。これでフローラができることはひとまず終わりになる。フローラとのやり取りをおえて布平が命じる。


「移送急いで! 直美! 上肢下肢切り離して胴体部開腹作業開始して! 内部機構を全てチェックします! 現筐体は破棄、新規筐体へ中枢部を移植します! 新規筐体は枝理に頼んで!」


 慌ただしく矢継ぎ早に指示しながらもストレッチャーを移動させ始める。一刻の猶予もならない。残された時間は僅かなのだ。

 怒涛のように布平たちが去っていく。それを呆然としてフローラは見つめていた。


「おねえちゃん」


 ポツリと不安げに寂しそうに言葉を漏らす。それは会ったばかりの姉がこのまま会えなくなるかもしれないという痛烈な不安だった。その不安に怯えるフローラの肩を背後からそっと叩く者がいる。


「どしたん? なに怖がっとんねん?」


 声のする方を振り向いてその人物の名を呼ぶ。


「市野さん?」

「はいな」


 丸顔丸メガネ、鷹揚でおおらか、恰幅がよくて、人の良いコメディアン的な雰囲気が持ち味だった。関西の出身で某理系大学で物性学を中心に新素材開発の世界で活躍してきた博士号保持者である。その素材開発の技術力の素晴らしさから〝素材の神様〟の異名を持っている。

 D班の主任研究員、市野正志である。

 ワイシャツにネクタイに白衣姿。デッキシューズ履きで歩きながらフローラの隣へと回り込む。そして、その右手に持っていたペン状のアイテムを持ち上げてフローラの頬へとあてがった。


「え?」


 驚きの声をもらすフローラに市野は穏やかに語りかけた。


「ちょっと失礼するで」


 市野がフローラの頬にあてた物、それは精密な光学分析装置のペン型のカメラだった。それと連動したパッド型のモニターに映し出したのは、フローラの頬の状態である。


【 拡大倍率:200倍           】

【 比較参照モード             】

【 >事前サンプリングデータと比較参照   】

【 〔チェックスタート〕          】


 光学系の高度分析機を用いて人造皮膚の表面状態をチェックする。回答はすぐに出た。


【 劣化度判定:−0.012        】

【 参照劣化限界値:−0.720      】 

【 自動回復可能限界値:−0.255    】

【 判定:自動回復可能           】

【 状態:極めて良好            】


 モニターに示された結果をチェックして市野は頷く。


「よっしゃ、だいたいこんなもんやろ。あっついナパーム被った聞いたからどないなっとるか気になってな」

「あっ、ありがとうございます」

「そんなお礼、言われる程のこっちゃ無いがな。基本となる下地作り、それがワイの仕事やさかいな」

「えっとじゃあ」

「問題なしや。これからもおまはんの仕事、きっちりこなせるやろ」

「よかった。安心しました」


 フローラとしても作り手に問題無しと言われて安堵するものがあったのだろう。素直に歓びながら安堵を口にする。


「ほんと言うと、心配だったんです。あれだけの熱攻撃をまともに食らって大丈夫なんだろうか? って――」

「そらわいかてそうやがな。限界温度1000超、そう決めて作ったおまはんの皮膚やけど、そこに900度やろ? 多少の誤差はあるし、実験室と現場はちゃうやん? 万が一ちゅう事もあるしな」


 そして相好を崩して笑いながら市野は言った。


「正直思うたで。勘弁してぇなって。火災現場の火やのうて、軍用のナパームやで? どんだけハードやねん! ていう話や。ほんまションベンチビリそうになったがな。しのぶはんには耐熱限界はきっちり守って、そいで別嬪さんなるよにしっかり作る約束したさかいな。約束できてなかったらわてシバカれるがな。でもまぁ、まずは一安心や」


 にこにこと笑顔を浮かべたままに陽気に喋る。その軽妙な口調にフローラも思わず笑顔では居られなかった。小脇にペン型センサーとスマートパッドを抱える。そして、傍らに佇むフローラの顔を見つめながら市野は言った。


「でもな、もうちょこっとだけ治っとらんところあるねん」


 その妙なニュアンスの言葉にフローラはポカンとする。


「え? 治ってないところ? ――ですか?」

「せや」


 市野ははっきりうなずきながら、そっと告げた。


「おまはんの〝心〟やがな」


 思わず突きつけられた言葉にフローラは思わずハッとなる。それでも何かをこらえてぐっと噛み締めている。レスキューに、人命救助に、救急に、身を置く運命だと理解した時から泣き言は言わないと叩き込まれたからだ。

 だが市野の言葉はそれの逆を行った。


「なぁ、フローラはん」


 市野はそっとフローラの肩に手を載せる。


「泣いてええんやで?」

「泣く?」

「そや――」


 市野はうなずきながら告げる。


「ええか? 心を殺すことと、我慢することはちゃうで? 仕事から離れたら、心を素直に弾けさせてかまわんのや! あんさんはしっかり仕事こなしたんや。フィールを立派に助けて、しかもあないなすごい現場で戦って勝ってきたんや! な? そうやろ?」


 フローラは口元を震わせながら市野の言葉にうなづいていた。


「だったら――」


 市野は小脇にかかえていた道具を床に置く。そして、フローラの両肩にそっと手を置いた。


「泣きなはれや! 心配なんやろ? 大好きなフィール姉ちゃんの事が? あこがれてあこがれて、会いたくて会いたくて、正式ロールアウトをずっと待ってたんや。おっかない消防の人らとの辛い訓練もずっと頑張ってきたんやろ? それがこないな事になって悲しない寂しないはず無いがな! そうやろ?」

「う――、はい……」


 特攻装警にはある絶対のルールがある。正式着任が完了しロールアウトが終わるまでは他の特攻装警との接触も面会も一切が禁じられている。有明のグラウザーのケースは例外中の例外なのだ。育成上の理由や機密事項の問題などが絡んでいるが、絶対に曲げられないルールなのだ。

 それはフローラも同じである。自分に同系機がいる。すなわち〝姉〟が居るという事実。それを認識したときにフィールと言う存在は強いあこがれだった。

 会いたい、話したい、触れ合いたい、そして、認めてもらいたい。

 その思いが彼女を成長させる源だったのだ。

 市野の強い語りかけに、フローラは思わず心の堰を切ってしまう。そしてその場に響いたのはフローラの泣き声である。


「う、わぁ――わぁああああああっ!」


 ほんの少し前まで姉を抱いていたその手でフローラは自分の顔を覆う。それでも涙は止まらない。押さえ込んできた感情は一気に溢れてそれ以上は言葉にはならなかった。

 市野はフローラを抱きしめてやる。強く、暖かく、深い包容力で。


「大丈夫、大丈夫や! フィールは死なん! だれも死なさへん! ええか! ここにはな! 日本で最高の技術者がそろっとんねん! めっちゃすごいヤツぎょうさん居るねん! かならず助ける! だからな! 安心せい! ええな!」


 強い、なによりも強い、励ましを耳にして、フローラはコクリと頷いていた。


「行くで。装備外して休憩や。ええな?」

「はい――」


 それはもはや機械ではない。人間の模倣ではない。

 警察が治安をアンドロイドと言う機械に委ねると言う決断を下してから、人間に寄り添い、人間を理解し、人間と心を通じ合える存在であるべきとして、特攻装警と言う存在は作り出されたのだ。

 それはすなわち――


『心を持つアンドロイド』


 人と同じ情緒を持つ。それが果たされた存在なのだ。

 だが、それは成功だけでなく、重い十字架をもたらすことにもなる。

 フローラが抱く姉フィールへの思いはその一つだ。

 喜びがあり、怒りがあり、楽しみがある。

 そして、哀しみも装備されているのだ。

 

 市野は床に置いておいた道具を拾い上げると小脇に抱える。もう片方の手をフローラの方へと差し出して彼女の手を握りしめる。そして、未だ涙を止めることができぬフローラの手を引きながらこう声をかけたのだ。


「ほないくで」

「はい」


 市野の優しい温かい声に、フローラは頷いていた。そして2人の姿は所内へと消えていったのである。


次回、第2章サイドB第1話魔窟の洋上楼閣都市Part32


『天へ、そして、天から』


挿絵(By みてみん)


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