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 仕返し、あるいは消去。選べるのは、どちらか一つ。


「どっちも選ばない、もありなのか?」

「もちろん。その場合は縁がなかったってことね」

 彼女はそう言うと、窓の外を見た。紺色の混じったオレンジ色の夕空に、飛行機が飛んでいるのが見える。それを見ているのかいないのか、彼女は窓から目を離さない。

「…もしも復讐を頼むとして、代金はどうなる?」

「それは、…殺せってこと?」

 彼女がこちらを向いた。酷く、真剣な顔で。

「もし、そうなら?」

 俺は額に浮かんでいた汗をぬぐいながら、尋ねる。彼女は楽しそうに、目を細めた。


「人の命を奪う場合。対価は、あなたの命だよ」


 彼女が冷たい笑顔でそう言った。一瞬、時間が止まる。



「…なーんて」

 彼女はけらけらと笑うと、俺の顔を覗き込んだ。

「仕返しの場合でも消去の場合でも、対価は一緒だよ。丸一日、私と一緒に遊んでくれるだけでいい」

 予想外の答えに、眼を見開く。

「遊ぶ?それだけでいいのか?」

「うん。遊園地とか動物園とか、そういうところに連れてってくれたらうれしい」

 彼女はそう言いながら、白い歯を見せてにかっと笑った。

「で、どうする?」

「…。」

「決められない?」

 俺が無言でいると、彼女がうんうんと頷いた。

「ゆっくり考えてくれていいよ。復讐でも、消去でも」

「…消去を選択するとして」

 俺はゆっくりと、彼女の方を向いた。

「俺以外の誰かの記憶を、操作することも可能なのか?」

 アリスが少しだけきょとんとする。それから、

「具体的には?」

「…俺の、奥さんの記憶、とか…」

 そう言うと、アリスは納得したように頷いた。

「できるわ」


 消去、という言葉を聞いた時から、考えていたことがあった。



 彼女の記憶から、あの子の存在を、…俺たちの子供の存在を、消せたなら。




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