表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

 その子と初めて会ったのは、咲の見舞いに行った帰りだった。

「ん?」

 かなり目立つ格好をした女の子が、人通りの多い道端に座り込んでいた。



 小学校低学年くらいに見えるその女の子は、一言で言うなら「かわいらしい女の子」だった。少しだけ釣りあがった、けれども大きな瞳は、まるで子猫のようだと思った。肩にかかっている黒い髪はストレートで、…これだけならどこにでもいる女の子だ。問題は、その子の恰好だった。

 その子は、黒いドレス姿だったのだ。全体的に黒いと思ったが、よく見るとスカートのフリルは白い。足元には、黒いエナメルの靴。「不思議の国のアリス」をモノクロにしたようなその姿。えーっと、なんていうんだっけこういうファッション。…ゴスロリ、だったかな。


 俺からすればかなり浮いて見えるその子だが、周囲の人々はその子に構わず通り過ぎていく。チラ見する人すらいない。目を丸くしているのは俺くらいだ。

 …ああいうファッションが、小さい子の間で流行ってるんだろうか。



 俺は素通りしようとして、だけどやっぱり気になって、通り過ぎる前にもう一度彼女の方を見た。彼女もこちらを見上げていて、目があってしまった。

「…こんにちは」

 透き通るような高い声。彼女は、その幼い顔には似合わないような落ち着いた笑顔で、俺にあいさつしてきた。

「あ、こんにちは」

 俺がそう返すと、彼女はにっこりと笑った。それから

「私のことが見えてるのね」

 そう言って、くつくつと笑った。

「え?」

 戸惑っている俺に微笑みながら、彼女は立ち上がる。それから、俺のすぐそばまでゆっくりと歩み寄ってきた。俺は後退しようとして、だけど金縛りにあったかのようにその場から動けなかった。


「誰を怨んでるの?」


 彼女は俺の目の前に立つと、確かにそう言った。

「…え?」

「誰かを、殺したいくらい怨んでるでしょ」

 彼女は俺の目を覗き込むように見た。思わず、目をそらす。それを見て、彼女はまた楽しそうに笑った。そして言った。

「復讐、してあげましょうか」

 幼い顔には似合わない言葉に、俺は驚いて彼女の方を見下ろす。彼女の身長はかなり低く、俺の腰の高さに顔があった。

 彼女は俺の顔を見て、綺麗な顔でほほ笑んだ。そして先ほどと同じ言葉を、もう一度繰り返した。


「復讐してあげましょうか。…私、仕返し屋なの」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ